2020年6月13日土曜日

パンデミック終息?


パンデミック終息後の「良き社会」はいかにしたら作れるのだろうか

  ニュージーランドはすでに「パンデミック終息宣言」を行い、オーストラリアの感染者数もひじょうに少なくなった今日この頃。しかし、米国や英国ではいまだ感染者数は極めて多く、一方、中南米・アフリカ・東南アジア・中近東の各地では感染拡大が止まないどころか急増中で、これらの地域ではこれからもっと深刻な状況になる危険性が憂慮されます。しかも、感染がおさまってきている諸国でも、今後、経済不況による企業倒産・失業などから、貧困や差別、抑圧、家庭内暴力(いわゆるDV)、自死などの様々な社会問題=ヨハン・ガルトゥングが「構造的暴力」と呼んだ現象が激化することが心配されます。
しりあがり寿作「太陽(コロナ)から見た地球
  アメリカでの警察官によるアフリカ系米国人の殺害を起因とする激しい人種差別抗議運動も、「構造的暴力」に日頃から苦しめられている弱者の不満がパンデミックによって高まっているところに、殺害事件という「直接的暴力」によって火がつけられた状態になったと言えるでしょう。しかも、アフリカ系米国人に限らず、日常的に「構造的暴力」の被害者となっている多くの他の人種系や白人系米国人(とくに若者)も、この抗議運動に触発されてトランプ政府批判運動を強めているのが現状です。
  日本でも、「構造的暴力」によって苦しめられている多くの社会的弱者(とりわけ女性)に深く配慮する政策を、いまこそ迅速に実施していく必要がありますが、腐敗しきった「霞が関ヤクザ集団」の(GoToを「強盗」と国会で自称のごとく読んだ)安倍晋三親分とその子分たちには、「社会的弱者」がどれほど苦境にたたされているのか、その実態がさっぱり分かっていないようです。
  パンデミックが終息した後の社会を、パンデミック以前の社会とは違った「良き社会」にしようというカケ声がチラホラ聞かれますが、果たしてそれがそんなに容易なことでないことは、現状をみてみれば誰の眼にも明らかです。問題は、パンデミック以前からある「構造的暴力」を作り出している「社会構造」=「歪んだ民主主義社会」をいかに革新するか、という「民主主義」のあり方そのものの問題だと私は常に考えています。パンデミックが「歪んだ民主主義社会」を襲えば、もともとある「構造的暴力」が激化する、というのが私の主張です。もともと存在するこの「構造的暴力」の問題を忘れて、「パンデミックが終息したら、<良き社会>を」という考えそのものが浅はかです。同じような考えを、私の大好きなオーストラリアの漫画家で詩人のマイケル・ルーニッグが、以下のような風刺漫画にしていますので、紹介しておきます。
「ああ〜やっと、コロナウイルスの暗い穴から、人間性が蘇ってくる。」
「私たちは変わったのだ、いまやずっと良い人間に。そうだ、新しくて良い世界を作ろうではないか。」
「貪欲、腐敗、不正、残忍、妬み、恨み、虚栄心よ、おさらばだ。」
「愚行・・・とも、おさら・・・・ば・・・・(と言いながら、暗穴に再び落ち込む)」

  『週刊金曜日』編集部からの依頼で書いた、5月22日号掲載の記事「新型コロナに<勝利宣言>したニュージーランド:パンデミックに対抗する民主主義の強さ」と、来週金曜日6月19日号に掲載予定の「社会的弱者を襲うパンデミック:新型コロナが誘因する<構造的暴力>」は、上記のような「民主主義と構造的暴力」という視点から書いてみたもので、もともとは単一の記事として書いたものでした。
  字数が極めて限定されていたため、十分に持論が展開できていないと自分では不満足なのですが、5月25日に私のこのブログに載せた記事「安倍の嘘とパンデミック:社会的弱者=<構造的暴力>被害者の痛みと怒りの連帯を、安倍政権打倒の市民運動につなげよう!」と合わせてご笑覧いただければ光栄です。

『週刊金曜日』の次号予告をご覧ください


1 件のコメント:

城山大賢 さんのコメント...

合掌
構造的暴力というものを生み出す、私らの精神土壌の改良が大事でしょうね。
幻想的ですが。
水平社綱領の、「吾等は人間性の原理に覚醒し、人類最高の完成に向かって突進す」というような、自覚の萌芽こそと思えます。
ツイッター、フェイスブックに紹介しました。
合掌