2024年12月9日月曜日

被団協、ノーベル平和賞受賞

井戸を掘った先人の思いに馳せる

 

被団協のノーベル賞平和賞受賞に因んで、広島原爆文学(運動)史の文字通り<生き字引>と私が深く尊敬する畏友、池田正彦さん(広島文学資料保全の会事務局長)による2つのエッセーを、池田さんのご了承を得て、ここに掲載させていただきます。

  一つ目のエッセーは「被団協、ノーベル平和賞受賞:井戸を掘った先人の思いに馳せる」と題するもので、藤原書店の月刊誌『機』202411392号)にすでに掲載されたものからの転載です。二つ目は、「手記集『原爆に生きて』 山代巴の方法」と題されたエッセーです。

  現在の被団協が、いったいどのような先人たちの努力から創設されたのか、その歴史的背景を忘却しているのではないかというのが池田さんの指摘です。

(田中利幸 記)

 

1)被団協、ノーベル平和賞受賞

井戸を掘った先人の思いに馳せる

 

一〇月一二日、今年のノーベル平和賞決定のニュースが飛び込んできた。つづいて被団協の各氏のコメントがテレビの画面に流れ、良かったなあ、と思いつつ、同時に、あれれ!?と感じた。

 というのは、現在の日本被団協結成に先立つ一九五二(昭和二七)年八月一〇日に、日本最初の被爆者組織「原爆被害者の会」が誕生しているのだが、不思議なことに、被団協の前史である「原爆被害者の会」のことに触れる人が誰もいなかったからだ。

 

黎明期を駆けた川手健さん

 

作家の山代巴は、『詩集・原子雲の下より』第三版(一九七〇年)の「あとがき」で、次のように書き残している。

詩集編纂を引きうけたのは、一九五二年の春でしたが、(略)実際に詩を集める仕事は、当時の新日本文学会広島支部の、事務担当者であった川手健(かわて たけし)の双肩にかかりました。(略)広島大学仏文科の学生だった川手健および、(略)情熱あふれる学生詩人たちの努力なしには、この詩集は実らなかったと思います。(略)峠三吉死後の川手健は、原爆被害者の初めての組織者として活動しました。第一回原水爆禁止世界平和大会へ向けて、被爆者の声を盛り上げて行く活動の、中心的なにない手でもありました。

 

若かり頃の川手 健
 

自身も被爆者だった川手健さんが事務局長を務めたのが、「原爆被害者の会」である。残された資料(峠三吉資料)「原爆被害者の会会則」(一九五二・八・一〇決定)では、幹事会メンバーとして、吉川清・佐伯晴代・内山正一・植松時惠・峠三吉の名前が記録されている。さらに、東京協力会も準備し、世話人には大田洋子・神近市子・武谷三男・布施辰治・赤松俊子(丸木俊)ら七人が参加している。あえて「原爆被害者の会」という名称にしたのは、長崎・東京を視野に入れ、全国的な拡がりを意識していたと考えられる。

原爆被害者の会会則の冒頭部分
1952.8.10
<会則>
一、この会は原爆被害者の会といい、原爆の被害者によってつくられます。
二、会員には被害者で趣旨に賛成の人なら誰でも入ることが出来ます。
三、会の事務所は広島市細工町原爆ドーム裏吉川記念品店におきます。
四、会は被害者が団結して多くの人々との協力のもとに、治療生活その他の問題を解決し、あはせて再びこの様な惨事のくりかへされないよう平和のために努力することを目的とします。
五、この会は目的実現のために次の事業を行います。
原爆傷害者の治療援助を当局に要求し、その他種々の便宜をつくり出す。
原爆による生活困窮者の就職、生活援助を会員相互の協力によって行う。
各種の方法により平和のための事業を計画する。
その他の目的実現のため、会の決定したこと。
六、会は、総会、幹事会、協力会を持ち運営していきます。

 

「事業」の項目では、〈医療〉〈生活〉〈平和運動〉〈その他〉に分け、それぞれ課題と目標をたてながら〈図書室設置〉まで計画していた。

当面、「会」と密接な関係にある「原爆の手記編纂委員会」や文化サークルとの共同を謳い、〈経過〉では、広島でロケ中の映画『原爆の子』への協力、ウィーンで開催される諸国民平和大会への代表派遣、具体的には、被爆者を治療せずモルモット扱いするABCC(アメリカ主導の原爆傷害調査委員会)に対して「一切協力しない」との申し入れ、行政には、治療費の負担などの交渉を行い、活動は既に始まっていたことがわかる。

また、峠三吉、山代巴の戦後の活動と共にあり、丸木位里・俊の「原爆の図」巡回広島展(一九五〇年)を成功に導いたのは、「われらの詩の会」、四國五郎をはじめ、川手健さんたちの奮闘によるものであった。峠三吉の『原爆詩集』や、『詩集・原子雲の下より』『原爆に生きて』などの刊行しかり、広島青年文化連盟、『われらの詩』などの活動は、「原爆被害者の会」の発足の流れに寄り添っているとみるのが自然である。

言論統制にあった占領下、原爆投下糾弾・朝鮮戦争反対の旗を掲げ果敢に闘っ

た先人たちの歴史を消すことはできない。

 

大同団結を訴えた森瀧市郎さん

 

日本被団協結成は、森瀧市郎さんを抜きに語れない。森瀧さんは、子どもたちの手記集『原爆の子』が、広がりつつある平和教育の原点だと確信し、原爆孤児の精神養子運動を始動させ、「広島子どもを守る会」を結成し、会長に就いた(顧問・長田新/副会長・山口勇子)。そして、原爆は莫大な家族崩壊を招いたとし、「社会保障的立法から国家補償的立法の制度を」と訴えたことが、「原爆反対」「被爆者救援」活動の発端であったと述懐している(広岩近広『核を葬れ!』藤原書店)。

さらに、一九五四年のビキニ事件を契機に、原水爆反対の署名は国民的規模に広がり、森瀧さんは、原水爆禁止広島県協議会(広島原水協)の事務局長に推され、深く関わっていくことになる。あくまで党派や立場を超えた原水禁運動をめざし、「人類は生きねばならぬ」と訴え続け、非暴力の座り込みによって抗議を重ね「森瀧運動」の原点とした。

 第二回原水爆禁止世界大会(一九五六年、長崎で開催)時、第四分科会(原水爆被害者の実相と救援)終了後、原爆被害者の全国的結集が呼びかけられ、これが事実上、日本被団協の結成大会となった。事前の広島・長崎の被爆者たちをはじめとする懸命な活動がやっと実を結んだ。設立された日本被団協は、代表委員として広島から森瀧市郎、藤居平一、鈴川貫一、長崎から小佐々八郎、辻本与一が選出され、藤居平一さんが初代事務局長を務めることになった。

 藤居さんは、銘木店社長の任にあったが、家業と私財を投げうって、被害者(被爆者)運動の先頭に立ち、日本被団協結成等に尽力した。その出発点は、原爆被害者の会が編集した『原爆に生きて』(三一書房、一九五三年)との出会いであったと語っている。

 しかし、平和運動は常に分裂の危機をはらみ、第九回原水禁世界大会(一九六三年)基調報告で「原水禁運動の統一と団結こそが、平和への勝利の唯一の鍵であります」と森瀧さんは懸命に「統一と団結」を訴えたが、結局「いかなる国の核実験にも反対」という方針を巡り紛糾、「原水協」と「原水禁」に分裂した。

 よく、厳しい五〇年代を指し、「空白の十年」といわれるが、そのような「空白」は存在しない。被爆者運動一つとってみても、黎明を切り開いた多くの人たちの苦闘を無視しているだけだ。

 現在、広島にはまったく同じ名前の「被団協」が二つある(分裂の後遺症が今でも

続いている)。そんな中で「ノーベル平和賞」だけが一人歩きしている。「統一」に蓋をしたまま─―

 

