2023年11月17日金曜日

Palestinian Groups Ask ICC to Arrest Israeli PM Benjamin Netanyahu for War Crimes & Genocide in Gaza

パレスチナ人団体、ICCにイスラエル首相ベンヤミン・ネタニヤフをガザでの戦争犯罪とジェノサイドで逮捕するよう要請

 

1110日放送『デモクラシー・ナウ(今こそ民主主義を)!』の日本語訳です。

 

https://www.democracynow.org/2023/11/10/icc_lawsuit

 

イスラエルによる1ヶ月に及ぶ空爆と地上攻撃で1万人以上のパレスチナ人が死亡したガザでの戦争について、ICC(国際刑事裁判所)でイスラエルの責任を問う新たな取り組みについて、パレスチナの人権弁護士ノーラ・エラカットに話を聞いた。水曜日、パレスチナの3つの人権団体は、イスラエルをジェノサイドとアパルトヘイトの罪で調査するよう求め、国際機関に提訴した。また、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相、アイザック・ヘルツォグ大統領、ヨアヴ・ギャラント国防相の逮捕状を発行するようにも求めている。イスラエルの侵略に対する国際的な不作為は、「何十年もの間、イスラエルの責任を追及する組織的な失敗」の一部であり、またグローバル・サウスの人々に対する戦争犯罪に適用される「完全な二重基準」でもあると、ICC訴訟を支援するために集まった学者や活動家のチームの一員であるエラカットは言う。「これは国際的な法制度の危機というだけでなく、私たちが暮らす米国の民主的な、あるいはいわゆる民主的制度の危機なのです」。

 

こちらは『デモクラシー・ナウ(今こそ民主主義を)!』の「戦争と平和レポート」です。

 

エイミー・グッドマン:

パレスチナの3つの人権団体が国際刑事裁判所に提訴し、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と他の指導者に対し、ジェノサイド(大量虐殺)、ジェノサイドの扇動、アパルトヘイトの罪で逮捕状を発行するよう求めた。アル・ハク(Al-Haq)、アル・メザン(Al Mezan)、パレスチナ人権センター(Palestinian Centre for Human Rights)の3団体は、イスラエル軍の息が詰まるようなガザ包囲と、人口密度の高い民間人地域への無差別攻撃は、「(通常の)戦争犯罪」、「人道に対する罪」、「ジェノサイド」に相当すると裁判所に訴えた。この訴訟はまた、イスラエルのアイザック・ヘルツォグ大統領とヨアヴ・ギャラント国防相の逮捕を求めている。パレスチナ保健当局によれば、ガザでの死者数は11,000人に迫っている。

 

パレスチナ人権弁護士ノーラ・エラカット(ラトガース大学准教授、『Justice for Some』)の著者)ノーラ・エラカットにお話を伺います。彼女は『Justice for Some』の著者であり、ICC提訴を支援した学者、知識人、活動家からなるパレスチナ人チームの一員である。彼女は、フィラデルフィアからこの番組に参加しています。

 

ノーラさん、『デモクラシー・ナウ(今こそ民主主義を)!』!へようこそ。この訴訟について説明していただけますか?

 

ノーラ・エラカット:

その通りです。この訴訟は、アル・ハク、アル・メザン、パレスチナ人権センターという、あなたがおっしゃった3つの団体を代表する集団的な取り組みです。これは、国際刑事裁判所に提出された無数の取り組みのひとつです。例えば、ごく最近、国境なき記者団も、34人のジャーナリストが殺害された事件(そのうちの数人は、この猛攻撃の最中に活動していたジャーナリストたち)を調査するようICCに求める請願書を提出しました。

 

ノーラ・エラカット 

臨時に立ち上げたグループとして強調したいのは、これは単に請願書で明記したイスラエルの個人に対する訴訟ではなく、国際刑事裁判所、国際刑事法、国際的な法的機関全体が、グローバル・サウスに関しては完全なダブルスタンダードを示しているという点です。国際刑事裁判所(ICC)は設立以来、アフリカ大陸で20件以上の裁判を開いてきました。スロボダン・ミロシェビッチのケースを除いて、これまで起訴されたのはすべてアラブやアフリカの個人、国家元首、政府高官です。

 

現在進行中のジェノサイド(大量虐殺)であるイスラエルの責任を問うために、私たちはICCに働きかけているのです。イスラエルは、パレスチナの人々を「全体的または部分的に」滅ぼすという具体的な意図があり、その行為の根底には具体的にその目的を実現するための意図が表れていることを、私たちはっきりとICCの指導者たちに伝えています。

