「イスラーム国家(IS)」によるジハード(聖戦)の呼びかけに呼応する形での主として一般市民への無差別襲撃事件が、世界各地でますます頻繁に起きるようになっています。6月は米国フロリダ(死者49名)、アフガニスタンのカブール(死者14名)、トルコのイスタンブール空港(死者44名)、マレーシアのクアラルンプール(負傷者8名)。7月は、この1週間だけでも、バングラデッシュのダッカ(死者22名)、イラクのバグダッド(213名)、サウジアラビアの聖地メディナなど(死者4名)、インドネシアのソロ(負傷者1名)です。<詳しくは7月6日の『朝日新聞デジタル』記事「テロ連鎖、なぜ断食月に?」を参照されたし。>
これは明らかに、最近、米露仏英の諸国軍とシリア軍が激化させているISへの攻撃への反撃と見なすべきでしょう。2011年から始まったシリア紛争は、あらためて説明するまでもなく、2003年3月に米国が主導して開始したイラク戦争(「イラク侵攻」とも呼ばれているように、実際には石油資源確保を目的とする「侵略戦争」)に起因しており、2010年8月31日にオバマが出した欺瞞的な「イラク戦争終了宣言」とは裏腹に、実はイラク戦争は終了したどころか、「テロ連鎖」という形で世界に拡散しており、その勢いはますます強まっているのが現状です。シリア紛争は難民の数を急増させ、国連難民高等弁務官事務所発表の情報によれば、その数は2014年末の段階ですでに5950万人(うち半数が子供)に達しています。210万人と言われている、第2次世界大戦によって強制退去されたヨーロッパ人難民数と比較してみれば(もちろんアジア太平洋地域での当時の難民数も多数あるはずですが推定すら不可能です)、いかに現在の状況が劣悪であるかが分かるでしょう。この難民の数からしても、世界の現状はまさに「戦争状態」なのです。
したがって、私自身は、現在の世界状況は「第3次世界大戦」と称すべき事態にあると考えています。今、詳しくその考えを説明している時間的な余裕がないので、以下、ごく簡略に要点だけを述べておきます。
振り返って見れば、2001年9・11事件をきっかけに、アルカイーダのような非国家組織による軍事大国へのテロ攻撃は急激に増加・拡大しました。9・11は、極めて限定的な意味ではありますが、太平洋戦争開戦のきっかけとなった「真珠湾攻撃」に相応すると言える事件でした。しかし、第2次世界大戦と決定的に異なっているのは、この「第3次世界大戦」は、巨大軍事国家間の戦争ではなく、非国家組織テロと国家テロが対抗する戦争、すなわち「グローバル・テロ戦争」と呼べる形態になっていることです。巨大軍事力を持たない非国家組織は、その攻撃目標を軍事国家あるいはその同盟国の一般市民に絞り、テロによる無差別殺戮を行うという作戦を展開しています。米国のように、核兵器を含む無差別大量破壊兵器ならびに様々なハイテク技術を駆使した強力な武器を保有する軍事国家にとって、最もその「防衛力」が届かない領域は「市民の生活区域」です。軍事大国の軍事力は、もっぱら他の軍事国家の軍事力との対抗という面からのみ整備されており、「市民生活」を守るという点ではほとんど無能なのです。まさにこの弱点をついているのが、非国家組織による一般市民に対するテロ襲撃なのです。したがって、テロ襲撃に対する「防衛」はいかなる軍事力によっても不可能であり、唯一の防衛手段は非国家組織との紛争を避ける「平和構築」以外にはないのです。
ところが、テロ襲撃を避けるためと称して、軍事国家はその強力な軍事力を使って非国家組織への軍事攻撃、とりわけ空爆を展開しています。しかし、「精密爆撃」と称するその空爆が、実際には数多くの一般市民を殺傷する無差別爆撃となっており、したがって、その実態は「国家テロ」行為なのです。その結果が、上記のような難民急増であり、世界は、いつどこでテロ襲撃が起こるか分からないという、ますます混沌とした危機的状況を深めています。英国のEU離脱という事態も、実際にはこうした「グローバル・テロ戦争」という世界状況と密接に関連して起きていることであることも、あらためて説明するまでもないでしょう。
ところが、日本の安倍政権は、国家防衛と称して米国との軍事同盟を拡大強化し、さらには壊憲を通して、こうした混沌とした「グローバル・テロ戦争」へと日本市民をますます深く引きずり込もうとしているのです。今ここで日本の進むべき方向をなんとか根本的に転換しないと、私たちの未来は取り返しのつかない奈落状況へと落ち込んでいくことは明白です。私たち日本の市民は、このような危機的事態にどのように対峙していったらよいのでしょうか。今年の「8・6ヒロシマ平和への集い」では、このことを真剣に問う集会にできればと願っています。以下、関連集会・イベント案内です。
なお、佐高信氏による基調講演のタイトルは「誰が平和を殺すのか」です。
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