2023年10月29日日曜日

ナーディア・エル=ナクラ:平和の機会を与えてください

今年3月末、スコットランド国民党の党首に選ばれたハムザ・ユーサフはパキスタン移民の3世で、英国生まれのイスラム教徒。スコットランド自治政府の主席大臣(正式には「第1大臣」という名称)、すなわち「首相」に相当する地位にある。スコットランド国民党が推進している英国からの独立が達成されれば、文字通り「首相」となる人物である。彼の妻ナーディア・エル=ナクラ(精神療法医)は、父がパレスチナ人で母がスコットランド人の、スコットランド市民。その父母は、ハマスのイスラエル攻撃が始まる前に、ガザ地区に住むナーディアの祖母や兄を訪ねてガザ地区に入ったが、イスラエル側が開始した空爆でガザを出れなくなってしまった。


ハムザ・ユーサフとナーディア・エル=ナクラ

   ハムザ・ユーサフは、英国首相のリシ・スナク(インド系英国人)や外務大臣ジェームズ・クレバリー(アフリカ系英国人)に、イスラエルとハマスに停戦を呼びかけるようにという要求をしようと連絡をとろうとしたが、全く反応がなかったとのこと。周知のように、イスラエルとパレスチナの紛争の根本原因はイスラエルだけにあるのではなく、英国にも大きな責任がある。ところが、英国政府は、イスラエルのガザ爆撃直後からイスラエルが必要とするあらゆる支援の提供を申し出たし、今月27日に国連総会で120カ国の賛成で採択された「人道目的の休戦」を求める決議にも、日本と同じように棄権した。英国植民地であったインドとシエラレオネからの移民の子孫で、イスラエルを全面的に支持する首相と外務大臣、これに対して、パレスチナ人の父を持つ妻の夫であるパキスタン移民の3世で、スコットランド自治政府の主席大臣。これが、日本では考えられないような他民族国家である英国の現状である。

  その複雑な人種関係に絡まれている政治の真っ只中に置かれたナーディア・エル=ナクラが、ガザ地区に住む親族の状況を伝え、世界の指導者たちに早急に戦争停止の努力を訴える感動的なスピーチを、2週間ほど前に行っている。短いスピーチなので、数回聴きながら、スピーチ全部を翻訳してみました。聴き落としているところがあるかもしれませんが、とにかく、読んでいただければありがたいです。

 

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Nadia El-Nakla: Give peace a chance

ナーディア・エル=ナクラ:平和の機会を与えてください

https://www.youtube.com/watch?v=osPOrzEAW54

 

これは自然災害ではありません。したがって、これを私たちは止めることができます。しかし、私たちが目にしているのは想像を絶する恐怖です。あっという間に20人の家族が全滅します。私の兄は救急医ですが、病院は患者であふれかえっています。病院の他の部署から救急科に手伝いに来た彼の看護師は、自分の2人の子供が死んだことを知らされました。昨日、私のいとこのマフムードは友人と散歩に出かけていて、帰宅して5分後に「大丈夫か」という電話がありました。彼は「大丈夫だけど、なぜ?」と尋ねました。ついさっきまで一緒に歩いていた3人の友人が殺されたと知らされました。100万人が南へ移動するように(イスラエル政府に)言われました。ところが、そのイスラエルは南部を爆撃しました。私たちの家続の家の外には大きなサッカー場があり、いつもなら子どもたちや若者たちが走り回っているのに、今は人々がここで野宿しています。しかし、ここも爆撃されました。遺体安置所は満杯で、屍体安置のためにアイスクリーム輸送用のトラックを使っています。私の兄は病院での仕事に追われ、4日間家に帰っていません。しかし、医薬品がなく、死者は身体の一部しか運ばれてこないので、これ以上誰も治療できないと言い始めています。私のような家族は、引っ越しを余儀なくされ、これが最後だと思って互いに別れを告げなければなりません。叔母は、娘のサラと孫娘がガザ市内の別の場所に行くことになり、まるでこれが最後であるかのように別れを告げました。父は昨日(ガザを離れることができるとまだ考えていて<実際にはできませんでしたが>)、これが最後だと思って祖母に別れを告げました。ガザでは誰もが死と直面しています。ガザにいるすべての人がテロに晒され、イスラエル国防相は私たちを「動物的人間」と呼んで侮蔑しました。この会場におられる皆さんに言いたいのは、私たちは動物ではない、誇りを持った人間であるということです。私たちは歌い、踊り、食べ、海岸に座るのが大好きです。私たちは大声で、本当に大声でお喋りしますし、一生懸命人を愛します。学ぶことが大好きで、心温かく、夢がある人間です。私たちには夢があり、目標があります。だから私はお願いします、私たちを生き延びさせてください、私たちを平和に生きさせてくださいと。そして私は懇願します、ガザの子どもたちに生きるチャンスを与えてくださいと。私の姪っ子リーラ、甥っ子のマジッド、アミド、そして生後8週間の末っ子の甥っ子アミール、彼らを生き延びさせてください。これは、世界の指導者たちが武器の代わりに外交を用い、戦争の代わりに平和を求めなければ、このようなことは可能にはなりません。

 

 

  

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