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2022年12月18日日曜日

「G7サミットと共に人類は滅ぶのか、それとも、すべての生き物が生き残れる道を選ぶのか!」

2022年12月17日、広島市内で開催された「G7広島サミットを問う市民のつどい」キックオフ集会(オンライン参加)で述べさせていただいた拙意の、元になっている覚書の全文をここに紹介させていただきます。ご批評いただければありがたいです。

 

田中利幸

 

G7が世界的規模で発生させている問題は多種多様であり、そのすべてを短時間の「市民のつどい」で取り扱うことは不可能です。したがって、人類史上初の原爆による無差別大量虐殺の場所となった広島が、G7に対して立ちむかうにあたっては、広島の歴史的背景と現状から鑑みて極めて重要な日本の国内的と国際的な幾つかの問題点に、議論を絞るべきであると考えます。それらの問題点がG7、とくに米国との関係において、いかに重要な課題を私たち市民に問いかけているのか。私たち市民の生活を、命を、いかに脅かしているのか。そのことを議論することで、私たちがどのようにG7に対抗して「市民のための健全な市民社会」を作り上げていくことができるのか、その道筋が見えてくるようにすること ― これをこの「市民のつどい」の目標にすべきだと私は思います。

 

そこで、私が考える五つの「問題点」について、出来るだけ簡略に説明させていただきます。

 

1)      戦争責任と民主主義

米国は、広島・長崎への原爆無差別大量虐殺と、東京をはじめその他の多くの市町村への焼夷弾無差別爆撃殺傷行為を、戦争を終結させるために必要不可欠であったと正当化することで、それらの殺戮行為が由々しい「人道に対する罪」であったことを隠蔽した。その隠蔽を現在も米国は続けている。例えば、2016年5月27日、オバマ大統領は、「謝罪」を求めない少人数の被爆者(しかも韓国人被爆者は一人も含まない)だけを集めた広島平和公園で「所感発表」を行った。その冒頭の発言は次のようなものであった。「71年前、晴天の朝、空から死が降ってきて世界が変わった。閃光と炎の壁がこの街を破壊し、人類が自分自身を破壊する手段を手に入れたことを示した」。かくして、人類すべてに「罪」があることにしてしまい、それは結局、誰にも「罪」はないということになり、よってその「責任」も誰もとらなくてもよいということにしてしまった。(オバマ広島訪問批判に関しては「G7広島サミットを問う市民の集い」ホームページのライブラリーに収録の複数の拙著論考を参照されたし。)

 


 

一方、日本は原爆被害のみを強調し、「唯一の戦争被爆国」を売り物にすることで、自国がアジア太平洋各地で15年という長きにわたって犯した様々な残虐行為で、中国人をはじめ数千万人の数にのぼる人たちの命を奪った(天皇裕仁の戦争責任を含む)加害責任を隠蔽し、今も隠蔽し続けている。しかも、日米両国は互いの戦争責任隠蔽を黙認しあっている。

つまり、日本側は原爆無差別大量殺戮という重大な「人道に対する罪」を犯した米国の大統領トルーマンをはじめ、それに加担した多くの米国の政治家、軍人、科学者の「罪」と「個人的責任」を追及することもなく、そのような重大な罪を犯した米国の国家責任を追及しない。さらには、アジア太平洋戦争という侵略戦争を開始し、結局は原爆無差別大量殺戮を招いた、その日本の国家元首・裕仁や軍指導者、政治家たちの「罪」ならびに「個人的責任」、さらには日本の「国家責任」もウヤムヤにしてしまっている。その「責任ウヤムヤ」は、もちろん、「唯一の原爆被害国」と言いながら、米国の核抑止力を強力に支持するだけではなく、自国の核兵器製造能力を原発再稼働で維持し続けている日本政府の「無責任」と表裏一体になっている。

こうした日米両政府による共同謀議とも呼べる画策ゆえ、大多数の日本人はアジアに対する確固たる「戦争責任」意識を持つどころか、自分たちをもっぱら「戦争犠牲者」と見なし、しかしながら、同時に米国による自分たちへの戦争加害の責任も問わないという、「戦争責任問題」自覚不能の状態にある。

すなわち、これまで、自分たち自身が被害者となった米国の原爆殺戮犯罪の加害責任を厳しく問うことをしてこなかったゆえに、われわれ日本人がアジア太平洋各地の民衆に対して犯したさまざまな残虐な戦争犯罪の加害責任も厳しく追及しない。自分たちの加害責任と真剣に向き合わないため、米国が自分たちに対して犯した由々しい戦争犯罪の加害責任についても追及することができないという、二重に無責任な姿勢の悪循環を産み出し続けてきた。それゆえにこそ、米国の軍事支配には奴隷的に従属する一方で、アジア諸国からは信頼されないため、いつまでたっても平和で友好的な国際関係を築けない情けない国となっている。

