- 背後にある日本右翼団体の圧力運動と安倍政権の「野蛮」さ —
この論考は「日本軍『慰安婦』問題解決ひろしまネットワーク」のニュースレター最新号のために執筆したものです。お読みいただければお分かりのように、オーストラリアでは、最近、「なでしこアクション」のような右翼団体と「幸福の科学」が結託して日本の戦争責任否定と侵略戦争正当化の運動を強めています。「幸福の科学」の全く非科学的な、「死者との霊的会話を通しての日本の戦争行為の正当化」という馬鹿げた主張を簡単に信じてしまうその危険性を、私たちは決して軽視できません。こうした新カルト・グループと安倍晋三グループの主張とは奇妙に連動しています。
数週間前にメルボルンの新聞The Ageが、「幸福の科学」がメルボルンに支部を開設したことを記事にしましたが、地元の記者たちは、このカルトが右翼団体と連携していることについては全く無知のようです。
http://www.theage.com.au/victoria/blooming--happy-science-cult-channels-disney-ghandi-jesus-and-thatcher-20151028-gkkzow.html
「平和の碑・少女像」設置増加の背景
周知のように、「平和の碑」または「平和の碑・少女像」、「慰安婦像」とも呼ばれる銅像が初めて設置された場所は、ソウルの日本大使館前で、2011年12月14日のことであった。これは、1992年から同大使館前で行われてきた「水曜デモ」の1千回目を記念して、韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)が設置したものであった。この銅像設置からわずか4日後から始まった日韓首脳会談で、当時の首相・野田佳彦が李明博大統領に銅像の撤去を要求したが、李大統領は「日本側からの謝罪がなければ、第2、第3の像が設置されることになるであろう」と警告して、この要求を拒否。警告どおり、それ以降これまでのわずか4年近くの間に、韓国内ではすでに10カ所以上の場所に同じような少女像が設置されているし、米国では、カリフォルニア州のグレンデール市(市中央図書館に隣接する公園内)に2013年7月30日に、ミシガン州デトロイト市内(韓国文化会館前庭)には2014年8月16日に、それぞれ設置された。
韓国外では、米国カリフォルニア州のフラトン市やカナダのバーナビー市でも「慰安婦少女像」設置の提案が出されているが、両市とも一応「当面保留」という形で、事実上は拒否した形になっている。
オーストラリアのシドニーの郊外(市街中心部から14キロ離れた)ベッド・タウンであるストラスフィールド市(人口約4万人)では、今年8月11日に開かれた特別市議会で、市長を含む7人の議員中、投票した6人全員の反対で「平和の碑・少女像」設置提案が拒否された。投票を行わなかった1人は、当時の副市長の韓国系豪州市民(男性)であるサン・ルーク・オク(Sang Luke
Oku)という人である。この人は、銅像設置提案を行った団体である「日本戦争犯罪に反対する韓中連合豪州統合」(United
Austral Korean-Chinese Alliance against the Japanese War Crimes 以下「韓中連合」と略)という、オーストラリア在住の韓国系と中国系住民の連合組織の前議長という地位にあっため、公平性を保つという理由から投票を辞退したと思われる。(ちなみに、市長職は議員の間での持ち回り制になっており、現在の市長はオク氏。)
実は、ストラスフィールド市における銅像設置提案は、2014年2月10日に正式に設立された「韓中連合」の当初からの目的の一つで、この組織のその他の運動目的には、その前年2013年12月末に安倍晋三が靖国参拝を行ったことから首相の靖国参拝反対、「慰安婦」問題における安倍政権政策批判、南京虐殺に関する原資料のユネスコ世界記憶遺産登録運動支援、戦争犯罪に関して日本政府への謝罪要求などが含まれている。最近高まりを見せている、こうした韓国系や中国系豪州市民による日本の戦争責任追及運動の背後には、近年、韓国・中国の両国、とりわけ中国(香港、台湾を含む)からの豪州移民人口が急激に増加しているという状況がある。現在、オーストラリアにおける中国系移民の総人口は70万人、韓国系移民人口は15万人近く(そのうち、シドニーならびにその近辺地域では、それぞれ、45万人と10万人)いると言われている。ストラスフィールド市の人口4万人のうち、2割が韓国系、1割が中国系である。すなわち、市の住民の4人に1人ほどが韓国系か中国系という街なのである。ストラスフィールド市より人口絶対数ははるかに大きいが、米国グレンデール市の20万人という人口のうち、韓国系住民が5パーセント(1万人)という状況と類似している。
