2023年1月19日木曜日

安保関連3文書批判

「広島G7サミットに反対する市民運動キックオフの2022年12月17日、10分間スピーチ」 

松村高夫

昨年12月17日に開催した「広島G7サミットに反対する市民運動キックオフ集会」で、東京からオンラインで参加、ご発言をしていただいた、「米国の原爆投下の責任を問う会」共同代表の、松村高夫(慶應大学名誉教授)さんから、ご自分のご発言を基に書かれた原稿を送っていただきました。広島選出の国会議員である岸田首相が、「核軍縮」を訴えながら広島でG7サミット会議を開催することがいかに欺瞞であるのか、そのいかがわしい矛盾を鋭く指摘するご発言だと思いますので、ご許可をいただき、ここにその全文を掲載させていただきます。

田中利幸

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「米国の原爆投下の責任を問う会」共同代表の松村高夫です。

昨日12月16日、岸田政権は、国家安全保障戦略(NSS)など安保関連3文書を、国会審議をすっ飛ばして 閣議決定しました。国会にかけず決めるという民主主義の無視もここに極まれりというべき暴挙です。事実上憲法を改悪しました。この決定により防衛政策は、これまでの専守防衛から「敵基地攻撃能力」保有へと大転換。岸田は軍事国家へと大転換させ、完全な「戦争屋」と化しました。

政府は「戦後最も厳しく複雑な安全保障環境の只中にある」として危機感を強調し、「敵国」としてはじめて中国、北朝鮮、ロシアの3国を名指ししています。そして5年後の2027年度には、防衛費を8兆9000億円、GDPの2%にするとしています。2%にする根拠は何も示されていません。まず先に2%が決められ、2023年度から5年間で総額43兆円の防衛費が決められました。その財源も明確にされないままに、です。決めたことは、米国製の巡航ミサイル「トマホーク」などを米国から大量に買い入れ、国産ミサイルの能力を上げ大量に製造することなどです。

このような軍事国家への大転換は、2つのことを意味しています。第1は、23年5月のG7広島サミットの首脳会談で日本の首相岸田が外交力を発揮するには強力な軍事力を持つことが必要なので、サミットが始まる来月1月を控えてわずか1週間で防衛費の財源を決めろというような無茶な指示をだしたのです。岸田は、国防は国家の責任で行うのではなく、「国民の責任」だと本音をもらし批判されたことからもわかるように、最終的には膨大な軍事予算を国民の税金から収奪しようともくろんでいます。消費税15%も狙っているようです。防衛費の急増は、間違いなく国民の生活水準を低下させ、これまで以上に貧困化が進みます。

第2は、日本経済は年々世界の中で相対的に地盤沈下してきていますが、これを浮上させるために日本経済の軍需産業化に踏み切る、つまり戦争準備国家に舵を切ったということです。周知のように、米国経済は1945年後世界の何処かで紛争や戦争を起こし兵器などを消費することによって経済の再生産が成り立ってきました。準戦時体制にし、絶えず軍事演習を行うことも好景気維持に必要なことでした。このことはクライナ戦争を見ても一目瞭然です。今回の敵基地攻撃能力保持のための増産する国産ミサイル「12式対艦誘導弾」は三菱重工が製造するものです。

注目すべき点は、「敵基地攻撃能力」の保持は、戦争勃発を抑止するどころか、逆に反撃をうけることにより日本全体が壊滅状態になる可能性がきわめて大きいという点です。日本政府は反撃を受ける可能性については一切口をつぐんでいます。相手国が武力行使に「着手」したときに、敵国にミサイルなどで攻撃できるとするのですが、その「着手」したとする判断基準が全くあいまいだから危険なのです。集団的自衛権を2015年の安保関連法で認めている日本は、米国に対して相手国が武力行使に「着手」したと判断した(誰が判断する?)とき、日本がミサイル発射せねばならないことも起こりうるので、これまた日本が反撃される危険が増します。昨日の内閣決定後ただちに米国大統領バイデンと国防長官が歓迎の意思を表明したことが何を意味しているのか、皆さん良く考えてください。「敵国」が日本の原発1・2箇所にミサイルを打てば、核兵器の使用と同じ効果があり、日本全土は壊滅状態になる。つまり「敵基地攻撃能力」保有は、岸田の「外交力」を増すことはあっても日本人全体の命がかかっている問題なのです。


岸田は自身が広島選挙区出身であることを掲げて、核廃絶のためには「被爆の実相」を明らかにすることが必要だと原爆記念式典でも説いてきました。だが、米国が広島・長崎に原爆を投下し、約70万人を殺傷者をつくり、そのうち朝鮮人は7万人、被爆者の1割を占めました。被爆朝鮮人7万人のうち殺されたのは4万人。日本政府は彼らに何の補償もしてこなかったし、実態調査さえしていないことがわかったのはつい1週間前のこと。核兵器については、21年1月22日に発効した核兵器禁止条約には、日本は最初から国連の会議には参加せず、核兵器禁止条約発効後も署名をせず、その後同会議に傍聴するのも拒否しています。このような日本の首相岸田が、「戦争屋」になりさがった岸田が、5月にG7広島サミットの議長になり開催するのは、大きな矛盾、とんでもない欺瞞という以外にはありません。

また、原発についても、フクシマ3・11以降、原発稼働を減らしていく政策であったにもかかわらず。本年夏、岸田は突然、原発再稼働を声明しました。突然、唐突にです。被爆者で帰郷できない者がまだたくさんいます。補償もわずかしかなされていません。放射能汚染水も漁業組合との約束を反古にして海に流そうとしていて、環境汚染の問題として国際的に批判を受けています。甲状腺がん患者の裁判も起こっています。これらから平然と顔をそむけ、突然唐突に原発再稼働を言い出す岸田!原発耐用年数60年以上も可とするとか、廃炉後には「次世代革新軽水炉」を再建することも平然と加える岸田。もともと地震国日本に原発をつくること自体が狂気の沙汰なのに、敵基地攻撃能力を整備しただけでも反撃を受けることは必至である。繰り返しますが、敵国がミサイルを日本の原発に二・三発落とせば、日本全体が放射線の拡大で壊滅的打撃を受けることは必至です。

ですから、G7広島サミットに抗議する市民運動は、昨日決定された防衛政策の大転換が、第1に相手国からの反撃により日本人一人一人の生命(いのち)がかかっている問題であること、そして第2に、膨大な軍事費増大の財源を国民の税金に求めることは透けてみえるので、市民の生活はさらに困窮すること。この生命生活の危機という二点を明確に示していけば、「戦争屋」と化した岸田が主催するG7広島サミットに抗議する市民運動は必ずや大きな共感が得られます。広島サミットに反対する市民運動は、日本の憲法を護っていく運動、民主主義をまもり発展させていく運動でもあることも理解されるにちがいありません。「米国の原爆投下の責任を問う会」は、以上のように考え行動していく所存です。

 

 


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