2)手記集「原爆に生きて」

山代巴の方法

 

山代巴さんの代表作が「荷車の歌」(筑摩書房・一九五六年)というだけでなく、作品の創られ方と内容が、生き方に凝縮された表現になっていると同時に、水脈を手繰れば、原爆被害者手記集「原爆に生きて」(三一書房・一九五三年)の方法に突き当たる。

──「荷車のうた」は、農村の封建性の中で苦しむ女性を民話風に語り口で描いた作品で、平和ふじん新聞に連載され反響を巻き起こし、全国の農村婦人の十円カンパで一九五九年に映画化された。(監督・山本薩夫、キャスト・三國連太郎、望月優子他)さらに、劇団文化座の演劇(佐々木隆演出)によって全国公演が行われ、主人公<セキさん>の一生は多くの人びとに深い感銘を与え、繰り返し上演された。─―

山代はこの作品で、あきらめにも見える暮らしの底に一途な情熱や努力の埋もれている生活がある、と述べているように、沈黙を破り言葉を紡ぐ方法の道筋の大事さを問うている。

 

山代 巴

 

さて、敗戦後間もない時から、いちはやく原爆被害者問題にかかわり、先駆的役割を果たした先人の一人として、峠三吉と共に山代の名前があがる。有名なアンソロジー「原子雲の下より」(青木書店・一九五二年)には峠三吉との編者として名前を記しているが、入退院を繰り返す峠にかわり重責は山代の肩にかかり、具体的な原稿集めは、当時・広島大学学生であった川手健をはじめとする青年文化連盟の地域的活動が支えた。

この手法は、原爆被害者の手記集「原爆に生きて」に引き継がれた。川手は次のように述懐している。「再起できず沈黙している被爆者の家を一軒一軒訪ね歩く、文字通り地を這うような活動であった」と。

広島で初めての被爆者組織は、前述の活動等が実り、一九五二年八月に結成される。事務局長の川手健はこのように記録している。「猫屋町の知恩会館で結成式を行った。名称を<原爆被害者の会>とし、会則、事業計画も決定。役員として幹事五名(吉吉川清、佐伯晴代、内山正一、上松時恵、峠三吉)を選出、……まがりなりにもここに発足をみることが出来た」。

山代巴は、川手について次のように回想している。「アメリカの占領政策でものが言いにくい状況下、時代に沈黙している多数の被爆者個々の声に耳を傾け、多様な訴えを汲みあげ、一般に広めるという方法を川手はいつも示唆していた。=これを<川手健方式>と呼んだ」。

一部の人は、この時代を「空白の10年と表現するが、プレス・コード(占領軍による言論統制)下にありながら、三度核兵器を使わせないという闘いの10年が確かに存在したことは明らかである。とても「空白」の論に組みすることはできない。

二〇二四年一〇月、被団協にノーベル平和賞決定のニュースが流れた。私は、このニュースを重ね、「この世界に何が起きたか」その輪郭を描いた先人たちの労苦に思いを馳せた。

私たちは、この人たちのバトンを正しく受け継ぎ継承しているのだろうか、と。

 最後に。山代巴文庫(径書房)には、「荷車の歌」「原爆に生きて」をはじめ、「占領下における反原爆の歩み」「原爆被害者の会の背景」など示唆に富んだ小論が収録されている。

 特に、「原爆スラム」と呼ばれた基町・相生通りや被差別部落のあった福島町、胎内被爆、沖縄の被爆者等々をとりあげ、見過ごされた被爆者を焦点としたルポルタージュ「この世界の片隅で」(山代巴編・岩波新書・一九六五年)は、「平和都市広島」にあって屹立と輝いている。

 

― 完 ―

 

 


 

 

 

 

 

 

2024年11月12日火曜日

オンラインセミナー報告(2)

「平和の碑」が広げつなぐメッセージ 女性の尊厳と

 

人権~メルボルンとベルリンを結んで~

 

第二部: 報告2 最後の一言

Report on the online seminar The Message for Women's Dignity and Rights that the Peace Statues Convey - Linking Melbourne and Berlin

Part II: Presentation 2 & The Ending Remarks

 

報告2 Presentation 2

「アリはミッテ区の一部だ!」〜干渉を許さない住民たちの抵抗

梶村道子 Michiko Kajimura

Ari is part of the Mitte District ! : Residents resist against interference

Transcript for the PowerPoint presentation by Michiko Kajimura for the webinar The Message for Women's Dignity and Rights that the Peace Statues Convey - Linking Melbourne and Berlin (17:00-19:30 Japan time, October 26, 20204) 

 

梶村道子さん

 

 

 

 

 

                                   ベルリン市ミッテ区に設置されている「平和の像」

 

 

[Slide 1]

「アリはミッテ区の一部だ!」〜干渉を許さない住民たちの抵抗

Ari is part of the Mitte District ! : Residents resist against interference

 

[Slide 2 目次 The Table of Contents]

こんばんは。梶村です。まず、クリスティーンさん、ベルリンへの力強い激励のお言葉を、ありがとうございました。

Good evening. May name is Kajimura. First of all, thank you, Christine, for your strong words of encouragement for Berlin.

 

私は、ベルリン市のミッテ区に住んで、38年前になります。今日は、「アリはミッテ区の一部だ!」〜干渉を許さない住民たちの抵抗という題で、お話しさせていただきます。

I have lived in the Mitte district of Berlin for 38 years. In my talk today, I will be speaking under the title of Ari is part of the Mitte District ! : Residents resist against interference.

 

ご存知のように、今月はじめ、ミッテ区はコリア協議会に「平和の像」の撤去命令を出しました。この春から夏にかけて、「平和の像」を巡る状況は急転しました。夏の間、コリア協議会や像を支持するベルリン市の市民は、像の撤去を避けようと、考えうる限りの活動をしてきました。その過程で、日本政府がベルリン市やミッテ区に対して想像を超える圧力をかけていたことも、明らかになりました。今日はそんな話をいたします。

As you all know, the Mitte district has issued a “removal order” for the statue to its installer, the Korea Council (hereafter Korea Verband), by the 31st of this month. The situation surrounding the statue took a sharp turn this spring and summer. During the hot summer months, the Korea Verband and the citizens of the Mitte district and the city of Berlin, who support the statues, made every effort to prevent their removal. In the process, it became clear that the Japanese government was exerting unimaginable pressure on the city of Berlin and the Mitte district. Today I would like to tell you about these stories.

 

なお、「アリ」は「平和の碑」のニックネームで、アルメニア語で、「勇気」と言う意味です。またドイツ語文脈では、「平和の碑」はFriedensstatue、つまり「平和の像」と呼ばれています。ですので、今日も話の中で「平和の像」と呼ばせていただきます。

“Ari” is the nickname of the so-called “Peace Girl Statue,” which was installed in the Mitte district of Berlin four years ago. The original of this sculpture in Seoul is called “Peace Monument,” but in Berlin it is called “Peace Statue” or “Statue of Peace,” so I will use the term “Peace Statue” or “Statue” or “Ari” for short.

 

[Slide 3 現況 The Present Situation]

さてその「アリ」ですが、今現在、いつもの場所にあります。が、ミッテ区の出した「撤去命令」によれば、猶予期間は残り5日です。この「撤去命令」に対して、コリア協議会は、ミッテ区に対し異議申し立てを行い、行政裁判所に仮処分を申請して、その判断を待っています。

“Ari” is in her usual place, sitting on a chair. But it should be said that she is not actually there yet. According to the 'removal order' sent to the Korea Verband by the Mitte district, there are five days left in the grace period. The Korea Verband appealed this 'removal order' to the Administrative Court on October 10 and is awaiting its decision.