つまり、グローバル化に伴う東アジア系住民の世界拡散状態によって、日本軍性奴隷問題に限らず、戦争犯罪全般に関わる日本政府責任追及運動も急激にグローバル化しているというのが現実である。ところが、情けないことには、相変わらず歴代の日本政府、とりわけ安倍政権は、「責任回避」どころか「歴史事実の否定」による「責任拒否」という態度をとり、そのためにはあからさまな虚偽発言と右翼活動の背後支援、中韓両国政府批判、ユネスコへの恫喝まがいの批難といった、なんともはなはだしい時代錯誤と人権意識の徹底した欠落のほどを、厚顔無恥にも世界中に露呈しているのが実情である。ところが安倍晋三や彼を取り巻く菅義偉といった政治屋たちは、自分たちの言動がどれほど国際政治通念からかけ離れているかすら気がつかない。したがって、こうした「自己責任拒否」という自分たちの無責任言動が、ますます海外での反日感情を高めているということ、いわば自分たちで「火に油を注いでいる」ということも判断できないという無能ぶりである。
有名なフランス文学者・渡辺一夫(1901〜1975年)がアジア太平洋戦争の最終年1945年に書き綴った『敗戦日記』の5月25日の部分では、フランスの婦人記者アンドレ・ヴィオリスが1933年に出した著書『日本とその帝国』からの引用として、以下のような文章を書き写している。「日本人とは何かを研究するには、超近代的文明の表層の下に姿を潜めているこの野蛮な地層を忘れてはならない…..」、「こういう気違いじみた無秩序な動きが、いうまでもなく日本人にとっては文明の徴しなのである」。80年以上前に書かれたこうした容赦のない日本批判の表現が、今の安倍政権の「野蛮」さと「気違いじみた無秩序」にそのまま当てはまる。1930年代同様に、国際社会は、安倍政権の劣悪さがいかにひどいものであるかを明確に認識していることを、私たちは厳しく自覚すべきなのである。
銅像設置反対運動をすすめる日本右翼団体
今年8月11日のストラスフィールド市の特別市議会で銅像設置提案が拒否された背景には、日本側の猛烈な反対運動があった。銅像設置提案は、2014年2月の「韓中連合」設立とほぼ同時にストラスフィールド市に出されたのであるが、すぐに日本から提案反対のメールが市役所宛に多数送られてくるようになり、今年の8月までそれは続き、毎日少なくとも40から50通のメールが送られてきたそうで、その多くがヘイト・メールであったそうである。その上、「慰安婦」問題は嘘のプロパガンダだと主張する、日本の国会ならびに地方議会議員からの反対表明の手紙も市役所に送りつけられてきたとのこと。こうした猛烈な日本側からの批難を受けて、対処に困った市役所は、豪州連邦政府ならびにニュー・サウス・ウエールズ州政府に判断を求める要請を出した。にもかかわらず、長く「ナシの礫」であり、最終的には連邦政府も州政府も介入を拒否。そのため、公聴会を開いたり会議を重ねたりしなければならず、最終的な決断に1年半以上もかかったというわけである。
日本からのこうした過激な反応の上に、2014年8月には、シドニーに突然「豪日コミュニティー・ネットワーク(Australia-Japan
Community Network)」(以下AJCN)と称する組織が立ち上げられ、ウエッブ・サイトで銅像設置反対運動のみならず、「南京虐殺」など日本の戦争犯罪の歴史事実を否定する主張を展開しはじめた。この組織のウエッブ・サイトでは、「なでしこアクション」や「史実を世界に発信する会」など、日本の戦争犯罪の史実や戦争責任を真っ向から否定し、安倍政権を支持する様々な右翼団体とのリンクが貼られている。一応、公平さを装って「韓中連合」のウエッブ・サイトも紹介はしているが、「反日中韓連合」というように「反日」という表現を加えての紹介である。
