2023年10月29日日曜日

ナーディア・エル=ナクラ:平和の機会を与えてください

今年3月末、スコットランド国民党の党首に選ばれたハムザ・ユーサフはパキスタン移民の3世で、英国生まれのイスラム教徒。スコットランド自治政府の主席大臣(正式には「第1大臣」という名称)、すなわち「首相」に相当する地位にある。スコットランド国民党が推進している英国からの独立が達成されれば、文字通り「首相」となる人物である。彼の妻ナーディア・エル=ナクラ(精神療法医)は、父がパレスチナ人で母がスコットランド人の、スコットランド市民。その父母は、ハマスのイスラエル攻撃が始まる前に、ガザ地区に住むナーディアの祖母や兄を訪ねてガザ地区に入ったが、イスラエル側が開始した空爆でガザを出れなくなってしまった。


ハムザ・ユーサフとナーディア・エル=ナクラ

   ハムザ・ユーサフは、英国首相のリシ・スナク(インド系英国人)や外務大臣ジェームズ・クレバリー(アフリカ系英国人)に、イスラエルとハマスに停戦を呼びかけるようにという要求をしようと連絡をとろうとしたが、全く反応がなかったとのこと。周知のように、イスラエルとパレスチナの紛争の根本原因はイスラエルだけにあるのではなく、英国にも大きな責任がある。ところが、英国政府は、イスラエルのガザ爆撃直後からイスラエルが必要とするあらゆる支援の提供を申し出たし、今月27日に国連総会で120カ国の賛成で採択された「人道目的の休戦」を求める決議にも、日本と同じように棄権した。英国植民地であったインドとシエラレオネからの移民の子孫で、イスラエルを全面的に支持する首相と外務大臣、これに対して、パレスチナ人の父を持つ妻の夫であるパキスタン移民の3世で、スコットランド自治政府の主席大臣。これが、日本では考えられないような他民族国家である英国の現状である。

  その複雑な人種関係に絡まれている政治の真っ只中に置かれたナーディア・エル=ナクラが、ガザ地区に住む親族の状況を伝え、世界の指導者たちに早急に戦争停止の努力を訴える感動的なスピーチを、2週間ほど前に行っている。短いスピーチなので、数回聴きながら、スピーチ全部を翻訳してみました。聴き落としているところがあるかもしれませんが、とにかく、読んでいただければありがたいです。

 

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Nadia El-Nakla: Give peace a chance

ナーディア・エル=ナクラ:平和の機会を与えてください

https://www.youtube.com/watch?v=osPOrzEAW54

 

これは自然災害ではありません。したがって、これを私たちは止めることができます。しかし、私たちが目にしているのは想像を絶する恐怖です。あっという間に20人の家族が全滅します。私の兄は救急医ですが、病院は患者であふれかえっています。病院の他の部署から救急科に手伝いに来た彼の看護師は、自分の2人の子供が死んだことを知らされました。昨日、私のいとこのマフムードは友人と散歩に出かけていて、帰宅して5分後に「大丈夫か」という電話がありました。彼は「大丈夫だけど、なぜ?」と尋ねました。ついさっきまで一緒に歩いていた3人の友人が殺されたと知らされました。100万人が南へ移動するように(イスラエル政府に)言われました。ところが、そのイスラエルは南部を爆撃しました。私たちの家続の家の外には大きなサッカー場があり、いつもなら子どもたちや若者たちが走り回っているのに、今は人々がここで野宿しています。しかし、ここも爆撃されました。遺体安置所は満杯で、屍体安置のためにアイスクリーム輸送用のトラックを使っています。私の兄は病院での仕事に追われ、4日間家に帰っていません。しかし、医薬品がなく、死者は身体の一部しか運ばれてこないので、これ以上誰も治療できないと言い始めています。私のような家族は、引っ越しを余儀なくされ、これが最後だと思って互いに別れを告げなければなりません。叔母は、娘のサラと孫娘がガザ市内の別の場所に行くことになり、まるでこれが最後であるかのように別れを告げました。父は昨日(ガザを離れることができるとまだ考えていて<実際にはできませんでしたが>)、これが最後だと思って祖母に別れを告げました。ガザでは誰もが死と直面しています。ガザにいるすべての人がテロに晒され、イスラエル国防相は私たちを「動物的人間」と呼んで侮蔑しました。この会場におられる皆さんに言いたいのは、私たちは動物ではない、誇りを持った人間であるということです。私たちは歌い、踊り、食べ、海岸に座るのが大好きです。私たちは大声で、本当に大声でお喋りしますし、一生懸命人を愛します。学ぶことが大好きで、心温かく、夢がある人間です。私たちには夢があり、目標があります。だから私はお願いします、私たちを生き延びさせてください、私たちを平和に生きさせてくださいと。そして私は懇願します、ガザの子どもたちに生きるチャンスを与えてくださいと。私の姪っ子リーラ、甥っ子のマジッド、アミド、そして生後8週間の末っ子の甥っ子アミール、彼らを生き延びさせてください。これは、世界の指導者たちが武器の代わりに外交を用い、戦争の代わりに平和を求めなければ、このようなことは可能にはなりません。

 

 

  

2023年10月27日金曜日

またしてもイスラエルによるジェノサイド(2)

1013日のブログでは英国の公共放送<4チャンネル>による報道を紹介しておきました。ガザ地区の状況はますます悪化するばかりです。そこで、再度、ガザ地区とイスラエルの近況に関する4チャンネルの報道を紹介しておきます。ごく簡単ですが、内容について日本語の解説をつけておきました。

 