 

[Slide 4 設置からこれまでの経緯 History from installation to today]

はじめに、この5月までの経緯を、簡単に振り返っておきます。

2020年9月28日の除幕式の翌日、加藤官房長官が、極めて残念だ。撤去に向けてさまざまな関係者にアプローチし、わが国の立場を説明するなど働き掛けていきたい」と発言しました。早くも107日にはミッテ区が認可撤回と撤去命令を出します。これに対して、区議会は、115日に像の支持宣言を行い、121日に像の恒久的設置を区に求める決議をします。

Let's start with a brief history from September 2020.

The day after the unveiling ceremony on 28 September 2020, the Chief Cabinet Secretary Kato of the Japanese government said, “It is extremely regrettable. We will approach various people concerned and explain our country's position and work towards the removal of the statue.” On 7 October, the Mitte Ward District Office withdrew its approval and issued an order for the statue’s removal. On 5 November, the Mitte Ward District Council (hereafter “District Council”) declared its support for the statue, and on 1 December, the District Council passed a resolution calling for the statue to be permanently installed.

 

ここで指摘しておきたいのが、20211月に区議会に出された議案です。「紛争下の女性への性的暴力を記憶する、平和の像のコンペを実施しよう!」というもので、修正されて8月の区議会で採択されました。この決議が後に、区が、ベルリン市と連邦政府との間で、紛争時の性暴力を記憶する、ユニバーサルな碑を作ろうという話へと発展します。提案者のFDP自由民主党が一貫して像を不支持の立場なのが、当初から気になっていました。

It should be recalled that in January 2021, a proposal was submitted to the District Council to “organize a competition for a statue to commemorate sexual violence against women in armed conflict.” The proposal was amended and passed by the District Council in August, but this resolution later developed into a project in which the Mitte district entered into a partnership with the city of Berlin and the federal government to create a universal memorial to sexual violence committed during armed conflicts. The fact that the proponents, the Free Democrats, have consistently opposed the statue from the outset.

 

一方、像を支持する党派は、20213月と20226月に、像の存続を保証するよう求める議案を上程し、採択されています。

Meanwhile, the two proposals forwarded in March 2021 and June 2022 by political parties supporting the retention of the statue were also passed.

 

ではなぜ、区長は区議会の決議に従わないのかと皆さんは思われるでしょう。区議会決議は、区に対する拘束力がありません。区議会決議は区に対する要請でしかありません。「区は、区民の意志を代表する区議会決議を実施するための策を探ってください」というものです。区は、善処したがこれが限界ですと言えるのです。

So why, you may ask, is the Mitte Ward Mayor not following the decision of the District Council? The decision of the District Council is not binding on the Ward District. The purpose of the District Council resolution is that “the Ward shall consider measures to implement the resolution of the Ward District Council, which represents the will of the people of the ward,” but the Ward can say that it has tried its best, but it can no longer do so.

 

202211月、新しく就任した区長が、像はさらに2年間継続設置されると述べます。ところが2023年の1月に、再度の認可ではなく「容認」扱いだということが判明します。

In November 2022, the newly elected mayor told the Education Committee that the statue would continue to remain for another two years. In January 2023, however, it became apparent that that decision had not been authorized and was being treated as “permissible.

 

[Slide 5 ベルリン市長と上川外相の会談 Meeting between the Mayor of Berlin and Japanese Foreign Minister Kamikawa]

この「容認」状態で、一年半が過ぎた今年の夏の初め、ベルリンと東京の姉妹都市締結30周年で、ベルリン市長が日本を訪問します。そして5月16日に上川外相と会って、「問題の『慰安婦』記念碑については、解決の意向だ」と話します。その日出されたプレスリリースには、この件に関して、「市長は、関係者や区や連邦政府と協議中であり、『変化を実現することが重要』だ。紛争時の女性への暴力に反対する記念碑には協力を惜しまないが、一方的な表現は許されない。この協議には、日本大使も関与してもらうつもりだ」と言ったとあります。

After a year and a half of this state of affairs, things took a sudden turn at the beginning of summer this year. On 16 May, the mayor of Berlin, who was visiting Japan to mark the 30th anniversary of the Berlin-Tokyo sister city agreement, met with Japanese Foreign Minister Kamikawa and told her that he intended to resolve the “problem” of the “comfort women” memorial. A press release issued on the same day said “The mayor is in talks with relevant stakeholders and with the Mitte District and federal governments on the issue, and it is important that ‘change is achieved.’ We are willing to work with monuments against violence against women in times of armed conflicts, but unilateral statements will not be tolerated. We intend to involve the Japanese Ambassador in these discussions.”

 

このとき、日本外務省も、ベルリン市長と上川外相の面談を発表しています。ところが、日本外務省のウェブサイトには、平和の像に関するくだりが抜けているのです。市長が「この協議には、日本大使も関与してもらう」と言っているのに、です。だから、日本のマスメディアも、一切報じていません。ベルリン市のプレスリリースは、単にミッテ区に対する牽制だったのでしょうか。

At the time, the Japanese Ministry of Foreign Affairs also reported on its website about the meeting between the mayor of Berlin and Foreign Minister Kamikawa. However, the following is missing from the Japanese Foreign Ministry’s website. The mayor said that “the Japanese ambassador will also take part in these talks.” That’s why the Japanese mass media didn’t report it at all. What is the purpose of the mayor’s press release? Is it just a pick-off play against the Mitte District?

 

[Slide 6 キャンペーン「皆がアリのために!」始まる The campaign “We All For ARI !” begins]

ともあれ、この市長の発言は、平和の像を支持する人たちには衝撃でした。そのうえ、この直後に、ミッテ区長の政策補佐官が、像の「容認」状態は延長されないだろうと、コリア協議会に口頭で伝えてきました。そこで、「みんながアリのために!」というキャンペーンが始まります。

フットワークが良い日本出身の若い人たちが、524日にベルリン市庁舎前で、抗議集会を開きます。6月7日には、コリア協議会によるonline-Petition Save ARI!がスタートします。署名は、これまでに44,000筆を超えました。

Anyway, this press release came as a shock to those in Mitte district who support the statue. In addition, shortly afterwards, a political advisor to the Mitte District Mayor verbally informed the Korea Verband that acceptance of statue would not be extended. Various measures were immediately devised and organized to prevent the statue's removal. Young people from Japan did the footwork and immediately organized a protest rally in front of Berlin City Hall on 24 May, and on 7 June the Korea Verband launched the online petition “Save ARI!,” which has more than 48,000 signatures to date.

 

[Slide 7 「右翼に対抗するおばあちゃんたち」 “Grandmothers Against the Right”]

「右翼に対抗するおばあちゃんたち」は、平和の像の設置以来、毎月欠かさず像の前で集会を開いていますが、612日の集会が、像の前での「みんながアリのために!」キャンペーンの、始まりになりました。その後、像の前では、大小さまざまな催しが毎週続きました。

区長宛に像の存続を求める絵ハガキキャンペーンが、この集会で、スタートしました。

On the second Wednesday of every month, the organization called “Grandmothers Against the Right” hold a rally in front of the statue, and the rally on 12 June marked the start of the campaign in a public space. Since then, there have been weekly events of varying sizes in front of the statue. The rally was used to launch a postcard campaign to the Mitte District Mayor, urging her to keep the statue in place.