「なでしこアクション」は、あらためて説明するまでもないと思うが、日本軍性奴隷のみならず、戦時中の日本軍による強制連行そのものが「事実無根」と主張する女性団体で、山本優美子なる人物が代表であるが、彼女は「在日特権を許さない市民の会」(在特会)の副会長を2011年まで務めていた。グレンデール市に設置された「慰安婦像」の撤去を求めて訴訟を起こした原告団である「歴史の真実を求める世界連合」(代表:目良浩一)とも密接に連携している組織である。(この提訴には十分な根拠がないとして、カリフォルニア州連邦地方裁判所が、2014年8月に棄却している。)
ちなみに、2014年7月15〜16 日、ジュネーブで国連の自由権規約人権委員会が開かれ、6年ぶりで日本の人権保護状況に関する審査が行われたが、この審査会に、山本や目良を含む10名ほどの日本人が、「慰安婦の真実国民運動 対国連委員会調査団」と仰々しい名称のグループ名で傍聴者として出席。審査の妨害行為と受け取れるふるまいを行い、委員会議長から「許されない行為だ」と強く注意された。それのみか、審査セッション終了後には、
彼女たちは、委員の一人で日本軍性奴隷問題で日本政府代表に厳しい質問を行ったマジョディナ委員に詰め寄って、「慰安婦は高額の給料を支払われていた売春婦」、 「性奴隷20万人という数字の根拠は何か」などとまくしたてて抗議したため、マジョディナ委員が会場から助け出されなければならならないような状態になったとのこと。この審査では、女性差別、女性に対する家庭内暴力問題の上に、日本政府が表現の自由を侵害するとして規制を棚上げにしてきた、在特会に代表されるような組織によるヘイト・スピーチや排外デモも審議されたが、まさにこの会場で、このグループは、審査対象となったヘイト・スピーチや排外デモを、こともあろうに、委員たちの面前で実証した形となったのである。かくして、日本国首相である安倍とその支持派を支援する右翼団体が、国連の人権委員会の場で、首相と共有する女性差別意識と民族差別意識をあからさまにするという前代未聞の恥ずべき奇行を演じたわけである。つまり、日本政府と右翼団体の人権保護感覚の低劣さを、国連人権委員会の場で文字通り実証してしまった。
シドニー日本人組織
AJCN の実態
AJCN
なる組織の実態は、おそらくは「なでしこアクション」など幾つかの日本の右翼団体であり、現地シドニーの在住日本人のメンバーはそれほど多くはなく、そうした少数の現地の日本人メンバーも、主には歴史知識上の無知から右翼団体のプロパガンダにのせられて反対運動に関わっているものと推測される。AJCN は、銅像が建てられると「日本人の子供が、人種差別のために学校でいじめられる」とか、「すでに日本人所有の車のタイヤがいやがらせでパンクさせられた」とか、全く根拠や証拠もないヘイト・スピーチまがいのデマを広めている。この類のデマを現地在住の日本人はどうしても信じてしまいがちであるが、AJCN はこうした恐怖心をうまく利用しているように思われる。
AJCN はウエッブ上での自分たちの団体紹介では以下のように主張しており、この文面だけを見ると、いかにも平和的な草の根市民組織のような印象を受ける。
「特定の政治思想に依拠してではなく、ローカルコミュニティの平和と安寧を願い、子供たちの今と将来を守るという、市民として、親としての普遍的な願いに基づいた活動をします。その目的にかなうならば、民主主義社会において当然認められている正当な行為として、政府や政治家に働きかけることも活動に含めます。
私たちのモットーは、非敵対的合理主義です。意見が対立しても、憎悪に基づく敵対的な行為は避け、あくまでも融和と平和的共存・共栄を目指しながら、移民 社会に受け入れられるような冷静で合理的な主張を展開していきます。私たちが目指すものは、単に日系社会の利益ではなく、様々な人種を含むコミュニティの良識の勝利です。」
私たちのモットーは、非敵対的合理主義です。意見が対立しても、憎悪に基づく敵対的な行為は避け、あくまでも融和と平和的共存・共栄を目指しながら、移民 社会に受け入れられるような冷静で合理的な主張を展開していきます。私たちが目指すものは、単に日系社会の利益ではなく、様々な人種を含むコミュニティの良識の勝利です。」