(ジェノサイドの定義について、ジェノサイド条約第2条は、「ジェノサイドとは、国民的、民族的、人種的または宗教的な集団の全部または一部を、それ自体として破壊する意図をもって行われる以下のいずれかの行為を指す」として、5項目を挙げている。田中による追記)

 

エイミー・グッドマン:

私たちは、先日、世界的に有名な人権弁護士であるガザ市在住のラジー・スーラニに話を聞きました。彼の家が爆撃された後、ガザ北部に残ったラジー氏からの悲痛な訴えでした。彼は特に、ICCの主席検察官であるカリム・カーンに連絡をとりました。そして、「ロシアがウクライナの子どもたちを攻撃したとき、ICCは直ちに戦争犯罪調査を開始すると言って貴方を召喚したが、イスラエルとパレスチナでの(同じような戦争犯罪)問題について貴方はどんな立場をとっているのか」、と問題提起をしたわけです。ICCは、すでに2021年にヨルダン川西岸、ガザ、東エルサレムでイスラエルが犯した可能性のある戦争犯罪について公式に調査しています。

 

ノーラ・エラカット:

ラジーの行動はまったく正しいです。ICCのカリム・カーン検事は、ロシアがウクライナに侵攻してから1週間以内に調査を開始し、ウクライナの子どもたちをロシアに強制移送したウラジーミル・プーチンに逮捕状を発行しました。今回の事件では、カリム・カーン検事がラファに赴き、大量殺戮の意図、大量殺戮、パレスチナ人の生存能力を低下させるような生活条件の破壊が戦争勃発から1週間以内で明らかになった事例を調査するのに、3週間もかかりました。

 

このような状況において私たちが目にするのは、単なる歴史の繰り返しではなく、植民地時代の遺産の継続です。例えば 1935年、ムッソリーニ率いるファシズムのイタリアがエチオピアに侵攻しました。その時、エチオピアは国際連盟加盟国でしたが、国際連盟はエチオピア国民に無差別化学兵器を投下したイタリアの責任を追及するどころか、赤十字がエチオピア人は戦争法に従わない野蛮な国だと非難しました。新聞報道は、エチオピア人が人間の盾として病院に隠れ、避難しているのだとの見出しを掲げました。そして、世界の列強はこのとき、イタリアに十分な制裁を加えることができませんでした。このことは、国際機関の限界を示し、結局、国際連盟の失敗につながったわけです。

 

現在、私たちは同じような瞬間にいるのです。国際機関は行動を起こす必要があるのです。ところが実際には、私たちは膠着状態に陥っています。米国や英国、フランスを率いるような国際的指導者たちは、基本的にイスラエルに大量虐殺や残虐行為を行う許可を与えているのです。

 

この戦争は理由もなく突然起こったわけではありません。すべては107日のずっと以前に始まっていました。そして今は、イスラエルがこれまでずっと責任を問われてこなかった連続としての現在の瞬間なのです。何十年もの間、イスラエルは組織的に責任を追及されてこなかったのです。国際機関は、イスラエルがアパルトヘイトという「人道に対する罪」を実践していると述べてきました。この点では、2020年から2021年にかけては、ほぼ合意が得られていたのです。にもかかわらず、その時に制裁を科すことはせずに、アパルトヘイトを解体するために国際的なメカニズムや制度を動員するのでもなく、米国がイスラエルのアパルトヘイトを称賛し、正常化するのを私たちは目の当たりにし、他のアラブ政権との関係を正常化し続けるのを目の当たりにしてきました。この根本的な失敗が、説明責任の欠如や、北半球と南半球に対するそれぞれ違った2種類の法規の欺瞞的な押し付けという、現在進行中の危機を招いたのです。これは西側諸国政府の偽善であり、西欧普遍主義などというものは存在せず、(北半球と南半球の)2組の違った人々の上に、2組の別々の法規が存在し続けていることを示しているのです。

 

しかし、素晴らしいことに、私たちに希望を与えてくれる唯一のことは、西洋民主主義の偽善性を実証するために、(世界の様々な)個人、民族、地域社会の大衆運動が自国政府に対しても立ち上がったことです。アメリカでさえ、66%のアメリカ人が停戦を要求しています。民主党登録議員の80%が停戦を要求しています。それなのに、535人の国会議員のうち19人しか停戦を支持していないのです。同じ議会が、唯一のパレスチナ系アメリカ人の政府代表を、多数派を代表して発言するまさにその瞬間に、問責したのです。つまり、これは国際的な法的制度の危機というだけでなく、私たちが暮らす米国の民主的な、あるいはいわゆる民主的な制度の危機でもあるのです。

 

エイミー・グッドマン:

そして、何万人ものパレスチナ人が今まさに南へ強制移住させられていますが(この放送はあと20秒しかありませんが)、この事実は「戦争犯罪」や「人道に対する罪」という、貴方が訴えている容疑にはどのように当てはまるのでしょうか?