 

[Slide 8 「紛争下の性暴力根絶のための国際デー」 International Day for the Eradication of Sexual Violence in Conflict]

619日には昨年に続いて、コリア協議会とベルリン女の会の共催で「紛争下の性暴力根絶のための国際デー」の集会が開かれ、昨年同様、移民ルーツの女性団体が多く集まりました。決議文には、以下の要求項目が盛り込まれました。

「平和の像は、モアビットに残らなければならない!連邦政府とベルリン市は、区の案件に干渉するな。連邦政府とベルリン市は、市民社会を干渉から守れ!」。

On 19 June, the International Day for the Eradication of Sexual Violence in Armed Conflict was held, as in previous years, jointly by the Korea Verband and the Berlin Women’s Association. As in previous years, feminist organizations with immigrant roots gathered to hear the following statement: “The Peace Statue must remain in Moabit! The federal government and the city of Berlin must not interfere in the affairs of the district. The federal government and the city of Berlin must protect civil society from interference!”

 

[Slide 9 住民参加1 Resident participation (1)]

区民の区政への直接参画ツールを利用して、区と区議会への働きかけも始まりました。その一つが区民質問です。6月20日の区議会で、二人の区民が質問に立ちました。

Using the systems that allow citizens to participate directly in the Ward District administration, they began to put pressure on the District Council and the District Administration. One of these systems is citizens’ questions to the District Council, and two residents from the Mitte Ward asked questions at the District Council meeting on 20 June.

 

ゲーリーさんは、市長は平和の像の表現は一面的だから撤去すべきだというが、区長も同意見か、と質し、マサオさんは、世界各地で戦争が続いている今こそ、平和の像が必要だ。像の「容認」は、現行規定でも延長可能なのではないかと、問いました。この二人を応援する人々が、区議会前に集まりました。

One of the two residents, Gary, asked whether the mayor’s view that the statue was one-sided and should be removed was generally shared by the residents of the Ward, while the other resident, Masao, said that statues of peace were needed now as wars were still being fought around the world, and asked about the possibility of keeping the statue. There was a rally in support of these two questioners outside the District Council meeting.

 

また、「『慰安婦』像は残るべきだ!」という議案が、この日の区議会で上程されています。像を支持する社民、左派党、緑の党の提案です。議案は文教委員会に回され、9月の区議会で再審議されました。

Also that day at the community meeting, councilors from the Social Democrats, the Left Party and the Greens, who support the statue, proposed “The statue must stay” and put a motion on the agenda. The proposal was sent to the Education Committee on 10 July and will be discussed again at the next District Council meeting in September.

 

[Slide 10住民参加2 Resident participation (2)]

もう一つの区民参加ツールが、住民請願です。区議会に議案を提起できますが、これには区民1000人の署名が必要です。9に開かれる区議会を目指して、平和の像の前やミッテ区内の夏祭りなどで署名を集めました。しかし、請願書は7月下旬に区議会議長に渡さねばなりません。果たして1,000筆が集まるかどうか、その上、あいにく夏休み中です。提出した署名が、議会事務局で適切に処理されるかどうかも、心配されました。

Another system of community participation is the residents’ petition, which allows a proposal to be put to the District Council, but requires the signatures of 1,000 community residents. The petition must have been submitted to the Chairman of the District Council by the end of July in order to reach the Council in time for the September meeting. There were concerns about whether 1,000 signatures would be collected and whether the Council secretariat would be able to properly process the signatures submitted during the summer holidays.

 

[Slide 11住民参加3 Resident participation (3)]

区民請願の内容は、「平和の像が、現在地に記念碑として長く維持されるように、区は他の当局と協力して必要な措置を講じるべきだと、区議会が決議してほしい」というものです。2週間で2,216筆の署名が集まり、731日に区議会議長に手渡されました。

その後もコリア協議会に届けられた1,000筆余りを合わせると、3,311筆です。ミッテ区の人口が39万人強ですから、区民の約1%支持があったことになります。この区民請願は、9月19日の区議会で審議されることになりました。

However, 2,216 signatures were collected within two weeks. These signatures, along with the petition, were handed to the District Council Chairman on 31 July and were due to be discussed at the District Council meeting on 19 September. The total number of signatures is 3,311, including more than 1,000 that were subsequently submitted to the Korea Verband. As the population of the Mitte Ward is over 390,000, this represents about 1% of the population of the Ward.

 

[Slide 12 教育プロジェクトへの市長の介入1 Berlin Mayor’s intervention in education project (1)]

8月の始め、コリア協議会がベルリン文化教育プロジェクト財団に助成申請をした教育プロジェクトの審査に、市長が介入したと、地元のマスメディアが報じました。背景には日本大使館の圧力がうかがわれるというのです。

In early August, the local mass media reported that the mayor of Berlin had intervened in the review of an educational project for which the Korea Verband had applied for a grant from the Berlin Foundation for Cultural and Educational Projects. The report suggested that this was due to pressure from the Japanese Embassy.

 

コリア協議会は2021年以来、『私の隣に座って!』というプロジェクトに、同財団の助成を受けてきました。審査委員会がこの企画を全会一致で推薦したにも関わらず、申請が却下されたことは、4月にわかりました。市長の訪日の一月ほど前のことです。

Since 2021, the Korea Verband has received a grant from the Foundation for the project “Sit next to me!” In April they found out that the project they had applied for this time had not been approved by the Education Advisory Committee, despite the unanimous recommendation of the Review Committee. This was just before the mayor’s visit to Japan.

 

報道によれば、「日本政府との問題上、プロジェクトへの助成を認めないように」と、市長から電話があったと、諮問委員会のメンバーでもある教育省青少年担当次官が、委員会の冒頭で語ったそうです。その前には、日本大使館の文化担当官が、数人の委員会メンバーをホテルのレストランで饗応し、プロジェクトに反対するよう説得に努めたといいます。

According to reports, one member of the advisory committee, Undersecretary of Youth Affairs, Ministry of Education, told the committee at the beginning of the meeting that he had received a phone call from the mayor asking him not to approve funding for the project because of problems with the Japanese government. Prior to the committee meeting, a cultural attaché from the Japanese embassy hosted several members of the committee in a hotel restaurant in an attempt to persuade them to oppose the project.

 

メディアに対して、日本大使館は面談を認め、「このプロジェクトは、像に加担して一方的なナラティブを広めるものだ。アジアについて十分な知識のない青少年に反日感情が植え付けられる」と答えています。過去にも、コリア協議会の提供する学校プロジェクトが、日本大使館による干渉の結果、中止に追い込まれたことがありました。

In response to media enquiries, the Japanese Embassy said: “The project is complicit with the statue and promotes a one-sided narrative. It will create anti-Japanese sentiment among young people who do not have sufficient knowledge about Asia.” It is recalled that in the past a school project of the Korea Verband had to be cancelled due to the interference of the Japanese Embassy.

 

[Slide 13教育プロジェクトへの市長の介入2 Berlin Mayor’s intervention in education project (2)]

『私の隣に座って!』は、コリア協議会が2021年から続けている、青少年向けの啓発プログラムです。平和の像と、コリア協議会が運営する「慰安婦」ミュージアムの展示を教材に、生徒たちは、性暴力が構造的なものであることや、植民地主義がもたらした問題などを学び、自らの体験や家族史について省察する機会を持ちます。日本軍「慰安婦」問題はその学習の入口なのです。

“Sit next to me!” is an awareness-raising program for young people run by the Korea Verband since 2021. Using the Peace Statue and the exhibition at the Korea Verband’s “Comfort Women Museum” as teaching materials, students learn about the structural nature of sexual violence and the problems caused by colonialism, and have the opportunity to reflect on their own experiences and family history. The issue of the Japanese military’s “comfort women” is an entry point for such learning.

 

このプロジェクトに参加しているフリッツ・カルセン学校の職員会が、全会一致で、夏休み明けの9月17日に、「民主的教育を守ろう:『私の隣に座って!』を続けて!」という抗議声明を出しました。以下、抗議声明から引用します。

「フリッツ・カルセン学校の職員会は、学校のプロジェクト活動と民主的な学習への介入に抵抗する。私たちは、民主的な教育が国益や政治的利益の手玉に取られたことに愕然としている。私たちは、プロジェクト・ファイナンスの決定の見直しを求める。私たちは、学校における民主的な教育と民主主義に基づく行動が促進されることを、それが阻止されないことを、要求する」。

On 17 September, after the summer holidays, the staff association of the Fritz -Karsen School, which is continuously involved in the project, issued a statement of protest entitled “Defend democratic education: 'Sit next to me!’ to continue the project!” Below is a quote from the protest statement.