かくして、日米の戦争責任問題は、実は相互に深く絡みあっている。日米両国ともに自国の戦争責任を隠蔽することで、すなわち多くの犠牲者の人権を徹底的に無視することで、それぞれが自国の民主主義を甚だしく歪め、腐敗させてきた。とくに天皇裕仁の戦争責任をうやむやにしたため、憲法前文や9条と決定的に矛盾する1条を憲法に入れてしまい、それが日本の民主主義を甚だしく歪めている重要な原因だと私は考えている。したがって、戦争責任問題と民主主義の問題は深く関連していることを忘れてはならない。(日米の戦争責任問題と歪んだ民主主義の関係については、拙著『検証「戦後民主主義」:わたしたちはなぜ戦争責任問題を解決できないのか』三一書房 2019年を参照)

 

2)      核兵器と原発

米国は、無差別大量虐殺を行う核兵器の使用が「人道に対する罪」であることを決して認めない。同時に、核抑止力(=核兵器保有)がニュールンベルグ法の「平和に対する罪」であることも認めず、核抑止力が防衛戦略であるかのごとく正当化することで、アジア太平洋戦争終結以来この78年の間、核兵器の数量と破壊力の増大、さらには輸送手段(弾道ミサイル・爆撃機・潜水艦など)の技術開発に膨大な金額とエネルギーを費やしてきた。1970年に発行したNPT(核不拡散)条約の実態は、米露英仏中の5カ国(うち3カ国がG7メンバー)による核兵器独占を目的にするものである。しかし、インド、パキスタン、朝鮮、イスラエルなどにも拡散しているように、不拡散にも核軍縮にも役立たないまま、お座なりの「再検討会議」をこれまで半世紀以上にわたって繰り返し行なっている。核軍縮、核不拡散、原子力の平和利用がNPT3本柱だと言われているが、「原子力の平和利用」自体が核兵器開発の隠れ蓑である。日本の「原子力の平和利用」も、最初から核兵器所有能力の開発と密接に繋がったものであったし、現在の原発稼働続行政策もまた核兵器所有能力と拡大核抑止力の維持と密接に絡んでいる。(日本が核兵器生産の可能性について本格的に研究を始めたのは佐藤栄作が首相の座についた後の1960年代後半〜70年代初期からで、それ以降もずっと続いている。詳しくは「G7日広島サミットを問う市民の集い」ホームページのライブラリーに収録の拙著「自滅に向かう原発大国日本(上)」参照)。

確かに20112月に米露間で発効した新START(第四次戦略核兵器削減条約)によって、米露両国の戦略核弾頭配備数だけは大幅に減少した。ところが、配備されているミサイルから取り外された核弾頭が、これで即時に廃棄処分されたわけではない。例えば、「核廃絶の夢」を提唱しただけでノーベル平和賞を授与されたオバマ大統領の政権下の米国は、その時点で、これら4,600発以上の核弾頭をできるだけ長期にわたって維持するため、「寿命延長計画」に多額の予算を注ぎ込んだ。そのうえ、同じくオバマ政権下で、史上最高額の核兵器予算が2015年会計年度の予算に盛り込まれ、この予算のうち多額が、核弾頭ならびに運搬システムの「現代化計画」に充てられた。「現代化計画」の主たる目的は、「使える核」と呼ばれる小型核兵器の開発と、その小型核兵器を搭載できる運搬システム(=新型の戦闘機、爆撃機、潜水艦など)の開発である。この「現代化計画」はそのままトランプ政権に引き継がれ、今はバイデン政権下で継続されている。したがって、ロシアや中国も同じような核兵器の「現代化計画」を進めている。これが核兵器をめぐる現状なのである。

問題は、すでに述べた小型核兵器の使用の危険性が、10ヶ月近く長引いて泥沼化しているウクライナ侵略戦争でますます高まっていることである。戦況はロシアにとってますます厳しいものとなっており、今月5日〜6日にはウクライナのドローン(無人機)攻撃で、モスクワ南東のジャギレボ空軍基地とロシア南部エンゲリス空軍基地に配備されている核兵器搭載可能な戦略爆撃機Tu95の複数機が破壊された。冬場に入り、戦況がさらに厳しい局面になればロシアの小型核兵器の使用の危機がますます高まる。

