天皇裕仁と(安倍晋三の祖父)岸信介を含む多くの政治家や軍人の戦争責任を隠蔽し、裕仁を「平和主義者」であったなどという大嘘の神話をつくりあげて「平和憲法」を設置し出発させた日本の「戦後民主主義」が、当然ながら、もともと脆弱ではなはだしく歪んだ形の「民主主義」であったことを、私はこれまで機会があるたびに述べてきましたし、昨年は単著と言う形で活字にもしました(『検証「戦後民主主義」:わたしたちはなぜ戦争責任問題を解決できないのか』<三一書房>)。そんな「戦後民主主義」は、近年、安倍晋三内閣の下で文字通りボロボロ状態にされてしまったと言っても過言ではないと思います。
憲法9条をないがしろにし、政治権力を私物化して、やりたいことはやり放題の上に、嘘は言い放題。親分がそんな不遜な態度ですから、子分どもが同じようにやりたい放題、嘘は言いたい放題の態度をとることも当然。杉田水脈のように、子分は親分に忠誠心を示すために、安倍の気にいるような野卑なヤジを国会でとばす。批判されると虚偽と欺瞞で言い逃れ、責任は一切とらないどころか、批判した相手の信用を汚い手法を使っておとしめる。これはもはや「政治家集団」と呼べるようなものではなく、無責任極まりない連中の集まりである「ヤクザ集団」が日本の政治を動かしていると描写すべき状態です。
なぜ日本の「戦後民主主義」はこれほどまでに低劣なものにまで劣化してしまったのでしょうか?いろいろな理由があげられると思いますが、その中でも私が決定的に重要だと思うのは、自国の重大な戦争犯罪者の責任をうやむやにしてしまい、侵略戦争により数千万人のアジア人を被害者にした国家の罪を徹底的に償うことをせず、さらには、米国が原爆を含む無差別空爆で大量殺戮したという、自分たちに対して犯した犯罪を徹底的に追及することもしてこなかったことです。そのため、わたしたちの「正義感」が完全に堕落してしまったことに原因があると私は考えています。
権力者たちは、「法治国家」という形式的な概念を自分たちの権力を正当化し維持するために常に悪用します。法治国家が本来の法治国家として機能するためには、その法治国家の公正さが常に再生され続け、活用され続ける必要があります。そのためには、政治的、社会的な正義感が国民の間に深く根づき、強く働いていなければなりません。つまり、それは単に法を知識として理解しているだけではなく、さまざまな政治的、社会的な出来事が道義的に正しい(=正義な)のか、それとも不正(=不正義)であるのか、それを識別判断する能力をわたしたちがもっていなければなりません。その能力が「正義感」であり、同時に、不正である場合には、その不正を正す強い意志が「正義感」です。
この正義感を養うためには、不正=罪に対する深い認識が必要ですが、日本の場合、侵略戦争で犯したさまざまな残虐な戦争犯罪という罪に対する認識を国民的規模で深めることを、戦争直後から怠ってしまい、その後ずっと怠ってきました。こうした状況を作り出したのは、単に日本政府だけではなく、日本を占領した米軍(=米国)も加担していたことは言うまでもありません。そしてその米国も、多くの日本市民を無差別空爆で大量殺戮した罪を罪として明確に認識することをこれまで長年怠ってきたため、正義感が堕落してしまい、現在のトランプ政権のような無責任な政権を作り出してしまったのです。かくして、現在の「民主主義」と「日米軍事同盟」は、正義感を堕落させた日米両国政権の共同謀議で産み出されたものなのだというのが私の解釈です。
不正=罪に対する深い認識の上に立った正義感は、現在の政治社会状況に立ち向かうために必要なだけではなく、未来に向けてわたしたちの「倫理的想像力」を養うためにも不可欠です。自分たちの両親、祖父母、それ以前の世代が犯した「国家的不正=罪」の被害者の痛みに想像力を働かせ、その痛みを自分たちのものとして共有し、内面化することで、将来、同じような不正を自分たちも犯さないし、また誰にも犯させない、という「倫理的想像力」を身につけるためには、正義感が不可欠だと私は信じています。安倍政権が起こしているさまざまな問題からは、安倍晋三親分と彼を取り巻く子分どもの徹底した正義感の欠落、徹底した倫理的想像力の欠落を感ぜざるをえません。その点で、安倍は「お爺ちゃん」の文字通り「申し子」なのです。「慰安婦」や「徴用工」問題に対する安倍政権の対応でも、社会的、政治的な正義感や倫理的想像力のカケラすら感じません。
日本の場合、ドイツと違って、こうした強い正義感と倫理的想像力をもった政治家がもはやほとんどいないというは、国家的不幸です。この点でのドイツとの対照的な違いは、最近、メルケル首相がアウシュビッツで、シュタインマイヤー大統領がエルサレムのホロコースト記念館でそれぞれ行った感動的な演説の内容からも明確です。二人の演説からは、ジェノサイドを犯した加害国が長年の苦闘と努力で養ってきた国民的規模での正義感と倫理的想像力の素晴らしさが、心に浸み込んできます。
