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2023年11月20日月曜日

“Failure to Prevent Genocide”: Biden Sued as U.S. Provides Arms & Support for Israel’s Gaza Assault

「ジェノサイド防止の失敗」: バイデン大統領がイスラエルのガザ攻撃に武器と支援を提供したことで訴えられる

 

11月16日の『Democracy Now (今こそ 民主主義を)!』放送の日本語訳です。

https://www.democracynow.org/2023/11/16/ccr_genocide

 

イスラエルがガザでの停戦を求める国際的な要請を拒否するなか、米国の「憲法権利センター」は、ジェノサイドを防止できなかったとしてバイデン大統領を提訴している。同センターは、バイデン大統領、アントニー・ブリンケン国務長官、ロイド・オースティン国防長官に対し、イスラエルへのさらなる軍事資金提供、武器供与、外交支援を阻止する緊急命令の発令を求めている。憲法権利センターの上級弁護士、キャサリン・ギャラガー氏は、イスラエル政府がパレスチナ住民全員を「(無差別に)集団的に処罰する」という明確な意思表示にもかかわらず、米国は軍事援助、助言、政治的支援によって「大量虐殺を幇助」し、イスラエルと「犯罪中の犯罪」に加担していると主張している。

 

エイミー・グッドマン(『今こそ 民主主義を!』の司会者):

イスラエルによるガザへの砲撃がこれまで41日間も続くなか、イスラエルは国連安全保障理事会によるガザへの緊急人道支援要請を拒否しています。国連安全保障理事会は、米国、英国、ロシアが棄権したため、120で決議を可決しました。イスラエルが107日のハマスによるイスラエル攻撃後に砲撃を開始して以来、国連安全保障理事会で決議が可決されたのはこれが初めてです。

これは、イスラエルが、ガザ最大の病院であるアル・シファーへの軍事攻撃を続けている中でのことです。イスラエルは以前から、ハマスが病院の地下に主要な司令部を置いたと主張してきましたが、イスラエルは今のところその証拠を提供していません。イスラエルは、病院内で発見されたという武器の画像は流しましたが、ハマス側はこの写真をプロパガンダだと退けています。水曜日(11月15日)、世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム・ゲブレイエス事務局長は、アル・シファへの襲撃を次のように非難しました。

「イスラエルによるガザ市のアル・シファー病院への軍事侵攻は、まったく容認できない。病院は戦場ではありません。私たちは、病院のスタッフと患者の安全を非常に心配しています。彼らを守ることが最優先です。 WHOは、アル・シファー病院の医療従事者と連絡をもはや取ることができません。国際人道法の下では、医療施設、医療従事者、救急車、患者は、あらゆる戦争行為から守られ、保護されなければならないとされています。それだけでなく、軍事計画作成中も、積極的に保護されなければなりません。」

エイミー・グッドマン:

ガザでの停戦を求める国際的な声の高まりをイスラエルが拒否するなか、イスラエルとその支持者たちがガザで犯した戦争犯罪の責任を追及する動きが強まっています。ここ米国では、憲法権利センターがバイデン大統領を提訴し、大量虐殺を防げなかったとして非難しています。本日、憲法権利センターは、バイデン大統領、アントニー・ブリンケン国務長官、ロイド・オースティン国防長官に対し、イスラエルへのさらなる軍事資金、武器、外交支援の提供を阻止する緊急命令を出すことを求めています。

この訴訟を起こした弁護士の一人、憲法権利センターのキャサリン・ギャラガー上級弁護士にお話を伺います。

キャサリンさん、私たちのために、これまでの経緯を整理していただけますか?アメリカ政府、バイデン大統領に何を要求しているのですか?

 

キャサリン・ギャラガー:

おはようございます、エイミーさん。月曜日に提訴したのは、2つのパレスチナの人権団体、すなわち、「子どもを守るための国際的=パレスチナ」組織と、アル・ハクと呼ばれるパレスチナで最も古い人権擁護団体です。アル・ハクは、その長年にわたる活動歴史の中で、今回初めて、あまりにも酷い状況のためにガザでの活動ができなくなっています。この2つの団体に加えて、ガザにいる3人のパレスチナ人、そして今まさにガザで家族が殺害され、負傷し、直接的な脅威にさらされている5人のパレスチナ系アメリカ人の家族が代表して提訴しました。