と同時に、これまでも複数回原発への攻撃が行われており、幸にして、原子炉への直撃がなかったため大事故には繋がらなかった。しかし、現在の戦況からみて、原子炉直爆の危険性は非常に高いと言わざるを得ない。一旦原発事故が起きれば、福島原発の恐るべき体験からも明らかなように、文字通り人類を危機的状況におとしめる。人類生存のためには、なんとしても核兵器と原子力の両方の使用を全廃しなければならない。(ちなみに、反核・反原発運動に関わっている多くの国内外の市民組織が、なぜかウラン採掘問題に関してはほとんど無関心のように思える。これに対する拙論「私たちは原発の動力源を忘れていないか?ウラン問題再考」

http://peacephilosophy.blogspot.com/2012/02/uranium-source-of-all-nuclear-problems.html

を参照)

 

3)      性暴力とジェンダー平等問題

すでに述べた日本の戦争責任問題の中でもとりわけ重要な一つは、「日本軍性奴隷(いわゆる「慰安婦」)問題である。日本帝国陸海軍が、1930年代初頭に中国において当初打ち立てたいわゆる「慰安婦制度」は、194112月の真珠湾攻撃後、またたく間にアジア太平洋のほぼ全域に拡大されていった。その結果、慰安婦制度は人類史上最も大規模で組織的かつ暴力的な女性人身売買制度となった。推定78万人の数にのぼる、韓国/朝鮮人をはじめ多くのアジア人やオランダ人女性が被害者となった。

広島宇品港は、そのような多くの女性の性を暴力的に搾取した大量の日本軍将兵をアジア太平洋各地に送り込んだ、主要な軍港の一つであった。しかし、日本政府は長年この事実を認めようとはしないどころか、様々な嘘偽りで責任逃れを企て、その結果、アジア諸国と、とりわけ韓国と平和的な国際関係を築き上げることに失敗してきた。被害者女性に対する安倍政権の対応はとりわけ冷酷非道なものであったが、岸田政権はその安倍政権の人倫に反する政策をそのまま継承している。

2015年末、安倍政権は日韓外相会議を開き、当時外務大臣であった岸田文雄は、「慰安婦問題」での「最終的かつ不可逆的な解決」で日韓両政府が合意したと発表した。しかし、この「合意」の内実は、被害者の思いは完全に無視する一方で、日本の法的責任は認めず、「賠償」ではないと主張する10億円という金を出すことで、今後はこの問題を再び日韓間で問題にはしない約束をとるという、甚だしい被害者人権侵害以外の何物でもなかった。しかも、本来なら加害国である日本が賠償責任をとるべきであるにもかかわらず、財団を韓国政府に設立・運営させることで、責任を被害国におしつけるという破廉恥な要求であった。結局これは、「10億円出すから今後はこの問題については黙れ」、「その歴史的象徴である『平和の碑』も人目につかないところに移転させろ」と言ったわけである。つまり、「最終的かつ不可逆的な解決」とは、結局、10億円という金で日本軍性奴隷の存在という歴史事実に関する記憶を買い取り、その記憶を抹消することを目的とするものだったのである。

あらためて言うまでもなく、日本軍性奴隷問題も、また元徴用工(強制労働)問題も「政治決着」できるような性質のものではなく、由々しい「人権問題」である。したがって、いかにすれば被害者の「人権回復」につながるのかという視点からのアプローチが必要である。ところが、驚くべきことに、「人権問題」であるという根本的認識が、日本の首相をはじめ政治家や官僚には最初から欠落している。したがって、これは、根本的には日本の民主主義がいかに歪んでいるか、腐敗しているかという問題である。

また、この問題の裏には戦前・戦中・戦後と長年続いている日本の激しい女性差別意識と慣習制度があり、その意味で、「慰安婦問題」と現在の日本社会でも頻繁に起きている家庭内暴力やセクハラ問題とは密接に関連している。

しかし同時に、武力紛争時における性暴力問題は世界的な問題であり、平時における性暴力もまた普遍的な問題である。私たち日本の市民は、「慰安婦制度」に対する政府の責任を追求する運動を通して、個々人が性別に関わらず、平等に責任や機会を分かち合い、あらゆる物事を一緒に決めることができるようなジェンダー平等社会を創り上げる運動にも寄与し、同時に、G7諸国を含む世界各地の反性暴力やジェンダー平等運動と連帯していく必要がある。(G7日広島サミットを問う市民の集い」ホームページのライブラリーに収録の拙著「国家と戦時性暴力と男性性:『慰安婦制度』を手がかりに」を参照)