The staff association at Fritz-Karsen School opposes interference in the school’s project work and democratic learning. We are appalled that democratic education has been played into the hands of national and political interests. We demand a review of project funding decisions. We demand that democratic education and democratic action in schools be promoted and not thwarted.

 

919日の区議会前での集会では、同校のプロジェクト担当教員と生徒たちがこの声明を読み上げ、アリの存続を訴えるスピーチをしています。

The school’s project leader and students took part in a rally in front of the District Council Building on 19 September, where they read out this statement and made speeches calling for the Statue of Ali to continue. 

 

[Slide 14日本軍「慰安婦」メモリアルデー1 Japanese Army “Comfort Women” Memorial Day (1)]

8月14には、例年、ベルリン女の会とコリア協議会などの韓国系団体が、ブランデンブルク門前で、日本軍「慰安婦」メモリアルデーの集会を持ちます。今年は、像の存続を支援するため像の前で開きました。

On 14 August, the Japanese Women’s Initiative Berlin, the Korea Verband and other Korean organizations usually hold a rally in front of the Brandenburg Gate to commemorate the Japanese Army’s “Comfort Women.” This year they decided to hold it in front of the statue to support its continued existence.

 

この間のキャンペーンや、前述した暴露記事の影響はことの外大きく、参加者は述べにして300人。小さな広場の周囲の舗道にまで人が溢れました。

The impact of the recent campaign and the aforementioned exposé was undeniably significant, with a total of 300 people attending. People even spilled onto the pavements around the small square.

 

[Slide 15日本軍「慰安婦」メモリアルデー2 Japanese Military “Comfort Women” Memorial Day (2)]

集会のモットーは、「平和の像は、残らねばならない『慰安婦』被害者を想い起こそうあらゆる性暴力にノーを言おう」というものです。

ベルリン女の会は、日本軍性奴隷制のサバイバー9人の証言を読み上げ、「慰安婦」問題が、それを日韓の外交問題に矮小化する日本政府の主張とは異なり、アジアの多くの地域の被害女性たちに関わる問題であることを訴えました。ある全国紙は、マレーシアのロザリンさん、東チモールのマルタさん、インドネシアのマルディエムさんの証言を引用してくれました。

The theme of the rally is: “Peace statues must remain! Remember the victims of ‘comfort women’! Say no to all forms of sexual violence! The Japanese Women’s Initiative Berlin read out the testimonies of nine survivors of Japanese military sexual slavery, confirming that, contrary to the Japanese government’s insistence that the “comfort women” issue be reduced to a diplomatic issue between Japan and South Korea, it is an issue that affects women victims in many parts of Asia. A national newspaper quoted the testimonies of Rosalind from Malaysia, Marta from East Timor and Mardyiem from Indonesia.

 

[Slide 16日本軍「慰安婦」メモリアルデー3  Japanese Military “Comfort Women” Memorial Day (3)]

続いて26人のスピーチ・マラソです。26人は、移民系ルーツの住民グループ、フェミニスト団体、労働組合、区議会議員、政党の青年組織、近所の住民などなど。当日まで参加の申し込みが引きを切らず、集会は1時間も延長しました。

This was followed by a speech marathon of 26 people. These 26 individuals included residents' groups, feminist organizations, trade unions, ward councilors, political party youth organizations and neighborhood residents. The rally, which was planned to last one and a half hours, ended up lasting two and a half hours, as applications for participation were not received until the morning of the day of the event.

 

[Slide 17 9月19日区議会 19 September District Council meeting]

9月19日の区議会では、1時間の討議の後、住民請願と、「『慰安婦』像は残るべきだ!」という議案が採択されます。この議案の内容は、平和の像がミッテ区で長期的に維持されるよう、区に要請する。具体的には、容認状態を延長するための、法規上の可能性を検討し、長期貸与や贈与、あるいはコンペを通しての維持の可能性について調査するように、というものです。

At the District Council meeting on 19 September, a petition from residents and a proposal from the three parties were accepted after an hour of debate. The content of this proposal is to ask the Mitte Ward to ensure that the Peace Statue is maintained in Mitte Ward in the long term. Specifically, the council is asked to examine the legal and regulatory possibilities for extending the permit status and to investigate the possibility of maintaining the statue through long-term rental, donation or competition.

 

しかし、区長は、「コンペを経ていないプライベートなアート作品の公共空間での展示は、行政法規上、2年以上は認められない」と主張し続けました。「コンペを経た作品だけが、長期間設置できる正しい記念碑」であり、像がミッテ区に残るには私有地への移転しかないというのです。

However, the Mitte Ward mayor insisted for 20 minutes that, according to administrative regulations, the display of private works of art in public spaces that have not gone through a competition is not allowed for more than two years. 0ne of the representatives of the residents countered that the Peace Statue is a monument! Yet, the mayor insisted that only works that have gone through a competition are the right kind of monuments.

 

区議会前で開かれた「私達は真剣だ ― 平和の像アリは残る!」という集会は、4時間に及びました。

In front of the District Council building, citizens held a gathering over four hours under the slogan “We are serious - the peace statue will stay!”

 

[Slide 18撤去命令 Order to remove the statue]

区議会の5日後の24日に、区長は、コリア協議会を面談に招き、民間の敷地への像の移転を提案します。それは、具体的な候補地を明らかにせずに、4週間以内に移転せよという一方的なもので、コリア協議会は、26日に弁護士を通じて、妥協提案を区に送ります。しかし、すでにその前日の25日に区長がプレスリリースを出し、「交渉は決裂し、区は「撤去命令」を出さざるを得なくなった」と発表します。コリア協議会の妥協提案は拒否されました。

On the 24th of September, five days after the District Council meeting, the mayor invited the Korea Verband to a meeting and proposed that the statue be moved to a private site. The Korea Verband did not accept the unilateral condition that the statue be moved within four weeks without revealing the specific location, and on the 26th the Korea Verband sent another compromise proposal to the Ward office through its lawyer. However, on the previous day, the 25th, the Ward Mayor issued a press release announcing that negotiations had broken down and that the Ward had been forced to issue a “removal order.” Thus, a compromise offer from Korea Verband had been rejected.

 

「撤去命令」によれば、今月31日までに像が撤去されなければ、3,000ユーロの過料が科せられます。コリア協議会は、1010日にミッテ区に対し、異議を申し立て、同16日に行政裁判所に仮処分を申請しました。

According to the “removal order,” if the statue is not removed by the 31st of this month, a fine of 3,000 euros will be imposed. The Korea Verband has appealed to the Administrative Court on October 10.

 

[Slide 19 日本政府の介入 Japanese government intervention]

ミッテ区の区長は、19日の区議会で、日本や韓国からの圧力があったことを認めました。また、翌日の9月20に、独日協会で離任の挨拶講演をした在ドイツ日本国大使が、講演の最後に像の件に触れたという話も伝わってきました。大使は、像の撤去は在任4年間における彼の任務だったといい、「ミッテ区長もベルリン市長も、日本の立場を非常によく理解して、尽力してくれた。しかし、区議会の多数派は反対し続けている」と述べたということです。

At a district council meeting on 19 September, Mitte Mayor Remlinger admitted that there had been pressure from Japan and South Korea. It was also reported that the Japanese Ambassador to Germany, who gave a farewell speech to the German-Japanese Society the following day, 20 September, mentioned the statue at the end of his speech. The Ambassador said that the removal of the statue had been his mission during his four years in office and that “both the Mayor of Mitte and the Mayor of Berlin understood Japan’s position very well and did their best. However, the majority of the District Councilors remains opposed.”