4チャンネルによる今日の報告

Israel says senior Hamas leader killed, 250 targets attacked in Gaza raid

(イスラエル、ガザ急襲でハマス幹部を殺害、250の標的を攻撃と発表)

https://www.youtube.com/watch?v=fKImdLUTOhM

 

イスラエル政府は25日夜から26日にかけてガザ北部で「情報収集を目的とする次の段階としての戦闘準備として、複数の戦車やブルドーザーを使い、目標を絞った攻撃」を行ったと発表した(ビデオ開始から29 – 46秒)。いよいよ本格的なガザ地区への侵攻が始まるのであろうか。そうなれば、さらに、さらに悲惨な状況になることは避けられない。

イスラエルでは、ハマスの人質(220名ほど)になっている人たちの親族や友人たちが、人質を安全に帰還させるまで、停戦を行うべきだと政府に要求するデモが行われている(142 – 256秒 インタヴューの途中からハマスによるロケット弾攻撃の警報)。

イスラエルによるガザへの猛烈な爆撃が引き続き行われており、「安全な南部に移動せよ」というイスラエルからの警告にもかかわらず、多くの市民(とくに子どもたち)が、引き続き行われている南部への爆撃で犠牲になっている(258– 529秒)。「ハマス幹部を爆撃で殺害した」というイスラエルの発表の裏で、実際には、このように多くの無差別大量殺戮が毎日行われている。

インタヴューを受けたガザの医師は(825 – 1205秒)、毎日続く爆撃のため、医療従事者たちは毎日ひっきりなしに送り込まれてくる負傷者(多くが赤子、子ども、女性)の治療に疲労困憊。肉体的だけではなく精神的にも耐えられず、泣きながら治療に当たっている者もいると証言。飲料水・食糧は言うまでもなく、医薬品が欠乏し麻酔薬がもはやないため、手術を麻酔薬なしで行わなくてはならないという困難に直面している。病院は備え付けの発電機で電力をまかなっているが、発電機を動かす燃料が底をつきつつあるため、いつ電力停止になるか分からない。電力停止になれば、死亡者が大量に出て、手の打ちようがなくなるとも述べている。

死亡者数に関しては(1756 – 1844秒)、ガザ地区厚生部の発表ではパレスチナ人の犠牲者は7千名(うち3千名近くが子ども)にまでなっている。しかし、この数はハマスの誇張であるというイスラエル側の発表を、米国大統領バイデンも「おそらく誇張であろう」と述べて支持。

しかし、ガザ地区の病院で治療に当たっている英国の(おそらくボランティアと思われる)医師によると(2051 – 2151秒)、病院は死亡者リストを正確に記録しているため、ガザ地区厚生部の発表の死亡者総数はほぼ正確なものと思われると述べている。米国のCNNの報道によれば、ガザ地区では、一部の親が、子どもが死亡した際の身元確認のために、子どもの足にアラビア語で名前を書いているとのこと。なんとも哀しいことである。

 

4チャンネルによる1017日の報告

Gaza residents flee south only to be bombed by Israel

(ガザ地区住民、南へ逃れるもイスラエルによる空爆を受ける)

https://www.youtube.com/watch?v=Lu1YHFSxfD0

 

  米国大統領バイデンがイスラエルを訪問する1日前の報告。(開始から120 – 310秒)では、「比較的安全であるガザ南部に移動しろ」とイスラエル側に警告された人たちが、南部に移っても、イスラエルが引き続き行う無差別爆撃にさらされている。数千人の子どもたちが避難している学校が爆撃され、少なくとも6人が死亡したという報告もある。イスラエル側は、いまだ南部にもハマス戦闘員が隠れているために爆撃したと主張。ガザ地区南部も飲料水、食糧、医薬品が極端に欠乏しており、エジブト国境付近では、ガザ地区への救援物資を届けるためのトラックが列を作って停車している。これはイスラエルが、救援物資がハマスの手に渡る危険性があるため、トラックを通過させることができないと主張しているためである。

  国連パレスチナ難民救済事業機関のコミュニケーション部長ジュリエッタ・トウマアへのインタヴュー(537 – 1032秒)でも、飲料水、食料品、医薬品の支援物資のガザ地区への輸送がいかに困難であるかが、詳しく説明されている。また避難する場所も非常に限られており、避難所として使われているある倉庫には、8千人という数の避難民がぎゅう詰めになっているが、そこにはトイレは1つしかないとのこと。

  娘をハマスに人質にとられている父親は、インタヴューで(1400 – 1442秒)、政府に停戦交渉を要求すると同時に、250万人のガザ地区市民は我々の敵ではなく、向こう側に住んでいる住民の苦しみも我々は理解すべきだ、と述べる。

  ハマスの攻撃を受けたイスラエル村落の死亡者の遺体収容に出かけたボランティアの記者会見(1624秒〜)では、複数の子どもたちが縛られて焼き殺された状態や、妊婦が殺されて大量の血でズブ濡れになっていた遺体の残虐極まりない状態について、泣きながら証言。インタビューで「パレスチナの子どもたちが爆撃で殺されている状態について、あなたはどう思うか?」と訊かれた彼は、「心から同情するし、できることなら、パレスチパレスチナの家族を我家に避難させたい。しかし、ハマスがそれを許さない」と述べている。

 

最後に、私の好きな宮沢賢治の詩とマイケル・ルーニッグの絵と詩を付記しておきます。もちろん、宮沢賢治の詩のような人間には、私は到底なれないですが

 

雨にも負けず

 