 

4)      アジア太平洋地域での大規模戦争勃発の危険性

「呼びかけ文」でも記したように、今年6月末から8月初めにかけて行われた米国主導の(NATOも参加した)RIMPACの目的は、中国、朝鮮との戦争を想定する米国主導の同盟諸国軍による軍事演習を展開することで、中国、朝鮮さらにはロシアに対して威嚇を行うことであった。この威嚇は、すでに米軍のインド太平洋地域における広範囲で活発な行動に対抗して、同じように敵対的な軍事活動を強力に展開している中国・朝鮮との緊迫状況をさらに悪化させこそすれ、緊張緩和には全く役立っていない。

実際、RIMPAC終了3日後の87日から4日間にわたり、中国は、台湾を取り囲む6カ所の海空域で合計66機の戦闘機・爆撃機と14隻の艦艇を使って大規模な軍事演習を行った。さらに84日には、台湾の周辺海域に向けて11発の弾道ミサイルを発射するという、実に無謀な示威活動を展開した。かくして、アジア太平洋地域も、状況は冷戦時代よりもはるかに危機的である。

現実には、西太平洋地域はすでに臨戦体制にあると言っても過言ではなく、この2年ほどで米軍の沖縄、グアム、(豪州)ダーウィンの基地には中国本土攻撃を想定した戦略を実施する上で必要な各種の武器が続々と配備されている(例:沖縄・嘉手納に戦闘機 F22配備)。そのうちの一つが核ミサイル搭載可能の大型爆撃機B-52であり、グアムには4機がすでに配備され、ダーウィンには6機が配備される予定となっている。

 

核ミサイル搭載可能の大型爆撃 B-52

 また、111019日には、沖縄をはじめ日本各地で日米共同統合演習「キーン・ソード23」が実施され、自衛隊と米軍が自衛隊施設や米軍基地、訓練区域などで、実弾射撃演習や補給などの後方支援を含むさまざまな共同訓練を展開した。(豪州でも米豪軍の豪州北部での共同訓練が恒常化されつつある。) 演習には、米国のほか豪加英の三国の海軍艦艇、豪加二国の空軍機が米軍の統制下で参加した。1021日の自衛隊統幕発表は、その演習内容を以下のように説明している。

日米双方が主要装備品を使用した演習を行う中で、日米の即応態勢を確認し、相互運用性を向上させる。主な実施場所は自衛隊施設、在日米軍施設、津多羅島、奄美大島、徳之島、日本周辺海空域など。自衛隊から約26000人、艦艇約20隻、航空機約250機、米軍から約1万人、艦艇約10隻、航空機約120機、オーストラリア軍から艦艇1隻、航空機1機、カナダ軍から艦艇2隻、航空機1機、英軍から艦艇1隻が参加した。

116日には、海上自衛隊の国際観艦式が相模湾上の護衛艦(実際には空母)「いずも」で行われ、岸田首相が訓示の中で今後5年以内に防衛力を抜本的に強化する方針を重ねて強調した(防衛費をGNP2%に急増させる計画であるが、そうなれば日本は米中に次ぐ軍事大国になる)。米国や韓国、フランスなど13カ国が、艦船や航空機を派遣してこの式典に参加した。

岸田首相の公約の一つである「敵地攻撃能力の向上」も、「自衛の範囲」の「反撃能力という抑止力向上」であるというメチャクチャな論理の下、この米軍を含むNATO+豪軍への統合化のための一戦略として、誰もが違憲と明確に理解していながら欺瞞的に進められている政策である。そのうち、「中国や朝鮮の核保有国に対して通常兵器で威嚇しても抑止力にはならないので、抑止力として核兵器が必要」と言い出す可能性は十分ある。

11月初めに朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)や砲撃を乱射し、ミグやスホイ系の戦闘機のほか爆撃機も飛行に動員し、一部の爆撃機は空対地射撃を行うという、これまでにない攻撃的演習を行なったのも、ますます強まる米日豪韓(+英加)の臨戦体制強化に対する反応である。

このように、アジア太平洋は、核兵器を配備した臨戦体制という極めて危険な状況にあることを私たちは強く認識し、反核・反戦運動を今こそ強く展開していく必要がある。とりわけ広島近辺には海上自衛隊の主要な港の一つである呉港が、海上自衛隊とアメリカ海軍第5空母航空団の諸部隊が共同使用する岩国基地があり、一旦アジア太平洋地域で戦争が勃発するならば沖縄はもとより広島を含む日本全土が、ウクライナを遥かに超える壊滅状態に陥り、無数の死傷者が出ることは明らかである。