 

日本政府は4年前の設置当初から、公然と像の撤去を求めて来ました。ドイツにおける過去の事例からも、以降も、干渉がやまないであろうことは予想できました。しかし、ベルリン市長を介して関連プロジェクトまで、妨害するといった行為は、もはや、これまでとは次元が異なる介入だと言わねばなりません。

The Japanese government has been trying to remove the statues since 
they were first installed four years ago. We knew from occasional news 
reports, from previous cases in Germay and even from the testimony of 
local councilors that Japanese interference had continued since then.
But interference by Mitte Ward Mayor and Belin Mayor, as in the 
blocking of the education project, was beyond our imagination. 
It means another dimension.

 

ドイツのメディアは、今回も頑張ってくれました。プリントメディア3紙と放送メディア1局です。地元の公共放送はラジオとTV番組で取り上げています。ところが、日本政府による干渉は、実は現地のマスメディアにも及んでおり、平和の像についての記事を報じたジャーナリストに日本大使館が接触するといったことまで起きています。政府による言論界への干渉圧力、これは残念ながら日本では周知のことですが、それを、外国の言論界にまで広げているのです。

The German media - three print and one broadcast - did a great job again. The local public broadcaster covered the story on its radio and TV programs. However, the Japanese government's interference also extended to the local mass media, with the Japanese embassy even contacting journalists covering the peace statue. The government's pressure to interfere in the world of mass media, which is unfortunately well known in Japan, has been extended to the world of foreign speech.

 

[Slide 20ドイツ各地の展示への介入 Interventions in exhibitions around Germany]

これは、これまでにドイツ各地で、平和の像が一時展示、もしくは常設され、あるいは計画が頓挫した事例です。(B)はブロンズ像、(P)は硬化プラスティック像です。

The following table shows the cases where peace statues have been temporarily or permanently exhibited in various parts of Germany, or where the Japanese Government’s intervention has put a halt to the project. There are bronze statues (B) and hardened plastic statues (P):

 

(B)20169 フライブルク市。計画頓挫

(B)2017年3月〜 ヴィーゼント市。ネパール・ヒマラヤパーク。碑文削除

(B)2018 ボン市。女性ミュージアム。計画頓挫

(B)201889ハンブルクルター派教会ドロテー・ゼレ・ハウス

(P)2019年6月 ボーフム市でのドイツ福音教会教会デー

(P)2019年8月 女性芸術家団体ベルリン支部会員作品展

(B)20203月〜フランクフルト市の韓国福音教会

(B)2020年(?フランクフルト大学で一時展示

(B)(P)2021年4〜8月 ドレスデン民族博物館

(P)2021年7月〜9月 ミュンヘン市のアートセンター

(P)20224月〜7ライプツィヒ大学日本学科夏学期連続講義

(B)2022年7月〜2023年3月 カッセル大学構内。撤去

(B)20229月〜20231ヴォルフスブルク美術館

(B) September 2016, Freiburg. Plan aborted.

(B) March 2017 - Nepal Himalaya Park, Wiesent. Inscription removed.

(B) 2018 - Women's Museum, Bonn. Plan aborted.

(B) 2018, August-September - Dorothee Sälle House, Protestant Church, Hamburg.

(P) June 2019 - German Evangelical Church Day in Bochum.

(P) August 2019 - Exhibition of works by members of the Berlin branch of the Women Artists Association.

(B)March 2020 - Korean Evangelical Church, Frankfurt

(B) 2020 (?) Temporary exhibition at Frankfurt University

(B)(P) April-August 2021 - Folk Museum Dresden

(P) July-September 2021 - Munich Art Centre

(P) April-July 2022 Summer semester lecture series at the Department of Japanese Studies, University of Leipzig

(B) July 2022-March 2023, University of Kassel. Move.

(B) September 2022 - January 2023, Kunstmuseum Wolfsburg.

 

[Slide 21 外務省作成資料1 Documents prepared by Japan’s Ministry of Foreign Affairs 1]

これらの事例の大半において、日本の大使館や領事館は、像の設置者や展示の当事者にではなく、設置場所や展示会場を監督する官庁などのトップに接触しています。当事者に対して強い権限をもつ立場の人物を懐柔しにかかるのです。ミッテ区のケースも、例外ではありません。

In these cases, almost without exception, the Japanese government has approached the parties concerned and urged them to remove the statues, explaining Japan’s official position. The parties concerned are not those involved in the installation or display of the statues, but those in positions of authority over the people concerned, such as the head of the supervisory authority of the exhibition venue or installation site, or the head of the sponsoring organization. The case of Mitte Ward is no exception: the Ward Office and District Council, and above them the city of Berlin and even the federal government.

 

その際、これまでの事例では、この画像のような資料と、外務省のホームページで公開されている、「『慰安婦』問題についての我が国の取り組み」という文書が手渡されているようです。次ページは、その目次です。

At the time of the “approach,” you will probably always be given a copy of Japan’s position on the “comfort women” issue, which is available on the website of the Ministry of Foreign Affairs, and this document prepared by the Ministry of Foreign Affairs. The next page is its table of contents.

 

[Slide 22 外務省作成資料2 Documents prepared by Japan’s Ministry of Foreign Affairs 2]

介入の具体例を、一例紹介します。2019年の6月プラスティック像が、ボーフム市のドイツ・プロテスタント教団主催の教会デーで、三日間だけ展示されました。教会デーの終了後に、デュッセルドルフ総領事が、ヴェストファーレン・リッペ地方連合の会長を訪ねました。この人は、展示会場になったヴェストファーレン・リッペ・ミュージアムの管理・監督責任者です。総領事は、例によって、「慰安婦」問題に関する日本政府の見解を伝えて、「日本の植民地だった韓国は、『慰安婦』制度にも自ら加担した」とか、「韓国内の急進派が、日韓関係を悪化させている」などと述べたそうです。とんでもない話ですが、それでも日本政府の介入は、従来はこの程度で済んでいたのです。

Here is a concrete example of intervention: in the case of the German Evangelical Church Day in Bochum in June 2019, the plastic statues were only on display for three days at the Church Day organized by the German Evangelical Order. After the Church Day had ended and the display had been removed, the Consul General of Düsseldorf visited the Chairman of the Regional Association of Westphalia-Lippe, who was responsible for the management and supervision of the Westphalia-Lippe Museum, where the display was located. The Consul General informed him of the Japanese government’s position on the “comfort women” issue, stating that “Korea, as a Japanese colony, was also complicit in the “comfort women system” and that “radicals in Korea are worsening relations between the two countries.” It is terrible, but still, this is the extent of intervention the Japanese government has been able to get away with so far.

[Slide 23もうひとつの記念碑? Another monument? ]

9月中旬に、地元紙が奇妙な新事情を、報じました。「モアビット地区における日本外交、平和の像の対抗馬」という見出しです。

In mid-September, the local newspaper taz carried the headline “Japanese diplomacy in the Moabit district, a rival to the Peace Statue.