私たちは、バイデン大統領、ブリンケン国務長官、オースティン国務長官に対し、2つの主張をもってこの訴訟を起こしました。ひとつは、ガザのパレスチナ人に対するジェノサイド(大量虐殺)を阻止するために可能なあらゆる手段を講じなければならないという、国際法および米国法のもとでの義務を、彼らは完全に怠ったということです。米国はジェノサイド条約に加盟しています。その重大性を認識し、これは犯罪中の犯罪であり、ある集団、ある国家や民族を全体的または部分的に破壊する具体的な意図がるということからすれば、国家はジェノサイドの可能性を知った瞬間から、そのような重大な犯罪を阻止するために、(この条約の締約国は)自国の管轄の範囲内で、あらゆる可能な手段を講じる義務があります。米国は、一方で、何十年にもわたって何千億ドル、昨年は何十億ドルもの軍事援助をイスラエルに提供してきたにもかかわらず、(イスラエルに)ジェノサイドをやめさせようとするのを私たちは見たことがありません。米国は、殺戮をやめさせ、ガザという閉鎖空間に住む220万人を完全に包囲し、基本的な生活必需品を何ら与えないということをイスラエルにやめさせるために自国の影響力を使う代わり、武器を提供したのです。無条件の政治的支援も行っています。昨日まで、安全保障理事会の決議が完全な停戦を要求していなかったのを見ると、それは、米国が国際レベルで、停戦決議が取られるあらゆる措置を阻止してきたのだということが分かります。そこで私たちは、米国政府がこの大量虐殺を防げなかったとして、最初の提訴に踏み切ったのです。

さらに、2つ目の主張は、米国政府が実際にイスラエルの大量虐殺に加担しているというものです。私たちは、イスラエルが今この瞬間にも実際に大量虐殺を行なっていることを論証することができます。そして、残念ながら ― こんなことを言わなければならないのは決して喜ばしいことではないのですが ― この戦争の早い時期から、ネタニヤフ首相や国防相をはじめとするイスラエル高官たちが、ガザの全住民に対する(ジェノサイドの)意図について非常に明確な声明を発表していたため、私たちは今回のこの提訴を行うことができるのです。彼らは、ガザの人々や子どもたちを人間以下とみなし、住民を「怪物」あるいは「動物的人間」と表現し、基本的な生活必需品である食糧、燃料、水、電気などすべてを奪い去りました。このような事態を前にしてもまだ、米国は武器を送り、軍事顧問を送り、援助を急ぎ、イスラエルの行動を道義的も政治的にも支援し続けているのです。

 

ナーミン・シエーク(『今こそ 民主主義を!』の共同司会者)

キャサリンさん、今起きていることがジェノサイドなのか民族浄化なのかについては、ジェノサイドの研究者の間でも意見の相違や論争があるようですが、この2つの区別と、この件についてあなたに助言を与えている人たちが、(これから起きることではなく)今起きていること、今現在起きていることがジェノサイドだと確信しているのはどうしてなのか、それを説明していただけますか?

 

キャサリン・ギャラガー

 キャサリン・ギャラガー:

最初にはっきりさせておきたいのは、民族浄化(それ自体)は実は犯罪ではないといえます。しかし、民族浄化という用語は、絶滅や強制移住、強制送還といった「人道に反する罪」に対してしばしば使われる表現です。したがって、それらは重大な犯罪です。国際刑事裁判所ICCはこれらの犯罪を法的に管轄します。率直に言って、国際刑事裁判所は今この瞬間にも、これらの犯罪を犯している人物たちの逮捕状を取るべきです。それが第一のポイントです。

キャサリン・ギャラガーの説明は不十分であるので、もう少し説明を付け加えておきます。民族浄化の主たる目的は単一民族からなる地域の確立であり,それを実現する方法は、大量殺戮などのような犯罪行為でなくとも、他に数多くの合法的な方法があると主張する民族浄化擁護派たちもいます。そのため、民族浄化は「法的用語としては、厳密には犯罪行為をさすものではないが、現実には犯罪行為として行われている」とギャラガーは言いたかったようです。以上、田中による追記)。

ジェノサイドの(成立)要素とは、ある集団を全体的または部分的に破壊する具体的な意図で行われるものであり、ジェノサイド(成立)の基礎となるいくつかの行為があります。そして、(ジェノサイド条約第2条で定義されている)ジェノサイドの基礎となる5つの行為のうち3つが、今回の事件には当てはまると考えられます ― すなわち、殺害、身体的または精神的に重大な害を与えること、そして集団の全部または一部を破壊する生活条件を作っていることです。

そして、それをもう少し紐解くと、通常、具体的に(ジェノサイドを犯す)意図があったのか、なかったかと言うには判断が必要であり、普通は事後的にしか結論づけられないものなのです。私はユーゴスラビアの戦争犯罪法廷に勤務し、スレブレニツァ事件を担当しました。このユーゴラスラビアの場合でさえも、ジェノサイドと判断するのはなかなか難しいものでした。ところが、今回のイスラエルの場合は、(ジェノサイドの意図をはっきりとさせるような)声明が前面に出てきています。イスラエル政府高官の発言は、その意図を裏付けるものであり、完全な包囲網を敷き、住民全体から基本的な生活必需品、つまり、すでに述べましたように、病院を運営するために必要な食糧、燃料、電気へのアクセスを拒否し、人々が食事を作り、水を確保するために必要な生活必需品を得ることが全くできないようにしています。私たちは、いま飢餓の始まりを目の当たりにしているのです。