雨にも負けず

風にも負けず

雪にも夏の暑さにも負けぬ

丈夫なからだをもち

慾はなく

決して怒らず

いつも静かに笑っている

一日に玄米四合と

味噌と少しの野菜を食べ

あらゆることを

自分を勘定に入れずに

よく見聞きし分かり

そして忘れず

野原の松の林の陰の

小さな萱ぶきの小屋にいて

東に病気の子供あれば

行って看病してやり

西に疲れた母あれば

行ってその稲の束を負い

南に死にそうな人あれば

行ってこわがらなくてもいいといい

北に喧嘩や訴訟があれば

つまらないからやめろといい

日照りの時は涙を流し

寒さの夏はおろおろ歩き

みんなにでくのぼーと呼ばれ

褒められもせず

苦にもされず

そういうものに

わたしは

なりたい

祈り  

 

銃と爆弾、残酷さ、憎悪

金、欲、不動産

狂気、権力、病んだ思想

奴らと我々、荒涼とした恐怖

ねじれた心と壊れた魂

ズタズタになった命と弾痕

怒り、復讐、終わりのない痛み

正気であることの孤独

 


2023年10月26日木曜日

「テロ殲滅」は、世界を破滅に…

 去る1022日、札幌のアメリカ総領事館前で、テロ国家・人種差別国家イスラエルを長年にわたって支援してきた米国を非難するデモ集会が行われました。これに合わせて松元保昭氏が発表された声明文を受け取りました。前回に続き、極めて簡潔に鋭く問題点を指摘する声明文です。拡散していただき、できるだけ多くの人たちに共有していただきたいイスラエル・米国に対する非難文です。

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「テロ殲滅」は、世界を破滅に
10
22デモメッセージ 

パレスチナ連帯・札幌 松元保昭

ガザ 220 万人のうち半数は未成年の子どもで、全人口の三分の二が女性と子供たちだ。16年間も「天井のない監獄」として封鎖され、若者の失業率は70%、飲料水の8割は本来不適格で病人が増大し、赤ん坊・子供は慢性的な栄養失調状態にある。

今回、イスラエルがガザ北部からの退避勧告を出した直後から無差別空爆、しかも食料、燃料、水、医薬品などライフラインを完全封鎖しておいて無差別空爆とは、シーファー病院が空爆されたが、WHOによるとすでにガザでは26もの医療施設が空爆されている。まさに、大量殺戮・集団抹殺のジェノサイドそのものが始まっている。バイデンは、ただちにイスラエル支持を打ち出したが、「民主主義」と「人道的介入」を誇っていた自らのダブルスタンダードをコントロールできなくなっている。

そもそも、パレスチナ問題の発端は何であったのか?第二次大戦後、国連誕生後2年目、1947年の国連分割決議で、特別委員会は不正・不公正で憲章違反、アラブの国々は猛反対、だが米英ソがごり押した。ここから国際社会の二重基準・ダブルスタンダード、ボタンの掛け違いが生まれる。

これだけでは済まない。この分割決議に後押しされた、「ユダヤ国家」をつくろうというシオニスト集団の武装テロ活動が直後から激しくなる。かつてのパレスチナ領内で暗殺、村落襲撃の虐殺、強姦、追放で、約80万人の難民がガザや西岸、レバノンやヨルダンに逃げ込む。これをパレスチナ人は、ナクバ(破局・大災厄)と記憶する。その渦中の514日夜、あわててイスラエルは建国宣言をし、翌1948515日を建国記念日にする。この日こそパレスチナ人は、ナクバの日と呼んでいる。家の鍵を持ったまま逃げたパレスチナ人は、いまだに帰還できないままだ。

その後の75 年間、イスラエルの軍事占領、家屋破壊、土地略奪、入植地拡大、700キロの分離壁、アパルトヘイト政策、ほしいままの虐殺が今日まで続く。それをアメリカはじめ西側諸国の「国際社会」とメディアが、長年にわたり容認・支持してきたことこそが根本原因なのだ。

ただちに国際法と国際人道法に基づき、イスラエルのガザ完全封鎖中止、西岸地区のイスラエル入植地の撤退、軍事占領終結とパレスチナ人の民族自決を実現すべく、国連や国際社会が中東政策を抜本的に転換しなければこの問題はなくならない!

「ハマスはテロ組織、壊滅しなければならない」とイスラエルは叫ぶ。メディアは「報復の連鎖」などという無責任な常套句で傍観を拡大。2006年、パレスチナ民族評議会の選挙でハマスが勝利するも、不当不公正なオスロ合意に反対するハマスをただちに「テロ組織」と指定したのは、まっさきにアメリカとイスラエルだった。なぜ指定する権限があるのか、「対テロ戦争」の時代だから。国家のないパレスチナ人はイスラエルをテロ国家と指定できない。しかしいまや国際法・国際人道法が、占領された民族の抵抗権・民族自決権を正当に認めているのに

さて、テロとはどこから始まるのか?ナクバを実行したシオニストは最初からテロ集団だった。だからイスラエルは、生まれつきのテロ国家。1982年レバノンのサブラ・シャティーラ虐殺の後パレスチナでは、民衆蜂起の第一次インティファーダが燃え上がりその勢いで87年、全パレスチナの解放を掲げて「ハマース」が誕生する。ところが、2006年のアメリカ・イスラエルによるテロ組織指定によって、国際的には「イスラム原理主義テロ組織ハマス」と呼ばれるようになるわけだ。

「テロ指定」は、不満や抵抗を圧殺し先制攻撃を正当化する心理と論理を内包し、世界を破滅に導く。アメリカ銃社会の心理と論理を拡大したものが「対テロ戦争・反テロ戦争」だ。民主主義と人道を売り物にしてきたアメリカと、テロ殲滅の正当化なしに生きられないイスラエル。「敵基地攻撃」の論理も同断。

