2025年6月15日日曜日

空爆による無差別大量殺戮を終わらせることは可能か?!

 今年510日に広島で開かれた講演会『軍都廣島131年の歴史から考える天皇裕仁と天皇制の「招爆責任」・朝鮮人被爆者問題』に、「朝鮮半島出身の原爆問題について」と題して講演された金鎭湖さん(広島県朝鮮人被爆者協議会会長)と一緒に、私は講演者として招かれましたが、ちょうどその折は旅行中で出席できませんでした。そのため、事前にZOOM録画していただいた講演を当日、会場で上映していただきました。その講演会で配布していただいた講演ノートを少し短くした短縮版に目を通していただきながら、やはり講演会で使ったパワー・ポイントを少し新しくしたものを観ていただけるよう、その両方をダウンロードできるようにいたしました。お時間のあるときにでもご笑覧いただき、ご意見をいただければ幸いです。

田中利幸

空爆による無差別大量殺戮を終わらせることは可能か?!

重慶爆撃、広島・長崎原爆ジェノサイドからガザ・ジェノサイドまでの歴史から考える

目次:

1)           はじめに:日本軍による中国諸都市の無差別空爆の実相

2)           天皇制ファシズム下の総力戦体制と「防空制度」による自国民の人権無視

3)           米軍による日本本土での無差別空爆大量殺戮の実相

4)           通常戦略爆撃の一貫として理解された原爆無差別大量殺戮

5)           原爆無差別大量殺戮の真の目的はあくまでも「政治的」!

6)           日米両政府による「原爆神話」の捏造

7)           今も続く「ヒロシマ」の政治利用といかに闘うべきか

8)           国家原理を拒否する憲法9

9)           「戦争損害受忍論」と「戦争被害者ナショナリズム」の克服を目指して

10)     国家原理を崩していくための「痛みの共有」

11)     結論:無差別空爆ホロコーストをいかに終わらせることができるか?

 

講演用(短縮版)ノートは下記のURLからダウン・ロードできます。

https://drive.google.com/file/d/1sO84hjtbZfq9aH4fMUX0V5u9MHLpCPDl/view?usp=sharing

 

パワー・ポイントは下記のURLからダウン・ロードできます。

https://docs.google.com/presentation/d/1YrzOc56DSnPLMq72dmh5NnlGRe8U2xQS/edit?usp=sharing&ouid=106747966809556113509&rtpof=true&sd=true

 

2025年6月9日月曜日

広島市長・松井一実の「教育勅語」利用に関する私見

Change.org 「広島市の松井市長は職員研修に教育勅語を使わないでください!」

にコメントを頼まれ短い拙文を送りました、ご参考まで。現在1万9千人を超える賛同者署名がありますが、まだまだ賛同者数が増えて欲しいキャンペーンです。

 

広島市長・松井一実の「教育勅語」利用に関する私見

田中利幸(歴史家)

毎年、市職員向けの研修で広島市長・松井一実は、「教育勅語」の一部を「民主主義的な言葉が並んでいる」、「先輩が作り上げたもので良いものはしっかりと受け止め、後輩につなぐことが重要」などと主張して、紹介している。

 

国民道徳の基本と教育の根本理念を明示する目的で1890年に発布された「教育勅語」には、12の「徳目」が入れられており、その中には親孝行、夫婦相和、朋友相信、博愛など儒教主義道徳教育が提唱した徳目も使われている。しかし問題は、「教育勅語」ではこれらの徳目が、天皇を神聖なる父と仰ぎその父に絶対的従属を誓う臣民を赤子とみなす「家父長制家族国家」という天皇制イデオロギーの正当化のために、明瞭には見えない形で利用されているということである。そのことは、12の徳目の中では、「一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壤無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ(万一危急の大事が起ったならば、大義に基づいて勇気をふるい一身を捧げて皇室国家の為につくせ)」が最重要視されていることから明らかである。つまり「天皇のためにはいつでも一命を捧げよ」が、最も重要な徳目なのである。

 

かくして、この「教育勅語」が全国の学校で徹底して教え込まれることで、「神話的国体観」や「神聖君主絶対服従」の思想が全国民の思考の中に浸透させられていった。その無知と傲慢の結果が、朝鮮人・中国人をはじめとする多くのアジア民族の蔑視に繋がり、ひいては朝鮮・台湾植民地化、満州支配、中国への侵略戦争、そして最終的には壮絶な太平洋戦争へと突入し、自国民を焼夷弾・原爆無差別大量殺戮の大悲劇へと追いやり、国内外のアジア太平洋全域で数千万人という膨大な数の多民族の人命を失わせた。この厳然たる歴史経緯を忘れて、「教育勅語には民主主義的な言葉が並んでいる」などという愚鈍な発言を恥ずかしくもなく発することのできる人間に、広島市長を務める資格は全くない。

 

  この短いコメントを、谷川俊太郎の短い一編の詩の紹介で終わらせたい。

 

原子爆弾

「呪いのみが私を支える

無知と傲慢とが

ひとつの法則を畸形にする

そこからすべてがひびわれてくる

やがて無が蕈(きのこ)の形をして

一瞬宇宙を照らすだろう」