 

5)      気候危機と環境破壊:軍事活動の徹底的批判の必要性

地球温暖化による気候危機が高まっていることは誰の目にも明らかである。洪水、干魃、森林火災、砂漠化などが世界各地で繰り返し起きている。その最たる原因が、大気中に放出される温室効果ガス(二酸化炭素やメタンガスなど)であることも周知のところで、とりわけ石炭や石油の消費に伴う温室効果ガスの放出削減を求める声が今や世界中で高まっている。

ところが、気候危機を憂慮する世界各国政府も、また温室効果ガス放出削減を強く求める市民の環境保護団体も、知ってか知らずか、全く言及しない重大な問題がある。それは、膨大な量の石油が、世界各国の軍隊によって消費されているという事実である。

中でも米軍は世界で最も大量の石油を消費する機関であり、単一組織としては世界最大の温室効果ガス排出組織である。米国政府が使用する年間の石油量の90%以上が国防省の消費によるもの(空軍が52%、海軍が33%、陸軍が7%で、年間46億ガロン、1日で1,260万ガロンという途方もない量である。ところが、1997年に採択された京都議定書では、米国政府の圧力で、軍事活動からの温室効果ガス排出量は国家の排出量に含まれないことになり、報告する必要もないとされてしまった。その上、軍に納入する武器を製造する多くの企業からの排出量も含まれない。

 

 

したがって、米軍のみならず、世界各国の軍が消費する石油から排出される温室効果ガスの総量は、我々の想像をはるかに超える膨大なものである。しかも、現在のウクライナ戦争のように、一旦戦争が勃発すれば、多くのジェット戦闘機、爆撃機、戦艦、戦車、軍用車両などが使う石油の上に、数十万、数百万発という数の砲弾発射やミサイル発射で発生するCO2で、温室効果ガスの量は激増する。

(私は科学者ではないので十分な科学的根拠があって述べるわけではないが、今年の夏、欧州全域が史上最悪の猛暑になった原因の一つに、全般的な地球温暖化の上に、ウクライナ戦争が排出した膨大な量の温室効果ガスがあるのではなかろうかと考えている。)

しかし、戦争が発生させる温室効果ガスと環境破壊は現在に限ったことではない。20世紀入って世界各地で猛烈に増えた武力紛争がこの100年以上にわたって発生させてきた温室効果ガス排出量を、今こそ我々は真剣に考えるべきである。とりわけ19141918年の4年間にわたる第1次世界大戦での陸海両方の戦闘、193145年の15年という長期にわたるアジア太平洋戦争、193945年のほぼ6年に及ぶ欧州と大西洋での第2次世界大戦での温室効果ガス排出量は、我々の想像を絶するものである。とくに、大西洋・太平洋の両方の海戦で無数の空母、戦艦、駆逐艦、巡洋戦艦、潜水艦などの艦船が使った石油の量と砲弾が発生させたガス。(その上に沈没した数多くの空母や戦艦、輸送船が引き起こした海洋環境破壊。)欧州とアジアの両戦域で長期にわたって展開された戦略爆撃と称する無差別爆撃で使われた石油と投下爆弾(原爆と焼夷弾)が発生させたガス。


 

 

 

 

その後も朝鮮戦争、ベトナム戦争、レバノン内戦、アフガニスタン内戦、湾岸戦争、ボズニア・コソボ紛争など。今世紀に入るや、米軍のアフガニスタン侵攻、イラク戦争、シリア内戦、イスラエルのたび重なるガザ侵攻とパレスチナへの空爆。そのほかのアフリカ、中近東や中南米での中小規模武力紛争の数々。

こうした軍事活動による温室効果ガス放出を野放し状態にしておきながら、温室効果ガス排出削減をいくら叫んでも、人類の滅亡は避けられない!我々に残されている時間は少なくなってきており、人類滅亡は文字通り目前に迫っている。今ここで、この危機的な状況に終止符を打ち、人類社会が破滅に向かっている現在の方向をこれからの数年で一大転換しなければ、もう後戻りができない限界点にまできていると私は考えている。

広島が本当に「国際平和文化都市」であるならば、この事実を私たちは広島から世界に向けて広く強く発信すべきである。

 

以上の5点が、原爆による無差別大量虐殺の場所=グラウンド・ゼロとなった広島が、G7に対して突きつけるべき重要な問題点であると私は考えます。

 

― 終 ―

 

G7広島サミットを問う市民のつどい」ライブラリー

https://www.jca.apc.org/no-g7-hiroshima/library/

 


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