ところが、今回のハマスの奇襲攻撃は12のイスラエル軍の拠点を一時占拠した「軍事的抵抗」であった。その証拠に2か所のキブツ襲撃は非常に人道的なもので、逆にイスラエル治安部隊がキブツの一般市民をも無差別銃撃の対象にして犠牲者を出したとの証言がある(救出されたイスラエル人女性ヤスミン・ポラットの証言、15日)。しかしその後、キブツでの一般市民の犠牲者はすべて極悪非道のハマスの所為にされ、イスラエルの報道は証拠もなしにプロパガンダを広めている。

シオニストこそがテロの本家だったのが、パレスチナ人の抵抗運動がテロリストと指定されるのは、狡猾なイスラエルの名指しだ。1972年のテルアビブ空港襲撃事件、その4か月後ミュンヘン・オリンピック村襲撃事件で、一挙にパレスチナ人の抵抗闘争が「テロ」のレッテルを貼られる。逆手を取ったのはイスラエル。なぜか、両方とも空港での一般市民への銃乱射は、片やイスラエル治安機関、片やイスラエル諜報機関と西ドイツ警察。双方ともパレスチナ抵抗グループが銃を乱射したわけではないのに、イスラエルによって即座に「パレスチナ・武装ゲリラの仕業」と世界に喧伝された。

こうして、「敵」をテロリストと貶めることは、占領国家イスラエルの当初からの軍事戦略であり情報戦略の中心に位置する。パレスチナの民族自決の抵抗運動は徹底してテロリスト扱いされ、悪魔化されてきた。西岸でもガザでも、子どもが石を投げてもテロリストとして射殺され、イスラエル兵は不問にされるのがパレスチナの日常だ。これは75年前のナクバの継続であり、抵抗運動の「ハマス殲滅作戦」をめざすイスラエルは、さらに日常的・恒常的なホロコーストを実践することになるのではないか。

アメリカ総領事前(札幌):80人ほどが駅前から大通り公園にデモ行進し、
    その後約半数が地下鉄で領事館に駆けつけた。パレスチナ人ファミリーもインドネシア・ムスリム・ファミリーも参加

 

<アメリカ総領事館(札幌)前>

アイヌモシリがヤマトに奪われ先住民族アイヌが「旧土人」とジェノサイドにさらされ、ヨーロッパでシオニズムが誕生した頃、アメリカはメイン号事件をきっかけにスペインと戦争し大西洋の覇権を握った。戦後、トンキン湾事件でベトナム戦争を開始、911後イラクに大量破壊兵器の難癖をつけてイラク戦を開始した。ムジャヒディーンを利用してアフガニスタンを攻撃し、イラク戦からはIS(イスラム国)を創って侵略の手段にした。これらのどれもが「先制攻撃正当化」の欺瞞的策略だった。

そして、ナクバでジェノサイドをやってきたテロ国家・人種差別国家イスラエルを誕生させ、「平和愛好国家」という嘘で国連に加盟させ、何十回もの拒否権で擁護・援助してきたアメリカ。裏庭のラテンアメリカでも収奪と介入の政権転覆(レジーム・チェンジ)を繰り返してきた。軍事同盟をつくっては、国際法の網を破ってきたアメリカ・イスラエルこそ、「ならずもの国家」の張本人ではないのか!

ブッシュは、「テロリストの側につくか、われわれの側につくか」と世界を恫喝した。敵か味方か、善か悪かの二元論を世界に押し付け、「反テロ戦争」のグローバル・スタンダードをつくりあげて世界を分断し、ヘイトとレイシズムを増大させてきた。「テロ悪魔化」の世界基準は、人種差別のアパルトヘイト国家イスラエルを存続させる一方で、「自衛のための先制攻撃」を正当化させた。しかし「テロ殲滅」をしなければ生きられないイスラエルを支援し続けるアメリカは、世界を破滅に導くことになりはしないか?

世界を敵か味方か二分するこの心理と論理は、先住民族インディアンを駆逐・排除し今日も黒人差別を解決できない、銃社会アメリカの心理と論理から生まれたものだ。「反テロ戦争」の世界はかつてのハリウッド・カウボーイ映画と酷似する。カウボーイ帝国アメリカよ、まず自国の植民地主義を反省し、銃社会を根絶してから世界に物申せ!

メディアは、アメリカ・イスラエルがどんな国か、いかに国際法・国際人道法を打ち破る狡猾な「極悪非道」を実践してきたかを、決して報道しようとはしない。もはや巨大メディアを共犯者とする欧米中心主義の野合同盟では、人類の公正と正義、人権と尊厳を実現できないことは明白だ。米国一極覇権の大転換が必要なのだ!フリー・フリー・パレスタイン!


2023年10月19日木曜日

犠牲者はだれだ?