 

記事によれば、「紛争時の性暴力に反対する協会(SASVIC)と名乗る団体が、性暴力をテーマとする彫刻をミッテ区内で設置する準備を進めています。SASVICは、今年の6月にベルリンで結成され、7月に区に彫刻の設置認可を申請しています。この団体は、イギリスの「Lai Dai Hanに正義を」という団体と協力関係にあるそうですが、Lai Dai Hanとは、ベトナム語で、ベトナム戦争中に韓国軍兵士から性暴力を被った女性たちのことです。また、設置されるという彫刻は、イギリスの彫刻家レベッカ・ホウキンスの作品で、「石になったサバイバー」と名付けられています。ところが、そのLai Dai Hanに正義を」の理事でもあるこの彫刻家は、もう一人の理事のジャック・ストロウという人物、および、のちにSASVICの理事になる人物と三人で、すでに一年近く前に、ミッテ区の区長を訪ねているというのです。

According to the article, a group calling itself “Society against Sexual Violence in Conflict (SASVIC)” is preparing to exhibit a sculpture on sexual violence in the Mitte district of Berlin. SASVIC was formed in Berlin in June this year and in July applied to the district's “Art in Urban Space” jury for approval of a specific sculpture. The aim of the project is to raise awareness of sexual violence through art. They are said to be working with the British organization “Justice for Lai Dai Han,” where Lai Dai Han is the Vietnamese word for women who have suffered sexual violence at the hands of Korean soldiers. The sculpture in question, called “Petrified Survivor,” is by British sculptor Rebecca Hawkins, who is also a board member of the aforementioned Justice for Lai Dai Han. And she, along with another board member named Jack Straw, and a person who became a SASVIC board member later, visited the Mitte Ward District Mayor, Remlinger, almost a year ago, according to the District Mayor herself, who told the taz newspaper.

 

この件では、納得できないことが多すぎます。SASVICは当初、平和の像の立っている場所に彫刻を設置したいと申し出たが、その場所は避けるようにと助言したと、区長が9月の議会で発言しています。しかし区長は7月の時点では、平和の像の立っている場所に別の彫刻の認可申請が出されており、20254月に除幕されるだろうと、コリア協議会との面談で語ってます。いずれにしろ、「石になったサバイバー」設置計画が、像の撤去を至上命令としてきた、日本外務省にとって好都合なものであろうことは、容易に察しがつきます。実はこの「石になったサバイバー」という彫刻は、すでに2022年に、Preventing Sexual Violence in Conflict Initiative (PSVI)、という、イギリス外務省の主導する国際組織の会議で、公開されています。

There is much that is not clear about this matter: the Mitte Ward District 
Mayor told the Council in September that SASVIC had originally wanted
 to apply for permission for the site of the Peace Statue, but had been 
advised to avoid that site. However, when the District Mayor met with 
the Korea Verband in July, she said that an application had been submitted
 for approval of a specific sculpture on the site of the peace statue, 
and that it would be unveiled in April 2025. Either way, it is easy to 
see how the “petrified survivor” could be a boon to the Japanese Foreign
 Ministry, which, as the Japanese ambassador revealed, has made the 
removal of the statue a top priority. In fact, Rebecca Hawkins has 
already unveiled a prototype of the “petrified survivor” at a conference 
of the Preventing Sexual Violence in Conflict Initiative (PSVI), an 
international organization led by the UK Foreign Office, in 2022.

 

それから、Lai Dai Hanに正義を」の理事のジャック・ストロウですが、彼は、イギリスのブレア政権下で外相を務めた人物で、法相の経験もあります。そのような老練な政治家が、小さな地方自治体の、わずか2年間という期間限定の展示のために、利害を共にする彫刻家を伴って、しかも当時はまだ存在さえしていないSASVICという団体のために、イギリスからベルリンのミッテ区まで足を運んでいるのです。このプロジェクトに、一体どんなメリットがあり、そして、それは誰を利するのでしょう。

Then there is Jack Straw, the board member of “Justice for Lai Dai Han,” who was Foreign Secretary in the Blair government in the UK and also Secretary of State for Justice. Such an accomplished politician, together with a sculptor who shares her interests as a board member of the same organization, travelled all the way from the UK to Berlin Mitte for a two-year exhibition in a small community and for an organization called SASVIC, which didn’t even exist at the time. What are the benefits of this project? And who benefits from it?

 

[Slide 24 像のもたらしたもの What the Peace Statue has brought about]

2年前に、私は、平和の像が地元市民に受け入れられたと話しました。その像はこの間に、ベルリンの市民社会に欠けていた二つの重要なものをもたらしたことを、最後にお話しします。

Two years ago, I mentioned that the Peace Statue had been well received by local citizens. I would like to conclude by saying that the statue did two important things that were missing in Berlin's civil society at the time.

 

一つは、平和の像が、戦時性暴力の問題というテーマを、地域社会に持ち込み、それに関する議論を可能にしたことです。区議会議員たちは、「戦時性暴力の問題を、私たちに自覚させてくれて、感謝している」とコリア協議会に語りましたが、議論は、区議会に限りません。

One is that it brought the issue of wartime sexual violence into the community and made it possible to discuss it. Members of the District Council have told the Korean Verband that they are grateful that the issue of wartime sexual violence has been brought to their attention, but that the discussion is not limited to the District Council.

 

昨年の「紛争下の性暴力の根絶のための国際デー」では、スーダンの女性グループのサラさんが、「私たちにとって、日本軍『慰安婦』は、心からの関心事です。なぜなら、スーダンから来た私たちは、戦時下で、女性に対して暴力が振るわれることを、権力者が、サバイバーに正義がもたらされるのを拒否することも、よく知っているから」、と語りました。スーダンでは、その2ヶ月前に内戦が起こり、女性や子供への性暴力が続いていました。内戦は今も続いています。今年のメモリアルデーでは、像の近所に住む女性が、家族と自らが被った性被害について話しました。公の場で語ることはその人にとって、大きな決断でした。平和の像が、教育プロジェクトの中で、身近な性的体験について生徒たちの語りを促すエンパワーメントの役割を担っていることを、フリッツ・カルセン学校の教師や生徒たちが指摘しています。像が、日々、人々の目に触れる公共空間にあるからこそ、語られにくい性暴力が語られる契機になるのだと、複数の区議会議員も強調します。

At last year’s International Day for the Elimination of Sexual Violence in Conflict, Sarah from the Sudanese Women’s Group said: “For us, the Japanese military “comfort women” are a real concern. Coming from Sudan, we know very well that violence is perpetrated against women in times of war and that those in power refuse to bring justice to survivors. A civil war broke out in Sudan two months ago and there are several civil wars going on. On this year’s commemoration day, a woman who lives near the statue spoke about the sexual abuse that happened to her family and that she herself suffered. It was a big decision for her to speak publicly. In the educational project mentioned above, teachers and students at the Fritz Carlsen School point out that the Peace Statue plays an empowering role in making it easier for students to talk about their immediate sexual experiences. Several community councilors also emphasized that the fact that the statue is in a public space where people see it every day provides an opportunity to talk about sexual violence, which is difficult to talk about on a daily basis.

 

もう一つは、平和の像が、移民ルーツのコリア協議会によってもたらされたことです。ナチズムの過去を記憶する文化は、ドイツ統一後のナショナル・アイデンティティーですが、移民系コミュニティーの成員にとって、それは学ぶ対象ではありえても、必ずしも自己を投影できる対象ではありません。ミッテ区で、戦時の性暴力を記憶する平和の像というモニュメントが、議論を呼んだことは、ドイツの記憶文化のなかで、移民系コミュニティーにも発言権があることを、社会に示すことでもあったのです。

Another notable example is the role of the Korea Verband with migrant roots in shaping the image of peace. Following German reunification, the culture of remembering the Nazi past has become a significant aspect of national identity. However, for members of immigrant communities, it is primarily an object of learning and reflection, rather than a personal or collective reference point. The controversial Peace Statue, a monument to the memory of wartime damage in the Mitte district, has served to illustrate the presence and influence of the immigrant community in the German culture of memory.

