昨日発売された『岩波講座 現代 第1巻:現代の現代性 — 何が終わり、何が始まったか —』の中に、ジョン・ダワー著の論文「第二次大戦以降の戦争とテロ」が一章として含まれています。
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翻訳を担当したのは私で、拙訳ですがご一読いただければ光栄です(このブログを見られた岩波書店のスタッフの方たちには申し訳ありませんが、3200円と安くはないので、買うのには高いと思われる方は図書館で借りて下さい)。編集本の一章としてはひじょうに長文の論考ですが、この70年の間にアメリカの戦争計画と戦略がどのように変化してきたのか、とりわけ、9・11事件後のアフガン・イラク戦争以降、アメリカの世界戦略がいかに急激にどのように変化し、それにともない、高度技術の兵器への応用によって戦争方法がどれほど「非人間的」になってきているかを鋭く分析しています。
今後、戦闘で自衛隊が米軍に直接加担する恐れがますます高まってきている現在、米軍の戦争方法がいかなるものであるかを知り、違憲である安保法制=戦争法を廃案するためにも知っておくべき情報が多々含まれています。
内容は以下の通りです:
1. 第二次世界大戦の遺物
2. 冷戦における核の恐怖
3. 冷戦期の戦争
4. 世界の旧体制と新体制:1990年代
5. 9・11事件と「新しいタイプの戦争」
6. 不安定の連鎖拡大反応
7. 将来の戦争
ジョン・ダワーは今年で77歳になりますが、いまや彼の研究分野は日本現代史を超えて、世界史的な観点から戦後の戦争問題を分析しようという壮大な構想になってきているようです。この論考は、いわばその序論とも言えるものではないかと思います。衰えをまったく見せない彼の研究活動には、本当に頭が下がります。
私が彼と初めて会ったのは、1987年で、彼の著書War Without Mercy(日本語初版『容赦なき戦争:太平洋戦争における人種差別』1987年)が出版されたあと間もなくでした。1987年半ば、豪州日本研究学会での基調講演者としてオーストラリアに招かれた折に、当時私が勤めていたアデレード大学にも来てもらって講演してもらいました。以来、私は、彼がほとんど10年おきに出版してきた名著の連続から多大な思想的影響を受けてきましたが、もちろん研究業績では彼の足元にも及びません。にもかかわらず、私の英文著書には「前書き」や「推薦文」を書いてもらうという光栄に浴しています。もともと柔和な人ですが、日本人にはとりわけ優しいところがあり、私もその恩恵をこうむっているようです。今回の拙訳が、そうした恩恵への多少なりとも「お返し」となれば幸いです。
1 件のコメント:
田中さん。私の問題意識とも重なった論稿の翻訳。ご苦労様でした。
さっそく読んでみます。
藤岡 惇
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