1018日、国連の安全保障理事会で、ハマスとイスラエル軍の戦闘の「一時停止」を求めるブラジルの決議案とロシアが修正を加えた決議案2本の計3本が採決にかけられたが、いずれも否決された。ロシアが修正を加えた決議案2本には米国が反対し、採択に必要な9カ国以上の賛成を得られなかった。ブラジル案には12カ国が賛成したが、米国が拒否権を行使した。ここで、またしても米国のイスラエルへの全面的支持のせいで、イスラエル軍によるパレスチナ住民への無差別大量殺戮が止む可能性は崩され、先行きは暗いままである。

 

顧みてみると、ドイツは自国民が犯したホロコーストという「人道に対する罪」の「過去の克服」を長年にわたって忍耐強く行ってきた。その結果、ドイツは自国を「人道的国家」に変革するという理想へ向けての道を、歩み続けてきた。米国は、原爆(+焼夷弾)無差別大量殺戮という「人道に対する罪」の「過去の克服」に、完全に失敗した。日本は、15年にわたるアジア太平洋戦争中に犯した様々な残虐行為の加害責任だけではなく、原爆(+焼夷弾)無差別大量殺戮の被害者としての「過去の克服」の両面で失敗してきた。「過去の克服」は加害者だけに求められるものではない。実際には、被害者側も、「人道に対する罪」を再び誰にも犯させないようにするには、被害者としての「過去の克服」を行う必要がある、というのが私の信念である。イスラエルは、その被害者としての「過去の克服」に完全に失敗したゆえに、悲惨にも、加害者へと変貌してしまった、というのが私の持論である。この点については、別の機会に詳しく論じてみたい。

 

今日は、札幌にお住まいの私の畏友、松元保昭氏にお願いして書いていただいた論考 ― イスラエルによるパレスチナへの繰り返される武力襲撃の歴史的起因に関する簡潔で明瞭な解説 ― 「犠牲者は誰だ」を紹介させていただく。

 

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犠牲者はだれだ?

ナクバを不問にする欧米「国際社会」、繰り返すイスラエル

 

先週土曜日、エジプト・シリアが領土奪回をめざした1973年第4次中東戦争の翌日ヨム・キプール(贖罪の日)にあてた107日、全パレスチナの解放をめざすガザの抵抗組織ハマスがフェンスや壁を越えてイスラエル領内深くに1000人を超える戦闘員を送り込み、かつてない奇襲攻撃を成功させた。ハマスのガザ実効支配16年、ナクバ75年、たえず敗北と被虐を積み重ねてきたパレスチナ人の反占領抵抗運動の意を決した反撃は世界に衝撃を与えた。

 

イスラエルのガザ「報復」は翌日からはじまり、今日現在(11日)で双方の死者は2000人を超えた。陸海空完全封鎖の「天井のない監獄」、世界一人口密集のガザ地上侵攻となると一般市民を巻き込む大量無差別殺戮も危ぶまれる。イスラエルが電気・水・食料・燃料・医薬品などすべての物資を遮断・封鎖するならば、飢餓の殲滅も起こりかねない。

 

ガザ地区の少女

 

テレビ、新聞の報道をみると、相変わらずガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスの「テロ攻撃」、イスラエル民間人犠牲の数々と100人を超える人質の安否、そして常套句である「暴力の連鎖」はいつまで続くのか、サウジ、イラン・米欧パワーゲームの様子見で締めくくられる。「テロ組織ハマス」だけを悪の標的にするパターンは変わらない。「テロ組織」の烙印は、「自衛国家」の正当化と歴史的現実の消去を一挙に果たす報道マジックとなっている。「ハマスを壊滅させる」(ネタニヤフ)ことは200万人のガザ市民を殲滅することだ。

 

そもそも戦後、イスラエルほどあからさまな軍事侵略による領土獲得・国家建設はなかった。ナクバは、イスラエル建国の翌日から始まる1948515日第一次中東戦争開始の日に当てられているが、その前年イギリスが委任統治を国連に丸投げし米ソ画策の不公正で違法な「国連分割決議(19471129日)」直後から、入植者のシオニスト民兵によるパレスチナ村落への武力襲撃が始まっていた。テロ組織イルグンやシュテルンによる194849日ディル・ヤーシンの虐殺(260人)など建国以前の暴虐こそ「ナクバ(大災厄ジェノサイド)」の始まりであった。514日の夜あわてて独立宣言を果たしたのが「イスラエル建国」であった。この戦争で80万人のパレスチナ難民が生み出されたが、翌49年には国境も定まらないイスラエルが「平和愛好国家」として国連に迎えられる。世界人権宣言と国連憲章でスタートしたかにみえる国際社は、このパレスチナ人被虐のナクバを不問にして始まったわけだ。75年後の今日まで。

 

1967年の「六日戦争」(第三次中東戦争)で、東エルサレムを含むヨルダン川西岸、ガザ地区、シナイ半島、ゴラン高原を占領し領土を拡大したイスラエルは、パレスチナ人の抵抗運動インティファーダ(民衆蜂起)を日常的に武力弾圧するシステムをつくり、少年も含む恣意的拘束拘禁、無差別深夜家屋急襲、アパッチヘリやスナイパーによる殺戮、コラボレーター(協力者・間諜)による共同体の分断、数百か所の検問所による移動制限、総延長700キロ超の分離壁による水源確保と移動制限隔離、家屋破壊、土地強奪、入植地増大、入植者の日常的暴力、ガザ封鎖、間欠的なガザ集団懲罰空爆、人種差別と民族浄化、世界各地での要人暗殺を恣ままにしている、そもそも建国の動機からして野蛮な軍事占領国家、侵略国家、テロ国家、アパルトヘイト(人種隔離)国家、人種差別国家など、戦争犯罪と国際法・国際人道法違反のオンパレード国家であることは、まぎれもない歴史の現実である。あろうことかイスラエルは、パレスチナ人の人権団体パレスチナ人権センター(PCHR)をふくむ反占領の闘いとすべての「反イスラエル」を「反ユダヤ主義組織」のレッテルで攻撃する。もともと中東に植民地主義的な橋頭保を築こうとした米英欧など西側「国際社会」の容認バックアップなしには存立できない国家なのである。(※遅きに失したともいえるが占領国家の性格がよくわかる秀作のビデオ:BS世界のドキュメンタリー『ねらわれた少年たち―ヨルダン川西岸パレスチナ自治区アイダ難民キャンプ』NHK2022を観ていただきたい。)

