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2019年2月17日日曜日

杉田水脈衆院議員提訴にあたって


  私が尊敬する友人、岡野八代さんと彼女の研究仲間が、杉田水脈を名誉毀損で京都地方裁判所に提訴しました。杉田は、2017年6月、メルボルンで在豪日本人を対象に反「慰安婦」集会を開くために、公的施設を虚偽の集会目的で借りて使おうとして失敗。私が集会開催を妨害したと主張して、ネトウヨを使って猛烈に批判しました。その年の8月5日には、私が代表を務める「8・6ヒロシマ平和への集会」に、変装して参加していたそうです。変装してのスパイ行為、ご苦労様なことです。(メルボルンでの事件については、このブログの2017年6月の記事をご参照ください。)

  日本の研究者にとって、こんな低劣・卑劣な政治家を相手に裁判闘争でエネルギーと時間を使わなければならないのは、本当に不幸なことです。裁判に使うエネルギーと時間を大学での教育と研究に使う方がどれほど社会貢献になるか、どれほど明るく建設的な社会を作ることに貢献できるか。このことを考えるだけでも、杉田の行動は犯罪的と言えます。

  フランスの言語学者・哲学者アーネスト・レナン(1823〜92年)は「歴史の忘却、あるいはその曲解はなおさら、国家の形成とって重要である。(したがって)歴史研究の進歩は、しばしば国民性にとって危険なものとみなされる」と述べました。杉田がやっていることは、まさに安倍政権が望むような「国家形成」にとって必要な「歴史の曲解」で、彼女は、国家に都合の悪い事実と、国民を賢くする学問の進歩、その両方を敵視する文化破壊活動を、彼女の親分と同じような虚偽と欺瞞に満ちた言動で、堂々と行っています。それだけではなく、戦争被害者の痛みを自分のものとして内面化しながら、歴史学、社会学、フェミニズム研究を進歩させようと真摯に研究と教育に励んでいる学者たちを罵倒する恥知らずです。こんな人間が国会議員であること自体が、日本の「国民性にとって危険」なだけではなく、人間の普遍的な「人道倫理にとって危険」だと言うべきでしょう。民主主義を守るためには、こんな政治家をのさばらせておいてはなりません。

裁判には費用もかかり、金銭的負担もたいへんだと思います。岡野さんたちの裁判闘争が勝訴することを確信して、強く支援していきたいと思います。

下記は岡野さんたちが提訴にあたって出された声明文です。

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2019212

杉田水脈衆院議員提訴にあたっての声明
                                          
JSPS科研費基盤(B)「ジェンダー平等社会の実現に資する研究と運動の架橋と
ネットワーキング」JP26283013平成26-29年度研究グループ
牟田和恵(大阪大学)・岡野八代(同志社大学)
伊田久美子(大阪府立大学)・古久保さくら(大阪市立大学)


本日、私たちは衆議院議員杉田水脈氏に対し、名誉毀損等による不法行為についての損害賠償等請求を京都地方裁判所に提訴しました。
杉田議員は、私たちが行った研究に対し、無理解と偏見に基づく誹謗中傷をインターネットテレビ、ツイッター、雑誌等種々のメディアを通じて繰り返し、私たちの名誉を大きく傷つけました。その詳細は訴状および今後法廷に提出する書面で明らかにしていきますが、ここでは簡単に3点に触れます。