 


 

ノーラ・エラカット:

私たちがいま目にしているのは、殺されまいと白いハンカチを手に手を上げ、立ち上がっているパレスチナ人の現在進行形のナクバです。これはガザ北部の民族浄化なのです。パレスチナ人なしにパレスチナの土地を奪うというナクバの継続なのです。これは「人道に対する罪」であり、「大量虐殺」戦争という大きな枠組みに当てはまります。

(「ナクバ」とはアラビア語で「大破局」を意味する。1948年に、イスラエルの建国宣言によって第1次中東戦争が勃発。その結果、70万人以上のパレスチナ人が故郷を失って難民化し、周辺諸国に逃れた。避難先で3世、4世が産まれ、人口は現在560万人にまで増加。そして、いまだに故郷に帰れない状況が続いている。田中による追記)

 

エイミー・グッドマン:

パレスチナ人権弁護士のノーラ・エラカットさん、ラトガース大学准教授、どうもありがとうございました。デモクラシー・ナウです!エイミー・グッドマンです。ご参加ありがとうございました。

 

訳者後書き

時間がないので詳しく論じている余裕がないが、現実にはイスラエルのネタニヤフ首相やヘルツォグ大統領、ギャラント国防相などを、ジェノサイド、ジェノサイドの扇動、アパルトヘイトの罪でICC に提訴するのは難しい。第1の問題は、イスラエルがICCの締約国ではないので、ICCがイスラエルの政治家に対して管轄権を行使できない。しかし理論的には、パレスチナとしては、国連憲章第 7 章に基づいて行動する安保理に、ICCに捜査を付託するように求めるという手段がある。

しかしこの場合、第2の問題として、安保理常任理事国5カ国のうち、イスラエルを全面支援する米国の他に、中国、ロシアがICCの加盟国になることを拒否し続けていること。しかも、(拒否権を有する)安保理常任理事国である米英仏の3カ国の上に、日本、カナダ、ドイツ、イタリアを加えたG7諸国は、全てパレスチナを国家として承認することを拒んでいる。国連加盟国193カ国のうち138カ国が国家承認をしているにもかかわらずである。パレスチナは「国連総会オブザーバー」という、議決権のない極めて弱い、差別的な立場に置かれている。よって、国連を通してICCを動かすという手段にも、ほとんど期待はできない。

ICC締約国であるパレスチナの訴えがICCで認められ、実際に逮捕はできなくとも、最終的にネタニヤフの逮捕状をICCが出すことになれば、それ自体は政治的には大きな意味を持つであろう。しかし、その影響力は一時的なものとなることは、これまでの前例からも明らかであろう。

一方、ハマス側もまたイスラエル市民を無差別に1400人(そのほとんどが民間人)ほど殺害し、240人余り(これまたほとんどが民間人)を人質にとり、その人質の中にはイスラエル軍の空爆ですでに死亡している者が数名いる。被害者の数はパレスチナ人の被害状況と比べれば格段に違うが、いかなる歴史的な理由がパレスチナ側にあるにせよ、これまた明らかに戦争犯罪であることを指摘しておく必要がある。戦争において被害になるのはいつも圧倒的に一般市民であり、とりわけ子どもと女性、老人という弱者であることも、あらためて指摘するまでもないであろう。

長期的に考えるならば、パレスチナを国連で正式な国家として承認させ、イスラエルとパレスチナが、双方とも独立した対等な国民国家として相互に対峙できるようにすることが重要である。まずはそこから、パレスチナ国家が、イスラエル国家の犯す国家テロ行為を、ICCや国連を含む様々な国際機関の場で厳しく糾弾する可能性を開けるように、世界中の市民が支援していくことが重要であると私は考える。

現在の武力紛争が一刻も早く停戦になるよう、私たちは市民運動を展開していく必要があるが、それと同時に、長期的展望に立ったパレスチナ支援の運動のあり方を模索するグローバルな市民運動を、海外の市民運動組織と連帯しながら、地道に続けていく必要がある。

 

 

 

 



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