 

このたびの奇襲攻撃を、バイデンは「まぎれもない邪悪な行為、まさに悪の所業」と断罪した。ネタニヤフはハマスを「野蛮なケダモノ」と名指した。しかし、上に述べた数十年から75年に及ぶパレスチナ人の日常的な苦難の日々を思うと、とくにガザの人々の「いつ殺されて死ぬか、闘って死ぬかわからない…」という限界状況の「まぎれもない邪悪な行為」をだれが強いてきたのか、私たちは深く考える必要がある。

 

ちょうど30年前、冷戦崩壊後の1993年オスロ合意が結ばれた。互いを交渉相手として認め合ったというが、ライオンとネズミのように圧倒的武力の差では対等の交渉はありえない、イスラエルのサボタージュにどこまでも引きずられる「まやかし合意」に終わった。イスラエルを容認した国際社会の関与を閉じて相互の交渉にまかせるということは、不法なイスラエルを容認した国際社会の責任をも免罪したことになる。イスラエルは占領地からは撤退せず、合意時点の入植者は11万人だったのが、30年後の現在、50万人を突破してパレスチナ人を日々襲撃している。パレスチナ自治政府(PA)は、もはやイスラエルの出先コラボレーター(協力者)に成り下がっている。当時、ラビン首相とペレス外相、PLO議長アラファトにノーベル平和賞が授与されたが、「ディル・ヤーシンの虐殺」などナクバ・ダーレット計画のメナヘム・ベギンも平和賞をもらっている。ノーベル平和賞は、国際政治の演出賞か。

 

今回の奇襲作戦をハマスは、「アル・アクサ嵐作戦」と名付けた。まずシャロンが2000年にハラム・アッシャリーフ(神殿の丘)に侵入し第二次インティファーダのきっかけをつくった。その後、オスロ合意の反故を確実なものにしたイスラエルは、治安部隊を送り込み3年ほど前からイスラームのアル・アクサ・モスクで狼藉を働くようになった。ことしの4月には、イスラエル治安部隊が礼拝していたパレスチナ人450人を拘束した。シオニスト右派がなだれ込んだり金曜日の聖域ハラム・アッシャリーフは危険な場所にさえなっている。ハマス報道官のハーレド・カドミはこう語っている。「われわれは、国際社会に対し、われわれの聖地アル・アクサのもとでの残虐行為を止めてほしいと願っている。これが今回の戦いを始めた理由のすべてだ。」

 

一方で、イスラエル宗教右派は強固な「第三神殿建設」と神殿の丘改造計画をもっており、その兆候が近年、ますますあからさまになっている。それは同時に、シオニスト超正統派が描いてきたシナイ半島からチグリス・ユーフラテス川までの「エレツ・イスラエル」《神がアブラハムの子孫に与えると約束した「ヤコブ(のちイスラエルに名を変えられる)の地」(創世記12152835章)》をめざす「大イスラエル主義」にも結び付いている。シオニズムの「土地の征服」という領土拡大の欲動は、エルサレム首都宣言に固執させることにもつながり、イスラエルの入植者植民地主義をさらに増大することになろう。イスラエル宗教右翼の潜在的な野望は、今後全世界20億人のイスラム教徒の抵抗を呼び起こすかもしれない。

 

そもそもイルグンのキング・デイヴィッド・ホテル爆破事件(1946722日)から続くナクバのように、シオニズムは当初から人種主義とテロリズムを武器としながら、1967年の第三次中東戦争「六日戦争」で一挙に植民国家イスラエルを拡大した。1972年には、日本人も関与したテルアビブ空港リッダ闘争があり、4か月後ミュンヘン・オリンピックのイスラエル選手村人質事件が起きた。これを機に、イスラエル・シオニストは逆手を取ってあらゆる反占領抵抗運動をテロリズムと名指しするようになった。さらに、1982年のサブラー・シャティーラの虐殺で民衆蜂起が燃え盛り、第一次インティファーダがひろく展開するなかで、1987年全パレスチナの解放をめざすハマスが誕生するのである。ついに911で、アメリカ・イスラエルの国家テロリズムが「対テロ戦争」と定式化された。

 

対テロ戦の渦中、今回もイスラエルは国家の「威信」を賭けて反撃「報復」するであろう。抵抗権であろうと、テロに対しては国家の「自衛権」が認められているからだ。国家の「威信」は、アメリカも日本もどの国も、人の命に勝る。だから、イスラエルは「やりたい放題」をやってきた。ハマスをテロ組織と名指して何万人の人間を殺害することは許されない。ところが、ハマスをテロ組織と指定(2006)することによってこそ、「国家の威信」は全パレスチナの抵抗運動を弾圧する口実に出来るのである。

 

こうしたイスラエルの膨張主義を駆動する宗教的欲動、あるいは世俗的な人種差別と民族浄化のすべてを回収・正当化して突き進むナショナリズムの問題を、国連と国際社会はどのように「解決」するのであろうか。これまでの歴史のように際限のない軍事的パワーゲームでは見通しがない。軍事同盟を背景とした「戦争」あるいは「代理戦争」に至らないよう、あらかじめ人権理事会の是正勧告に強制力をもたせたり普遍的な是正措置を編み出さなければならない。2014年のマイダーン・クーデターから始まるドンバス攻撃に端を発するロシア侵攻のウクライナ戦争も(これは、はじめから「米代理戦争」の様相だが)、もはや安保理を中心に軍事同盟の駆け引きで解決できる問題ではない。各国内部と国際間に、どうしたら正義と公正を貫くことが出来るか、人類は崖っぷちに立たされている。国家の病をどうするか?