残念ながら、広島の「反核運動」にも、私は正義感と倫理的想像力、とりわけ戦争加害者・加害国としての正義感と倫理的想像がひじょうに薄弱、いやほとんど不在だと感じています。また広島市近辺の呉や廿日市でもひじょうに憂慮すべき事態が起きています。
下記は、広島の活動仲間である岸直人さんからいただいた情報です。お目通しいただき、ご協力をいただければ光栄です。
田中利幸
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私たちは呉教科書裁判に取り組む間、自衛隊の第六潜水艇追悼式への児童参加中止要請(佐久間艇長の行動は業務上の過失行為、賛美すべきではないこと)、などを通して自衛隊が深く学校教育に侵入してきている実態を体感してきました。昨年末には呉鎮守府開庁130周年を記念して、海上自衛隊音楽隊と呉市立高校吹奏楽部とがあろうことか呉市議会で合同演奏を行う「事件」や、同じく昨年秋自衛隊員が銃器を持ち呉市内を走り抜ける訓練をするなど、呉市や教育委員会と結びついた広報活動が活発に行われています。
これは呉市だけのものではなく、廿日市市や県内外全国的に、狙いを付けた行政への侵入を実行しているものと思われます。市長や教育委員会を抱き込み、学校や自衛隊関係者だけの閉鎖的な空間で実施するので、一般市民が気づくことが遅れるように思います。
また、相手が自衛隊なので「たてつく」のは気が引けます。 しかし、無批判に教育現場に軍事的影響力を入れることを許すことはできませんから、この取り組みを始めることにしました。
どうぞ、よろしくお願いします。
岸直人
「廿日市市の中学校吹奏楽部と自衛隊音楽隊との
コラボコンサート中止要請」について賛同のお願い
教科書問題を考える市民ネットワーク・ひろしま
共同代表: 石原顕 内海隆男 菊間みどり 柴田もゆる
連絡先:事務局 岸直人(090-6830-6257)
廿日市市では2018年度から自衛隊音楽隊と中学校吹奏楽部とが「コラボ演奏」をする「ふれあいコンサート」が行われ、2019年度は2回目の演奏会が行われました。自民党、安倍内閣が憲法第9条に自衛隊を明記する改憲を進める中、憲法違反の「戦争法制」が成立し、今や実質「中東派兵」により自衛隊は外征軍へと急速に変貌を遂げています。
1月11日、海上自衛隊那覇基地からP3C哨戒機部隊が中東に派遣され、2月2日には海上自衛隊横須賀基地から護衛艦「たかなみ」が出港します。名目は防衛省設置法に基づく「調査・研究」とされていますが、バーレーンの米海軍第5艦隊司令部に連絡要員が派遣され、そこで得られた情報は米国などと共有される事実上の共同軍事作戦行動です。現地で日本関係の船舶が攻撃を受けた場合は、自衛隊の武力行使が可能となる事態になっています。
このような状況の中で、廿日市市と教育委員会は上に述べた自衛隊の現実を生徒に知らせ考えさせることなく、中学生たちが自衛隊音楽隊の「演奏の素晴らしさ」に魅了され、自衛隊を好きになることで、自衛隊入隊募集の手助けをしているのです。私たち市民は自衛隊による実質勧誘活動に市や教育委員会が協力することに反対し、「コンサート中止の要請」を2月上旬に提出します。つきましては、廿日市市内だけではなく県内・全国の市民や市民団体の皆様の「賛同」により「中止要請」の応援をしていただきたいと思います。
●賛同団体名:
●(共同)代表者名:
●送付先(教科書ネット・ひろしま事務局 岸直人):famkjp@kdr.biglobe.ne.jp
●「個人賛同」をしていただける方は廿日市市役所に電話、FAX、メール、手紙、ハガキで「コンサート中止要請」を送っていただけると大変ありがたいです。たくさんの市民の要請が行政の判断に影響を与えると思います。
●廿日市市役所(〒738-8501 広島県廿日市市下平良一丁目11番1号)
電話:0829-20-0001(代表) ファクス:0829-32-1059
メール:https://www.city.hatsukaichi.hiroshima.jp/ques/questionnaire.php?openid=5&check
下の写真は、2019年9月21日(土)に廿日市市文化センター「さくらぴあ」大ホールで開催された『海上自衛隊呉音楽隊「自衛隊ふれあいコンサート」』の様子です。待合ロビーでは、自衛隊服、帽子の試着、アンケート記入のお礼にシールなどのグッズの提供が行われました。
1 件のコメント:
合掌
正義のなさ、人間性の不毛、ドイツのメルケルさんや大統領のような高潔さの政治家を持てぬ不幸を同感します。
自衛隊、音楽隊の学校介入
自衛隊の児童生徒への馴染ませ方の一環ですね。
安倍政権、文科省、県教委、地方教委、校長の上位下達システムのなせるものでしょう。
将来の自衛隊員不足への対策でしょう。
やはり、戦争できる国家づくりへの一環で、国家戦略の一つで、これまたヤレヤレと思います。
合掌
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