2024年9月16日月曜日

「マルタ」と「ロームシャ」を鎮魂する 詩

 そのほか2つの案内

今月6日〜8日にドイツのベルリン自由大学で開催された Japanese Military Violence During the Asia-Pacific War (アジア・太平洋戦争期の日本軍暴力)と題された国際学会に招かれて講演を行いました。定年退職して10年近く経ち、もっぱら現役の大学教員が出席する国際学会に出席することが私にはほとんどなくなったため、本当に久しぶりの学会出席でした。そのため、老齢歴史家として恥ずかしくないような内容の講演となるよう、いつもよりかなり周到な準備をして講義ノートを作成しました。予想した通り、参加者の中で私が最高齢か2番目に高齢でした。私のような高齢者(自分では決して高齢者とは思っておらず、まだまだ若いつもりなのですが<苦笑>)をよく招待してくれたと、たいへん光栄に思いました。

 

しかし全部で20人ほどの研究発表者(ほとんどが欧米、イスラエルと豪州の大学教員で、アジア人はほんの数名)の発表内容を聴いて、正直、私はがっかりしました。一言でいえば、研究内容が非常に劣化しているという印象でした。批判的分析が非常に少なく、単なる事実の浅薄な紹介・解説に終わっているのがほとんどです。なぜこうなるのか ― その重大な理由の一つは、おそらく、彼/彼女たちの研究目的からは、軍暴力の被害者の「痛み」をどのように且ついかに深く理解し、「痛み」を与えた者にいかなる「責任」があり、その「責任」をいかに追求するか、ということがスッポリと抜け落ちているからだろうと思います。したがって、研究発表を聴いていても、無味乾燥で、全く私の心に響いてこないのです。戦争暴力・戦争犯罪の研究が、なぜこんな状況になってしまったのでしょうか……

 

この学会の内容について、詳しくは後日、このブログで報告しますが、今回は3つほど情報の紹介です。まず1つ目は、その日本の戦争犯罪の代表的なケースである、731部隊による人体実験のマルタと呼ばれた被害者と、インドネシアのロームシャ(労務者=強制労働の被害者)をテーマにした絵画と詩、音楽の見事な共演を企画し演じられた、私の研究上の大先輩である、慶應大学名誉教授の松村高夫氏の Youtube を紹介いたします。「ロームシャ」はとくに、日本軍の混合予防ワクチンの人体実験の被害者となったインドネシア人ロームシャを取り上げています。

 

1)「マルタ」と「ロームシャ」を鎮魂する 詩

Requiem for Maruta and Romusha Reading.

https://youtu.be/N15IAb2fmvg

英語のサブタイトルが付けられていますので、海外の視聴者にも情報拡散ができます。

 

(混合予防ワクチンの人体実験の被害者となったロームシャについては、http://yjtanaka.blogspot.com/2021/08/blog-post.html もご参照ください)

 

 

2)Hihukusho ラジオ 第100回(トーク「広島を斬る!」:宮崎園子/ フリージャーナリスト×田中利幸/ 歴史評論家) 2024830

https://www.youtube.com/watch?v=upqZxEWqU3I&t=2780s

 

このラジオ番組は2020年6月から、広島市内にある旧陸軍被服支廠の建物をいかに広島の反核・反戦・平和運動に活用すべきかを議論する場として、広島文学資料保全の会・代表の土屋時子さんが始められたものです。土屋さんの広島を変革したいという熱い想いで続けられてきたこの番組は、今年8月末で100回目の放送となりました。広島には住んでいない私のような者が、広島の現状にひじょうに詳しいジャーナリストの宮崎さんから一方的に質問を受けるというおかしなインタビューになってしまいました。本当は、私の方が宮崎さんに訊きたいことがたくさんあったのですが……。ドイツへの出張を控えてあわただしくしていたため、たいへん恥ずかしながら準備不足で、実にたどたどしい受け答えとなっています、なにとぞご寛容のほど。

 

3)講演案内

この講演は「念仏者九条の会」と「非戦平和を願う真宗門徒の会」の日本全国20ヶ所の寺院をZOOMでつないで行われるようですが、一般の市民の方たちのオンライン参加も受け付けられているとのことです。詳細は下記の案内書をご覧ください。

今、念仏者として、憲法九条をどう伝えるか

〜拮抗する「戦後国家の三原則」の急速なバランスの崩れの中で〜

 

20241021() 13:3016:15

 

* 基調講演

テーマ自滅の闇穴に陥没しつつある日本の変革は可能か?

―「過去の克服」を失敗に終わらせた「戦後国家三原理」の矛盾から考える ―

 

*講師 田中利幸さん

 

※田中利幸さんにはZOOMで講演頂きます

略歴  田中利幸さん  歴史学者(専攻は戦争犯罪史、戦争史)

広島市立大学など国内外の多数の大学に教授として在籍。

日本語の著書に『検証「戦後民主主義」 わたしたちはなぜ戦争責任問題を解決できないのか』(三一書房)、『空の戦争史』(講談社現代新書)、『知られざる戦争犯罪』(大月書店)、共著に『原発とヒロシマ「原子力平和利用の真相」』 (岩波ブックレット)。編著に『戦争犯罪の構造』(大月書店)、共編著に『再論 東京裁判』(大月書店)。翻訳書にジョン・ダワー著 『アメリカ 暴力の世紀: 第二次大戦以降の戦争とテロ』(岩波書店)、ハワード・ジン著『テロリズムと戦争』(大月書店)などがある。

 

*問題提起

*テーマ  今の本願寺教団は再び戦争協力という過ちを犯さないか?

-国家、親鸞思想、門主制という「本願寺教団の論理」から考える-

*提案者  小武正教 浄土真宗本願寺派 西善寺住職

 

今日本は、何によって動かされ、何処にいこうとしているのか。戦後日本を動かしてきたのは、「アメリカのグローバル覇権主義」「憲法の非武装平和・民主・人権原理」「戦前の日本帝国を継承する原理」という「三原則」であり、今そのバランスが崩れ、日本の国の形は大きく変わろうとしている。それは一言でいえば「戦争する国」になるということである。そして本願寺教団もそれに呼応・先取りするかのように、組織の在り方を変えてきているように思われる。私たち本願寺教団が、再び「戦争協力」という過ちをおかさないために、今何を見据えて、何をどう伝えていくべきなのか共に考える場になればと思います。

 

*参加協力  500

オンライン(ZOOM) 必ずメールで申し込みをお願いします(事務局からの返信にて受付とします)

念仏者九条の会事務局  小武正教 odake@orange.ocn.ne.jp :080-5233-3429

主催  念仏者九条の会  非戦平和を願う真宗門徒の会