 

千歳アイヌに中本むつ子さん(19282011)というアイヌ伝承者がいた。アイヌ語教室も始めていた彼女の晩年亡くなる3年前の2008年に、ナクバを彷彿とさせる話をご自宅で偶然聴かせてもらった。パレスチナのナクバのことなど知らない彼女が、「むかしね、この千歳川から石狩川まで何十軒ものチセ(アイヌの家)がいっせいに焼かれたの…。」おそらくこれは彼女自身が直接見たのではなく、時代的に圧縮された情景を伝承として古老から聴いたものであろう。しかし、「滅びゆく民」「旧土人」と貶めたアイヌ民族へのジェノサイドその後の同化政策から今日に至る偏見差別をいまだに日本人と日本国は謝罪をしない。

 

日清戦争開戦前の甲午農民戦争からはじまるコリアン・ジェノサイドは、1919年の三一独立運動で、さらに1923年、100年前の関東大震災で朝鮮人虐殺が猖獗を極めた。この明白な国家犯罪と民衆犯罪を、いまだに日本国家は謝罪も調査もせず政権も知らんふりだ。そして在日朝鮮人の学校を差別して平然としている。

 

ポツダム宣言受諾で命拾いした天皇ヒロヒトは、1947年にマッカーサーに「沖縄無期限貸与」を具申した。なによりも中国革命を恐れていたようだ。米軍基地で悲鳴をあげているその沖縄はいま、辺野古基地はいらないという県民の願いを最高裁が却下し、米国の尻馬に乗って「台湾有事は日米有事」(安部元首相2021)という自公政権の南西諸島ミサイル基地化を着々と進めている。日本国によってさんざん犠牲になった沖縄の「命どう宝」を無視するヤマトンチューによって、ふたたび戦争の前線に立たされそうとしている。いや、ふたたび戦争の犠牲者に晒されそうだ。

 

7世紀ヤマト政権以来の植民地主義・軍国主義・人種主義は、神社・天皇などという「誤魔化し」の象徴とともに、つねに「歴史を誤魔化す」日本人の夜郎自大な根性に深く根付いて、いまや「さもしい」政治が上から下までいたるところに蔓延っている。

 

このように、人間の尊厳と人権、正義と公正の課題は、各国家固有の宿題を抱えている。「あきらめた」大勢の人々はカナリヤの悲鳴を聴こうとしない。「あきらめた」人々は、抵抗する人々を理解できないし共感しようとしない。だから現実は、「あきらめ」に抵抗する人々は犠牲者のまま打ち捨てられる。黙って殺されるか闘って死ぬか、どちらかしかないパレスチナ人…。「戦争が人類を終わらせるか、人類が戦争を終わらせるか」(アスカ・パーク)

 

イスラエルは恒常的なホロコーストを75年間実践してきた。もはや絶え間のない好戦的な暴力に生きるイスラエルが自らの変革を望めない以上、そして欧米側と世界メディアのイスラエル支援が変わらない以上、パレスチナ問題に立ち戻るとコーヘンの提案が思い浮かぶ。ホロコースト・サバイバーであるピーター・コーヘンは、ユダヤ系オランダ人で元アムステルダム大学社会学教授である。彼は次のような分析をしたあと、パレスチナ問題の「出口」戦略を提言する。

 

「パレスチナで起きているのは、いうまでもなく、古典的な欧米植民地主義なのであり、それは優越した軍事的・経済的手段と占領の強制とによってのみ維持されるのである。…今やありのまま歯に衣着せず語るべきときだ。つまり、植民地としてのイスラエルは暴力と紛争の恒常的な源泉である。それは中東のなかで欧米の軍事占領下にある一地域だ。…イスラエルの政策はつねに既成事実を創造し続けてきた。すなわち露骨な征服であり、それはヨーロッパと北米の「欧米」を構成する諸国からの持続的援助により強化されてきた。」

 

(シオニストによって作られた)植民地イスラエルは存在を続けることができないし、そこで、もう一つのパレスチナと存在の持続を「分かち合う」こともできない、のである。パレスチナ人は植民地主義の占領者から完全に解放される権利をもつべきである。「パレスチナ人解放」の斬新で非暴力的な思考が、きわめて重要不可欠だ。」<(シオニストによって作られた)は引用者による付記>

 

「もし世界が、これまでと異なる戦略、つまりパレスチナ人の放逐と軍事的服属化とを終わらせる戦略を採用するようになるなら、これは、第二次世界大戦後の欧米政治がそれだけでもう取り返しのつかぬほど致命的な過ちを犯した非をはっきりと認めて、それを取り消す方向で踏み出す、善き第一歩となるであろう。」このあとイスラエル解体の「出口」戦略を是非、Peter Cohen『終わることのないパレスチナ紛争の根因:それをどう正すか』(Huffington Post2014、板垣雄三訳)で読んでいただきたい。(了)

 

https://www.huffingtonpost.jp/peter-cohen/the-root-cause-of-the-never-ending-conflict-in-palestine_b_6139172.html

●イスラエル国家の廃止を呼びかけるP・コーヘン提案をどう読むか

https://www.huffingtonpost.jp/yuzo-itagaki/peter-cohen_b_6139436.html

 