そしてもちろん、これらはすべて、封鎖され国境が閉ざされた空間での、激しく継続的な軍事砲撃の下で起こっているのです。その封鎖は実は16年間も続いているのです。そして繰り返しになりますが、少なくともこの16年間という長い封鎖の間、ガザのパレスチナ人に対して「人道に対する罪」が犯され続けられてきたのです。

私たちが今見ているのは、その住民を破壊するという具体的な意思の表明です。すでに11,000人以上が命を落とし、その中には4,600人以上の子どもも含まれています。ですから、ジェノサイドのためには、そのような脅しと行動を実行する能力を持つイスラエルの高官によって表明された、具体的な意図を考慮する必要があります。

そして、この犯罪の重大性ゆえに、ジェノサイドの深刻な危険性を国が認識した時点で、予防義務が発動されることを再度強調しておきたいと思います。米国は、ネタニヤフ首相がガザ地区全体を瓦礫と化し、地球上から消滅させるという脅迫を行った107日でなくとも、少なくとも109日に国防相が全面包囲を発表し、それが発動されたときから、そのことを察知していたはずです。だからこそ私たちは、米国に共謀責任がその時点ではなかったとしても、防止する義務は存在していたと感じているのです。

そして私たちに必要なのは -- 今この瞬間に法的な定義について屁理屈をこねる必要はないということです。必要なのは行動です。米国大統領、国務長官、国防長官には、世界の大多数が何週間も求めてきたことを実行してもらいたい。ガザ包囲網を止めるさせることです。220万人の人々が尊厳をもって生き、彼らの権利が尊重され、私たち全員が目撃しているこのような恐怖にさらされないようにし、地球上で最も強力な米国が思いやりを持ち、法律を遵守するような国になるように、私たちはできることは何でもしようとしているのです。

 

エイミー・グッドマン:

キャサリン・ギャラガーさん、ご出演ありがとうございます。憲法権利センターの上級スタッフ弁護士で、バイデン大統領、アントニー・ブリンケン国務長官、ロイド・オースティン国防長官に対し、イスラエルへのさらなる軍事資金提供、武器供与、外交支援を阻止する緊急命令を求めています。

 

 

訳者後書き

『今こそ 民主主義を!』の番組では、イスラエルのパレスチナ人ジェノサイドを何としても止めようと努力している、様々な米国の個人や団体代表を毎日のようにインタヴューしています。その中にはホロコーストの生存者やユダヤ系アメリカ人でジェノサイド研究の権威者などもいます。またパレスチナからアメリカに移住できた作家や学者もいます。私の時間的な都合で、ごく一部しか紹介できないのが残念ですが、出来るだけ紹介していきたいと思います。しかも驚くのは、インタヴューを受ける人々の大半が女性です。

『今こそ 民主主義を!』の番組を観ていますと、米国には優秀でひじょうに良心的な知識人が大勢いるにも関わらず、一方では、ドナルド・トランプのような、何の政治理念も政治思考能力も持たず、支配欲と差別意識だけで動いているような低劣な人間を大統領にまで祭り上げる、白人優位主義・愛国主義者も大勢いるアメリカ、この混沌としたアメリカ社会を、真に民主主義的な社会に変革していくのは、日本と同じようにたいへん困難なことだと痛感させられます。

 

ところで、中東問題研究者でもない私がパレスチナ問題に深い関心を持っている理由は、私の研究分野が戦争犯罪だからというだけではありません。実は、私の家族と密接に関連している問題があります。(2016年に百歳で亡くなった、ベルリン生まれのユダヤ人である)私の義母(私の連れ合いの母)には3人の姉がいましたが、1933年にナチスが政権をとった後間もなく、一番歳上の姉はアメリカに亡命、二番目の姉はパレスチナに移住(1948年にイスラエル建国)、三番目の姉は逃げ遅れてホロコーストの犠牲者となったという、家族上の問題があるからです。

二番目の姉の息子ウーリー・ダン(つまり義母の甥、私の連れ合いの従兄)の家族がいまもテルアビブに住んでいます。ウーリーはテルアビブ大学の中近東歴史学部の教授で、専攻はイラクとヨルダンの歴史でしたが、1991年に交通事故で亡くなってしまいました。彼が生きていたら現在のイスラエルの状況をどのように考えたであろうかとしばしば想い、直接意見を聴くことができないのは残念でなりません。

いずれにせよ、私の親戚の家族のイスラエルでの比較的恵まれた生活の背景には、パレスチナの人たちの不幸で哀しい歴史があることに、私としても何かしら精神的な重荷を感ぜざるを得ないのです。よって、この56週間は、何もできない自分に悶々として、自分のやるべき仕事に集中できない日が続いています。

大ジェノサイドの犠牲となった民族が構築した国家が、今度は他民族に無慈悲極まりないジェノサイドを行う ― この皮肉で悲壮な歴史はなぜ起きるのか。この問題が頭から離れない毎日です。

 


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