第一に、杉田議員は、「慰安婦」問題を扱った私たちの研究について「ねつ造」と述べ発信しました。「強制連行」に関する一部の証言に問題があったとしても、それは「慰安婦」の存在、そして日本軍慰安所の強制性を否定するものでは全くありませんし、かつて日本軍が行った戦時性暴力は多くの研究者が調査によって明らかにしています。また、1993年の河野官房長官談話ほか、「慰安婦」問題について政府が謝罪し反省を述べた文書は現在も日本政府の公式見解です。杉田議員はこの事実を無視して、「慰安婦」問題はねつ造とし、この問題について検討考察を行う研究まで貶めたのです。研究者にとって研究がねつ造とされるのは、研究者生命を危うくする、きわめて重大な名誉毀損です。
第二に、杉田議員はフェミニズムへの無理解から、私たちの研究を貶める発言を繰り返しています。私たちの研究では、ジェンダー平等の実現のためにはさまざまな社会運動や活動と架橋していくことが重要であることを、理論的にも実践知としても明らかにしてきました。それなのに杉田議員は「あんなのはフェミニズムではない」「活動であって研究ではない」などと、自らの偏った理解や無理解によって研究を貶めました。また、女性の身体や性は第二波フェミニズム以降の重要なテーマであり、国際連合の条約や日本の法律にも盛り込まれています。しかし杉田議員は、それを扱ったイベントについて「放送禁止用語を連発」などと浅薄な形容を繰り返して嘲笑し、研究に価値がないかのような印象操作を繰り返しました。これは、私たちのみならずフェミニズムやジェンダー研究全体に対する抑圧であり、とりわけ国会議員で男女平等を推進していくべき立場にある杉田氏のこのような言動は許されるものではありません。
第三に、杉田議員は、私たちが科学研究費助成期間終了後に研究成果を発表したことについて、助成期間を過ぎて科研費を使用しずさんな経費の使い方をしているかのように複数のメディアで発言しました。しかし助成期間が終わった後に科研費を支出することはあり得ませんし、実際、支出していませんから、経費のずさんな使用などと誹謗されるいわれはありません。また助成期間後に当該研究の成果を発表することは、科学研究費制度にも組み込まれた当然の学問的営為です。研究費や公費の使用に厳正さが強く求められる現在、こうした事実無根の「不正」疑惑をかぶせられることは、研究者として大きな憤りを禁じえません。
以上のような言動は、一般人においても許されるものではありませんが、国民の負託を受け憲法を遵守する責任を負っている、そして文科省はじめ行政に影響力を有している国会議員が行うとは言語道断です。
さらに杉田議員は、私たちに対して「反日」というレッテルを多用し、さらには「国益を損ねる」研究に科研費を助成することは問題であると繰り返しています。自らの偏った価値観から「国益」とは何かを決め付けること自体問題ですが、その上にそれを理由に学問研究に干渉・介入することは、学問の自由を保障する民主主義国家において許されません。私たち科研グループへの杉田議員の発言は、私たちに対するのみならず、学問の自由・学術研究の発展に対する攻撃であり、私たちへの誹謗中傷を放置することは将来にわたる学問の自由への介入の理由づけに利用されることが十分予想され、それを阻止するために今般の提訴に至りました。
学問研究への権力の介入を許さない人々、女性差別に反対する人々、「慰安婦」問題について歴史のねつ造を許さず責任ある解決を求める人々はじめ、多くの皆様に本裁判への注目と支援をよろしくお願いします。


本裁判への支援呼びかけ人2019.2.12現在)
青山薫(神戸大学)、秋林こずえ(同志社大学)、浅倉むつ子(早稲田大学)
庵逧由香(立命館大学)、伊藤和子(東京弁護士会)、伊藤公雄(京都産業大学)
上野千鶴子(認定NPO法人WAN)、江原由美子(横浜国立大学)、岡真理(京都大学)
香山リカ(立教大学)、小島妙子(仙台弁護士会)、佐藤学(学習院大学)、
清水晶子(東京大学)、住友陽文(大阪府立大学)、千田有紀(武蔵大学)、
髙谷幸(大阪大学)、田中利幸(歴史家・評論家)、角田由紀子(第二東京弁護士会)、
中野晃一(上智大学)、西谷修(立教大学)、能川元一(大学講師)、林香里(東京大学)、
平井美津子(大阪大学非常勤講師)、広渡清吾(法学者)ノーマ・フィールド(シカゴ大学)、
三浦まり(上智大学)、テッサ・モーリス=スズキ(オーストラリア国立大学)、山口二郎(法政大学)、
山口智美(モンタナ州立大学)、山下英愛(文教大学)、雪田樹理(大阪弁護士会)

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      【店名】四四八 
      【店番】448 普通預金 
      【口座番号】5013174 
      【名義】国会議員の科研費介入とフェミニズムバッシングを許さない裁判支援の会(欄に入るところまでで結構です。途中まででも大丈夫です。)  
そのさい、呼びかけ人のみなさまからも、メッセージを一言いただければと思いますので、そちらのご協力もよろしくお願い申し上げます。



 

  

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