20231014

パレスチナ連帯・札幌    松元保昭

2023年10月13日金曜日

またしてもイスラエルによるジェノサイド

7日前にハマスが開始したイスラエルへの大規模攻撃を、私は決して支持はしません。しかし、極右のベンヤミン・ネタニヤフ政権が、これまでどれほど多くのパレスチナ市民を殺傷し、由々しい人権侵害をやってきたか、そのことを全く報道しないで、一方的に「イスラエルの自衛権」を支持するメディア 特にアメリカのメディア がいかに多いか。ハマスがイスラエル人を人質に取って、今も150名余りを拘束し「人間の盾」としていることも大々的に報道されています。これについても、私は決してハマスの犯罪行為を支持したりはしません。しかし、これまでガザに閉じ込まれてきた220万人ほどのパレスチナ人が、コンクリートの壁に囲まれて移動の自由を奪われ、毎年1千万リットルという大量の水をイスラエルから購入することを余儀なくされ、1日平均4時間ほどしか電気を利用することができないなど、極度の貧困状態に長年置かれるという、まさに「人質」状態にあることを、全く無視した報道。こうした一方的なニュースを観ていると、強い、深い憤怒を感ぜざるをえません。

そんな報道の中で、英国の公共放送<4チャンネル>の報道は、ガザ地区とイスラエル側の両方で今起きていることを、極めて冷静に報告しています。残念ながら日本語の字幕はついていませんが、映像を観るだけでも状況がかなり理解できるかと思います。

 

Israel troops mass on Gaza border as hospitals near collapse

(イスラエル軍がガザ国境に集結、病院は崩壊寸前)

https://www.youtube.com/watch?v=yBQbhavr4RQ

 

 

 

現在までの時点で、ガザ地区の34万人(全人口の約15%)がホームレス。死者約1,500名、負傷者6,000名と報道されていますが、この<4チャンネル>の報道(開始から525秒〜920秒)を観ていただければ、いかに多くの市民が強烈な爆撃で破壊された建物の下敷きになっており、その数が未知数であることがわかります。また、死亡した子どもを抱えて泣き叫ぶ親、負傷した赤子を抱え救助を求めて全力で走る男性 こうした姿はイラク戦争で米軍の爆撃で殺害された子どもたちの映像をまざまざと思い起こさせ、涙を流さずには観ていられません。

 

イスラエル市民の中にも、ネタニヤフ政権という極右の政府樹立を許してしまったことは大きな過誤であったことをはっきりと認め、自分たちだけではなく、ガザ地区の女性や子どもたちに被害者が出ていることに深く憂慮している女性もいます(開始から1823秒〜1926秒、1956秒〜2013秒)。

 

すでに日本でも報道されていると思いますが、イスラエルは17万人という常備軍兵の上に36万人にのぼる予備軍を招集して、ガザ地区への侵攻を計画しています。これが実施されれば、市民の被害者数はとてつもない数になるはずです。これまでの爆撃 イスラエル政府が「精密爆撃」と主張する も無差別虐殺=ジェノサイドと呼ぶべきものですが、今度は同じ無差別殺戮が地上で展開されることになるでしょう。これを黙って見ていることは、「人間としての責任」放棄だと私は思います。これまで、イスラエルは数年ごとに同じようなジェノサイドをどれだけ繰り返してきたことか ジェノサイドの被害民族が樹立した政府が、他民族に対してジェノサイドを犯す 実に、実に哀しいことです。イスラエル政府のやっていることは国家テロです。

 

ちなみに、これまた英語のウエッブ・ジャーナルですが、イスラエル人の良心的兵役拒否者の Hagaai Mattar というジャーナリストの +972 Magazine も推薦します。https://www.972mag.com/

イスラエル側にも、こうした良心的な平和活動家や法律家がいることに注目し、これらの人々をモラル・サポートすることも重要だと思います。

 

最後にピート・シーガーが歌う I Come and Stand Every Door

<僕はいろんな人の家を訪ねて玄関の前に立つ>を送っておきます。

https://www.youtube.com/watch?v=22vd9wUO9IE

 

I come and stand at every door

僕はいろんな人の家を訪ねて玄関の前に立つ
But none can hear my silent tread

でも、誰も僕の無音の足音に気づかない
I knock and yet remain unseen

玄関のドアをたたく僕の姿が見えないんだ
For I am dead, for I am dead.

というのも、僕はとっくに死んじゃってるからね

I'm only seven, although I died

僕は死んじゃってるけど、7歳なんだ
In Hiroshima long ago.

ずっと昔、ヒロシマで死んだんだ
I'm seven now, as I was then

僕はいまも、そのときと同じ7歳
When children die, they do not grow.

子どもは死んでも歳をとらないんだよ

My hair was scorched by swirling flame;

僕の髪は渦巻く炎で焼かれてチリジリになり
My eyes grew dim, my eyes grew blind.

僕の眼は薄暗くなって、なにも見えなくなった
Death came and turned my bones to dust,

そして死んじゃって、僕の骨はチリとホコリになっちゃった
And that was scattered by the wind.

そして風に吹かれてまきちらされた

I need no fruit, I need no rice.

僕は果物も、ごはんもいらないよ
I need no sweets, nor even bread;

お菓子だってパンだって必要ないんだ
I ask for nothing for myself,

僕が自分のために欲しいのは何もない
For I am dead, for I am dead.

だって、僕は死んじゃってるんだもの
All that I ask is that for peace

僕が欲しいのは平和だけなんだ
You fight today, you fight today.

だから、そのために一生懸命頑張って欲しい
So that the children of this world

世界中の子供たちが
May live and grow and laugh and play!

死なずに生きて、笑って、遊べるように!