 

― 終the End

 

(翻訳: 田中利幸 /English translation: Yuki Tanaka

 

The Ending Remarks (最後の一言)

 

クリスティーン・キムさん Dr. Christine Kim

 

I would like to thank Yuki and the team for organising this webinar and giving me the opportunity to speak to everyone here today. It’s been an honour to have been given this chance to talk about FCWM and the projects we have been working on. I’m also so grateful to everyone for taking interest in this issue, which I know is one that is hard to digest and requires courage. I hope we can support each other and work together to create a society where victims no longer need to fight for their own justice, for an apology and for their dignity to be restored, and where women and girls are no longer used as tools. I hope for a peaceful world and to bring peace to the victim survivors who have fought so tirelessly and courageously. Let us continue their legacy and honour them through remembrance. Thank you.

 

このウェビナーを企画し、今日こうして皆さんにお話しする機会を与えてくれたユキ(田中利幸)さんと日本軍『慰安婦』問題解決ひろしまネットワークのみなさんに感謝いたします。「メルボルン『慰安婦』友の会 FCWM」と私たちが取り組んできたプロジェクトについてお話しする機会をいただき、とても光栄です。また、消化するのが難しく、勇気が必要なこの問題に関心を持ってくださった皆さんにとても感謝しています。被害者が自らの正義のために、謝罪のために、尊厳を回復するために戦う必要がなくなり、女性や少女が道具として使われることのない社会を作るために、私たちが互いに支え合い、協力し合えることを願っています。私は平和な世界を願い、たゆまぬ努力と勇気をもって闘ってきた被害者たちに平和をもたらすことを願っています。私たちは彼らの遺産を引き継ぎ、追悼を通じて彼らを称えましょう。ありがとうございました。

 

梶村道子さん Ms. Michiko Kajimura

 

この画像は、イベントの際に花や人に囲まれた平和の像ではなく、普段着のアリです。後ろの公園から出てきた人が、スマホを耳に当てて話し中です。犬を連れています。こんな風景の中のアリが好きなのは、私だけではありません。この4年間、ミッテ区の住民は、特にモアビット地区の人たち、像の隣人たちは、この穏やかな光景に慣れ親しんできました。

 

This picture shows Ali in her normal clothes, not the peace statue, surrounded by flowers and people at the event. A person coming out of the park behind her is talking on the phone, with the phone to his ear. He has a dog with him. I am not the only one who likes Ali in this kind of landscape. Over the past four years, the residents of Mitte, especially those in the Moabit district and the statue's neighbours, have become accustomed to this peaceful scene.

 


 

 

時折、通りがかりの人が花を一輪添えて行きます。向かいに花屋があるのです。小さい子が空いている椅子によじ登ります。教育プログラムの生徒たちが、像の埃を払っていきます。ある区議会議員が言う通り、像はミッテ区の一部になりました。こんな光景がずっと続いて欲しい、ミッテ区の住民はそう願っています。だから、闘いはこれからも続くでしょう。今月末も、抗議行動が予定されています。なお、法廷費用や、市からの補助金打ち切りなど、日本政府の圧力の結果発生した経費を補填するために、コリア協議会は、クラウドファウンディングを始めました。ご協力いただければ、嬉しいです。

 

https://www.betterplace.org/de/projects/141233?utm_campaign=user_share

Occasionally, passers-by add a single flower. Across the street is a flower shop. A small child climbs onto an empty chair. Students from the education program dust the statues. As a District councilor says, “the statue has become part of the Mitte district.” The people of the Mitte Ward want to see scenes like this for a long time to come. So the struggle continues. Furthermore, the Korea Verband has initiated a crowdfunding campaign to cover the costs incurred as a result of pressure from the Japanese Government, including legal expenses and the cessation of municipal subsidies. We would be grateful for any assistance you could provide.

https://www.betterplace.org/de/projects/141233?utm_campaign=user_share

 

さて、この2枚の写真、まったく同じではありません。みなさんはどちらがいいですか。その理由もアンケートに書いてくださると嬉しいです。

 

Now, these two photos in the PowerPoint are not exactly the same. Which one do you prefer? It would be great if you could tell us why. I would be very grateful if you would take the time to fill in the survey form with your answer.

 

 

共同代表挨拶

田中利幸 Yuki Tanaka (Co-chair, Hiroshima Network for the Solution of Japan’s Military ‘Comfort Women’ Issue)

 

長時間のご視聴に深く感謝します。

We are very grateful for long hours of your participation in this webinar. 

 

つい昨日の日本のニュースで、大阪地方検察庁の元検事正が、酒に酔って抵抗できない状態の部下の女性に性的暴行をした罪に問われている裁判が始まり、元検事正は起訴された内容を認めました。被害者の女性検事がインタビューに答えて、6年間の間苦しんできたことを泣きながら訴えました。1回の性的暴力の被害であっても、被害者の心にはひじょうに深く、長く、痛ましい傷を残すものであることが彼女の訴えから理解できます。彼女は、今後も性暴力被害者に寄り添う検事として働きたいと述べました。おそらく、同じ犯罪の犠牲者に寄り添うことが、彼女にとっての心の傷の回復につながるからだと思います。

 

Just yesterday in the Japanese news, the trial of a former chief prosecutor of the Osaka District Public Prosecutor's Office, accused of sexually assaulting a female subordinate who was too drunk to resist, began and the former chief prosecutor admitted what he was accused of. The victim, a female prosecutor, was interviewed and wept as she described how terribly she had suffered over a period of six years; her complaint shows that even a single act of sexual violence can leave a very deep, long and painful scar on the victim's heart. She said that, as a prosecutor, she would like to continue working for victims of sexual violence. Perhaps because being close to victims of the same crimes helps her to heal from the emotional trauma.

 

数年にわたって、毎日、日本兵の性暴力に耐えざるをえなかった「慰安婦」と呼ばれた女性たちの心の痛みがどれほど深いものであったか、私たちの想像を超えていますが、この検事の証言から、その一端を感じることができます。しかも、朝鮮、中国を含むアジア太平洋全域の無数の女性に対する性暴力という「人道に対する罪」が国家権力の名で正当化され、その罪をいまだに日本政府は認めようとしていません。「平和の像」は、そんな無責任な国家政府に対して責任を追求し続ける、人間の叫びの象徴なのです。

 

It is beyond our imagination how deep the emotional pain must have been for the women known as 'comfort women' who were forced to endure daily sexual violence by Japanese soldiers for several years, but we can feel some of it through the testimony of this prosecutor. Furthermore, the 'crimes against humanity' of sexual violence against innumerable women throughout the Asia-Pacific region, including Korea and China, were justified in the name of state power. However, the Japanese government continues to refuse to acknowledge these crimes. The Statue of Peace serves as a symbol of the people's demand for accountability from a national government that has thus far failed to meet this obligation.

 

日本政府はその象徴である「平和の像」すら、破廉恥にも狡猾な手段をとって撤去させようと躍起になっています。これは「慰安婦制度」の被害者に対する許し難い犯罪行為であるだけではなく、あらゆる性暴力被害者に対する度し難い侮辱行為だと言わざるを得ません

 

The Japanese government is now trying to remove even its symbolic 'Peace Statue' by shamelessly and cunningly resorting to various measures. This is not only an unforgivable criminal act against the victims of the 'comfort women' system, but also an unforgivable insult to all victims of sexual violence.

今日のお二人、クリスティーン・キムさんと梶村道子さん、のとても有意義な報告の内容から学んだことを、私たちの反性暴力の市民運動の国際的連帯を強めるために活かし、精神的にも文化的にも豊かで平和で、希望のある未来が築けるように、みなさんと一緒に活動を続けていきましょう。今日は本当にありがとうございました。

 

Let us utilize what we have learned today from the very powerful reports of the two presenters – Dr. Christine Kim and Ms. Michiko Kajimura - to strengthen the international solidarity of our civil movement against sexual violence and continue to work together to build a spiritually and culturally rich, peaceful and hopeful future for us all. Thank you again for your time today.

 

the End

(翻訳:田中利幸/translation Yuki Tanaka)