ところが、実際行っている活動や言動はこれとは全く逆で、「敵対主義と憎悪」に基づく「ローカルコミュニティの平和と安寧を」破壊するようなものばかり。安倍の主張する「積極的平和主義」といった欺瞞的な虚偽発言を彷彿とさせる。代表者であるという山岡鉄秀(偽名?)なる人物が、AJCN サイトで、8月11日のストラスフィールド市の特別市議会で銅像設置提案が拒否されたことを報告しているが、その報告では、当時の市長であったジュリアン・バカリが「中韓反日団体に有利になるように、とことん時間稼ぎを行った」とか、「中韓反日団体の戦術に沿った方向に誘導しようと」様々な画策を行ったと、憎悪に満ちた個人攻撃。そのうえ、日本軍性奴隷問題は、「米中新冷戦構造において中国が日米、日豪分断を目的として世界規模で仕掛ける情報戦争の一端」なのであり、中国が「歴史問題と韓国人の反日感情をフルに利用して、日米、日豪関係に揺さぶりをかける戦略に出ている」と、日本の右翼グループの主張と全く同じように、すべては中国のせいにしている。
この山岡なる人物は、さらに次のようにも述べている。
「日本人は『自らが行ったことを棚に上げて他人を責めるのは恥ずかしいこと』と考えますが、そのような美徳は国際社会では通用しません。中国の人権弾圧は説明を要しませんが、韓国も、朝鮮戦争中および冷戦中に、米兵向けの慰安所を大統領命令で設置していました。現在、122名の元韓国人慰安婦の女性たちが、 韓国政府を相手取って訴訟を起こしています。非人間的な扱いを受け、病院で性病治療中にペニシリンショックで亡くなった女性も多かったとのことです。ま た、ベトナム戦争中には、韓国軍によるベトナム人女性の強姦と虐殺が横行し、ライダイハンと呼ばれて蔑まれる多くの混血児を残したことも公然たる事実ですが、韓国政府は未だに謝罪していません。これらの事実は韓国国内でも知られているにも拘わらず、完全に無視して、ひたすら日本の蛮行を世界に知らしめる、 と復讐心に燃えています。反日団体の代表が吐露しているように、長い朝鮮半島の屈辱の歴史において蓄積された鬱憤を晴らすことが真の目的であり、日本だけが唯一謝罪して恐縮してくれるがゆえに、反日を止めることができないという悪循環に陥っているのです。」
山岡が「自らが行ったことを棚に上げて他人を責めるのは恥ずかしいこと」などとは露にも思ってもいないことは、上の文章を読んでみれば誰の目にも明らかなこと。日本が戦時中に行った「蛮行」はすっかり「棚に上げて」おきながら、中国や韓国を「責める」ばかりで、「恥ずかしい」などとは金輪際考えてもいない。ところが破廉恥にも、同じサイトで
AJCNの活動目的として、「すでに溶け込んでいる豪州の多民族共同体、韓国人および中国人を含めた他人種の友人たちと仲良く付き合いたい」などと、堂々と主張しているのである。「仲良く付き合いたい」どころか「敵対主義と憎悪」丸出し。しかもAJCNは現地弁護士を雇い、この弁護士を通して、ストラスフィールド市役所に対して、銅像設置が行われるのなら、裁判に訴えるとまで伝えて脅かしをかけたのである。これが、安倍晋三が発するのと同じ「野蛮な虚妄偽言」でなければ、なんと表現したらよいであろうか。日本人がこのような愚行を海外で続けるならば、海外在住の日本人は現地住民から全く信用されなくなり、相手にされなくなるであろう。
圧力に屈した市議会と憂慮される今後
そんな AJCN は、8月11日夕方のストラスフィールド市の特別市議会傍聴にメンバーの動員をかけたようで(日本からの参加もあったか?)、「傍聴人300人弱を集め開催されました。椅子が足りず市のスタッフがあわてて補充するというハプニングもありましたが、AJCNの呼びかけに応えた100人を超す日本人が前部の席に陣取り、設置反対のスピーチに盛大な拍手を送り応援をしました」と自分たちのサイトで自慢げに報告している。あるオーストラリアの報道では、アジア系住民傍聴者の数は160名ほどであったということである。ストラスフィールド市民である韓国系や中国系住民も多く参加したと考えられるので、本当に100人もの AJCN サポーターが市外地から参加したかどうかは疑わしい。
市会議員による採決が行われる前に、銅像建設に対する賛成・反対のそれぞれの意見を2名づつ、合計4名が各人5分間づつ述べる機会が与えられたが、希望者は前もって市役所に申し込むよう広報された。この広報によると、意見陳述人がストラスフィールド市民でなければならないとは書かれていないので、市外の住民でも申し込むことができたようである。実際には応募者が多かったので、抽選で4名が選ばれたとのこと。そのうちの反対意見を述べた1人は、日本で南京虐殺史実否定を堂々と展開している「幸福の科学」のオーストラリア代表を務めるブライアン・ライクロフトという人物。彼は2010年に南アフリカからオーストラリアに移住してきており、妻が日本人で、子供を産んだばかりとのこと。彼の意見は下記のように要約できる。「朝日新聞」が「慰安婦」問題報道で間違っていたことを認めたように、「慰安婦」が「強制された売春婦」であるという証拠はなんらない。日本はナチスのような戦争犯罪は犯しておらず、それが証拠には、1万人のユダヤ人を救った杉原千畝のようなすばらしい外交官がいた。このユダヤ人救済には東条英機の強い支援があった。この「慰安婦」問題は、人道的問題でも女性の権利問題でもない。ネルソン・マンデラが述べたように、人間は基本的には人種のいかんにかかわらず全て平等。したがって、憎悪ではなく愛をもって平等な社会を作るべき。
このように、安倍一派が画策したと考えられる「朝日新聞謝罪」が日本軍性奴隷の全面否定の決定的証拠とされ、杉原に救われた6千人のユダヤ人の数が1万人にまで過大に推計されている。しかも、杉原は外務省訓令を無視してビザを発給し続けたため、戦後の1947年には外務省を辞めさせられていたこと、外交官として彼の名誉回復が行われたのはそれから44年も後の1991年であった事実は無視され、東条英機が杉原のユダヤ人救済を支援していたなどという、「幸福の科学」特有ともいえる真っ赤な嘘まで取り入れている。もっとも驚くべきことは、日本軍性奴隷問題が「人道的問題でも女性の権利問題でもない」という主張である。では、これはいったいどんな問題であるというのか。このような人権無視の発言を堂々としておきながら、結論ではマンデラを持ち出して「人間平等」を唱え、あたかも「人道平和主義」を装うことだけは忘れない。この主張の展開方法は、海外で最近やたらと杉原千畝の話を持ちだす、まさに安倍の「野蛮」な主張と同じである。
繰り返して述べるが、このように論理を全くなさない虚妄に基づく人権否定の主張は「野蛮」としか表現のしようがない。このような「野蛮」な主張が、「日本の名誉を守るため」と称してオーストラリアで展開されていることを、日本の市民は深く自覚すべきである。
こうした日本の右翼グループによる脅迫まがい、あるいはヘイト・スピーチまがいの言動に、市議会議員たち、とりわけ当時の市長であったバカリは、当初は、しばらく市役所側がこの件でなにも動きを見せなければ、こうした類のいやがらせ行為も時間とともに消滅していくだろうと甘く考えていたようである。ところが、その圧力運動は執拗に続き、おさまる兆しがいつまでたっても見えてこない。そこで、ついに8月11日の特別市議会で決着をつけることにしたわけである。市会議員のほとんど全員が、「このような不穏な状況を一刻も早く解消し、街に平安を取り戻すべきで、そのためには銅像設置は許可しないほうが得策」と考えたようである。かくして、結局は、市議会が、形式としては市の条例にそぐわないという理由で、実際には右翼の圧力に屈して決着をつけてしまったのである。
このストラスフィールド市の前例のため、今後オーストラリアの他の自治体で銅像設置提案がなされても、その提案が受け入れられる可能性はひじょうに少なくなったと言わざるをえないであろう。世界各地にはホロコースト・ミュージアムが設置されているが、これに対して、現地で「ホロコーストは嘘のプロパガンダ」などと反対運動を起こしたならばどうなるであろうか。AJCN がやっていることは、実際にはこれと同じような重大な犯罪行為ともいえる活動なのである。このことの重大性を私たちは深く認識し、対処方法を深刻に考えなければならない。
— 完 —
ちなみに、「日本軍性奴隷問題」に対する安倍晋三の長年にわたる「元慰安婦バッシング」の経歴については様々な情報がすでに出ていますので、いまさらあらためて情報提供するまでもないかもしれませんが、拙著論考「安倍晋三と日本軍性奴隷問題
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虚言に満ちた<慰安婦バッシング>とその日本社会的背景 –」を参考にしていただければ光栄です。
下記アドレスからダウンロードできます。
https://drive.google.com/file/d/0B6kP2w038jEAYmlvUWw0OTRxMHc/view?usp=sharing
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